韓国ニュース大戦

 【ソウル5日=鄭孝俊】韓国テレビ界で「ニュース大戦」が勃発している。3月の改編で、テレビ局主要3社の看板ニュース番組がいっせいに午後9時にスタートすることになり、「火を吹く」熾烈な視聴率競争が展開されているのだ。北朝鮮の黄書記の亡命、大統領の子息を巻き込んだ不正巨額融資スキャンダル、亡命者銃撃殺人事件…など超ド級のニュースが続く韓国だが、日本のニュース番組とは違った持ち味も発揮している。

 韓国の「ニュース大戦」は、ソウル放送(SBS)の看板ニュース番組『8時ニュース』が、3日から午後9時台に移動、『9時ニュース』として衣替えになったことが発端。これにより、すでに午後9時スタートだった韓国放送公社(KBS)の『ニュース9』、文化放送(MBC)の『ニュースデスク』と同時間帯で激突することになった。東洋放送が統廃合された80年以来、17年ぶりの出来事という。

 なにやら、4月から夕方5時台で激突する日本の民放ニュース戦争を思わせるが、SBSは、なぜ真っ向勝負に出たのか。「韓国の視聴者には『午後9時台=ニュース番組』という観念が強くあり、局イメージのため、あえて他局との競争に打って出たわけです」(同局弘報部)。折しも、3月3日はKBSの開局50周年記念日。韓国マスコミが「火を吹く戦い」と表現するのもうなずける。今回のSBSの決断は、年明けからビッグニュースが相次いで発生していることや、年末の大統領選挙に向けて報道番組を強化しようという韓国テレビ界全体のムードも影響しているようだ。

 ところで、改編直前2月28日の各局の視聴率を見ると、KBS『ニュース9』が26・7%、MBC『ニュースデスク』が11・7%、SBS『8時ニュース』が10・5%とKBSが圧倒的な強みを見せている(メディアサービスコリア調べ)。KBSは午後8時半からの連続ドラマ『愛する時まで』が42・5%の高視聴率で、その数字が『ニュース9』に受け継がれたかっこうだ。

 日本と同じで、キャスター人気も当然、無視できないが、「日本の民放ではキャスターが笑顔を見せたりジョークを飛ばしてニュースを柔らかく伝えようとしていますが、韓国で同様のことをすると視聴者から抗議が殺到する。ニュースは真剣に伝えるべきものという意識が強く、女性キャスターも脇役的な存在。日本のニュースショーが米国型なら韓国は英国型ですね」(在韓日本人記者)。

 ある韓国テレビ局プロデューサーも「KBSの男性キャスターは牛のような顔ですが、どっしりした安定感がある。SBSは元MBCの報道部長で落ち着いた感じ。一方、MBCは元ワシントン特派員で経験豊富だが、軽い感じがして人気は今ひとつ」と説明。

 さて、注目の3日の初戦だが、KBSとMBCが順当に国会関連ニュースから報道したのとは対照的に、SBSは年々華やかになる結婚の現場リポートを番組のトップに据えた。その結果は…、KBS28・8%、MBC22・3%に対し、SBSは9・3%と惨敗。「柔らかい切り口を求めたSBSの実験は評価しますが、視聴者には受け入れられなかった」(MBC局員)。
 この視聴率は、政治談議が好きな韓国人らしい結果ともいえそうだ。



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