since 14/DEC/96
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2月
28日
(sun)
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ある人がbjorkのビデオクリップ集「Volumen」を欲しがっていたのでプレンゼントしてやったところ、「見たらあんまり良くなかった」とか言うのですよ。せっかく買ってやったのにひどいことを言うね、とってもいけない。杉浦茂風にそんなことを言いいながら件のビデオを強奪、僕も見てみることにしたのですが…こりゃ確かに満足度低いかも。
CDのジャケットなんかにしてもビョーク(急にカタカナ表記)のビジュアルのイメージはキテレツにして強烈なわけで、それが動くとなると期待が大きくなるのは必然。しかもこのビデオ、ジャケット写真がまたイカれてます。糸吐いてますから(画像参照:「リング」の貞子ってこれより怖いんですか?)。でも、ドラマ仕立てのクリップは総じて中途半端に安っぽく、なにやら料理してるだけとか、ひどいのになるとその曲が使われたらしき映画が混ざってるものまであるんですよ。要はサウンドほどイメージを広げてくれないものが多いのです。
その中では、モノトーンの映像がストリングスと合う「Isobel」と、スパイク・ジョーンズが監督して皆で歌い躍る「It's Oh So Quiet」が、サウンドと一緒になった時の化学変化が大きかったです。そしていちばん気に入ったのは、アニメと実写が混ざった「I Miss You」。洋物アニメはただでさえ可愛いとは思えないんですが、そこに輪をかけてグロテスクです。人の首切ったり、ニワトリの両足つかんで体を引き裂いたりと幼児的残虐性全開で、そんな非道な手法でビョークのチャーミングさを引き出しつつドリーミーなのでした。
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2月
27日
(sat)
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「ヤングキング アワーズ」4月号では、巻頭カラーを犬上すくねさんが飾ってますよ。すごいなぁ。同人誌に収録されたオリジナルヴァージョンをo u t d e xでも紹介した「3丁目の夏」のリメイクで、「3丁目の夏'99」。地球滅亡直前という設定に大胆に変えられてるほかにもどうも雰囲気が違うと思ったら、1ページ当たりのコマ数がぐっと抑えられてるからでした。
彼氏とうまくいかなくて、つい浮気してセックス。そんな乙女心の専門誌が「CTiE comic」っすよ! いや、本当にこのパターンが多いんですってば、ジャンプにおけるリーグ方式決闘並みの多さです。男子は読んでるだけで不安に苛まれてくること必至。うがー。
ともあれについて4月号についてまとめると、小野塚カホリのカラーはいい、南Q太のタメはたまらない、オーツカヒロキって安野モヨコの元アシスタント?、かわかみじゅんこは番外編の方が良かった、占いによると蟹座の俺は自信を失ってる時期なので優しくした方がいいらしい、といった感じです。
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2月
26日
(fri)
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タワーの「bounce」とHMVの「HMV」をもらってきました。こういうのって良く言えばポジティヴ評価、悪く言えば広告出稿と引き換えの提灯記事とおぼしきものが多いですよね。もちろん全部が全部じゃないけど。やたら「!」が連発されてたり、ページのそこら中で「傑作」と安易に銘打たれてたり、レコード会社の資料を書き写しただけっぽかったりする記事にはウンザリすることもあるわけですが、タダなんですから発売情報とジャケット写真があるだけで文句は言えませんな。そもそも、老舗の音楽雑誌でも最近はこんなもんですしねー。
THE ROOTSの「things fall apart」購入。このヒップホップ・バンドの新作は、輸入盤では5種類のジャケがあるそうなんですが、タワーの棚で確認できたのは4種類でした。選んできたのは、白人警官に黒人が追われてるジャケットで、1種類のみの日本盤と同じやつ。他は、子供の涙・死体の手などで、アルバムのシリアスさをうかがわせるようなものばかりです。音の方は、サンプリングも使ってるんだろうけど、実際に演奏してるにしてはサンプリングで作った並みのサウンドよりも複雑。グルーヴはマイルドだけど、リズムも凝ってるし、エフェクトもそこら中で掛けてるし。そしてギターやベースのフレーズはけっこうソウル。激しい盛り上がりなんてなくて、モノトーンのアートワーク同様に全編渋い構成です。女性ボーカル入りで最後の方が人力ドラムンベースになる「YOU GOT ME」が聴きどころ。
今週の「彼氏彼女の事情」の最後を観たとたん、夏コミで出す本の内容が決まったというやおい作家の仔猫ちゃんたち! やめとけやめとけ、他のサークルと内容がかぶるぞ!
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2月
25日
(thu)
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ルポタージュを読む際に必要とされる前提は、それがあくまで筆者独自の視点によって書かれたものだという認識だ。どんな優れたルポであれ、最初から述べられている全てを信じる姿勢で読むのは、書き手同様に受け手が持つべきであるはずの客観的な分析を放棄しているに過ぎない。藤井誠二の「暴力の学校 倒錯の街」は、体罰やそれを生んだ管理教育ヘの批判という一貫性においては信頼に値するルポだ。
95年7月、福岡の近畿大学附属女子高等学校の当時2年生だった生徒が教師による体罰によって殺された事件を追ったこのルポは、2つの共同体を批判している。ひとつは学校、ひとつは事件後に被害者を中傷するのデマが蔓延した地域社会だ。
生徒指導という正義の名にもとに行われる体罰は、抵抗することが許されない一方的な暴力行為であり、それは学校という聖域によって保護されていると筆者は述べる。この事件の誘因となったのも、体罰の持つ危険性への認識の甘さであると。この事件での教師ヘの擁護論として、生徒の態度が発端となったことが指摘されるだろうが、だからといって殺されてもいいという理由にはなるはずもないのは確かだ。
そうした点での異論はないが、体罰肯定論が根強く残る理由の分析はいまひとつしっくりこない。体罰を肯定する背景には、直接的かつ対処療法的な抑圧による即効性への期待があると思われる。そうした場当たり的な手法を捨て、非行を一時は甘んじて受け入れて、時には暴力に晒されても根強く教育して行こうという社会的なコンセンサスが出来なければ、体罰禁止への道は遠いと思われる。体罰禁止後の具体的な教育プロセスを提示できない限界を考慮した上で、体罰の是非自体は別問題であるとして論じようとするのなら不満はないのだが、説得力を加えるためにはもう一歩踏み込んで欲しかった。
なお、この事件に関する教師の暴行は、どうみても感情に突き動かされ激昂してしまったことによるもので、訓戒的な意味を持つ「体罰」の範疇すら越えたものであることは明白。そのために被害者はコンクリートの柱に頭部を強打することになった。体罰禁止が形骸化していた学校の責任をも筆者は問う。
そして戦慄すら覚えたのは、被害者とその遺族への誹謗中傷の激しさだ。それは近大附属の卒業生を中心として開始された、加害者である教師への減刑嘆願署名運動とともに広まっていく。不良への鬱屈した不満が身勝手に投影され、被害者と遺族たちへの想像力を決定的なまでに欠いたまま、噂は事実として伝えられてしまう。実際に署名運動の過程で噂を捏造した人物が、悪びれずに自分の正当性を主張している部分では、強い嫌悪を覚えた。そしてそれを支えたのは、教師が顧問を務めていたクラブOBの組織であり、その活動をさらに地縁によって広げていった地域社会。そうした視点から、学校と地域に共通する共同性と閉鎖性を筆者は本書で繰り返し指摘している。
被害者の死亡を伝える校長に罵倒を浴びせる生徒がいた一方で、彼女達に「うるさい」と怒鳴る生徒もいたという。そうした生徒たちの声が紹介されていないのは残念だが、それは被害者・加害者の人間像よりも、彼らを取り巻く共同体の情況から事件を読み説くことに重点を置いた結果でもあるのだろう。
加害者は控訴までしたものの実刑を受け、現在ではすでに出獄している。しかしその彼が、時間が経つのを待つしかないとして遺族との接点を絶っている事実は、事件をめぐる情況を見せ付けているかのようだ。
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2月
24日
(wed)
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今となっては昔のことですが、23日付けでo u t d e xが更新されています。追加したのは、阿部和重「無情の世界」・笙野頼子「東京妖怪浮遊」・「アニメ批評」創刊号のブックレヴューと、例の広末@武道館についての文章。ブック・レヴューは日記のまんま流用ですが、広末については一部改稿しておきました。
その武道館の話ですが、産経新聞のページにも記事があって驚きましたよ。まだ消えてないといいんですけど。産経新聞は読んだことがないんで鷹派の巣窟のようなイメージを持ってたんですが、なんだ話の分かる連中じゃないですか。先入観が一気に裏返ったような気分になって、きっと社員全員が広末ファンなんだろうと軽はずみに決めつけてしまいそうです。
この記事と「o u t d e x」のリポート、あと「大衆決断」にある2日間の記録を一緒に読むと、あの特殊空間の雰囲気の一部だけは伝わるかもしれません。知りたいかどうかは別として、閉鎖的空間における沸点を越えた熱狂が人を壊れさせることは、お母様が多感な時期のお子様に是非とも教えてあげて欲しい事実です。後からでは取り返しのつかないことが人生には多々ありますからね。広末ライヴの場合にも、2日目はステージに上がり込んでしまった謎のスーツ男がいたそうですし。
産経新聞の記事は、盛り上がる野郎どもから一歩身を引いて冷静を装ってる感じで、PAについて触れてたりしますが、そういう人に限って現場では「広末、最高〜!」とか吠えてたんじゃないかって気もします。いや、僕がそうだったなんてことは決して決して…。
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2月
23日
(tue)
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ここ数日、テレホの時間帯になると毎日のようにカウンタが壊れてるこの日記ですが、今日も健気に更新中。カウンタ復旧のためtelnelにコマンドを打つ手も絶好調、「高い・重い・すぐダウン」でおなじみSo-netの糞サーバーからお届けいたします。
いつのまにやら大メジャー、椎名林檎の「無罪モラトリアム」を買ってきました。歌詞の生々しさ、引っ掛かりの多い語彙と漢字表記、そして胸に焼きついた情景を歌い上げるようなドラマの描き方の巧みさ。それだけでも特異だってのに、しなやかにして強く脈打つ歌声まで彼女は持ち合わせています。
ディープな歌詞でありながら湿気の多い情念過多にまで至らないのは、老成と思えるほどの諦観があるからかもしれません。「丸ノ内サディスティック」の言葉の並べ方も妙で素晴らしいですが、やはり彼女は歌詞にドラマを持たせるタイプの作詞家でしょう。
飛び交う人の批評に自己実現を図り戸惑うこれの根源に尋ねる行為を忘れ
「同じ夜」では、1行の歌詞でこんな言葉を一気に耳に流し込んでさえきます。詞/曲/歌が渦を巻くこの表現能力。椎名林檎の女性性にばかり言及した記事やレヴューを腐るほど目にしたし、これからも見続けることになるんでしょうけど、それだけで済ませられる才能じゃありませんよ。
全曲のアレンジは亀田誠治。歌のエネルギーに対して乾いたトーンで拮抗しようとする方向性は間違っていないと思いますが、サウンドが「ロック的なもの」に縛られている感があって、枠がもっと広くてもいい気がしました。いや、充分良く出来てるけど、なにせ主役が主役だけに助演陣にこんな注文を出しちゃうわけです。
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2月
22日
(mon)
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くらもちふさこ「天然コケッコー」10巻、藤井誠二「暴力の学校 倒錯の街」、「モーニング新マグナム増刊」No.7購入。「天然コケッコー」は恋の雲行きが怪しくなる一方で、くらもちふさこの飽くなきアヴァンギャルド精神がどんどん前面に押し出されてきます。「モーニング新マグナム増刊」は黒田硫黄が目当て。
ところで皆さん、ZARDのニューアルバム「永遠」は聴きましたか? 聴いてるような奴はとっとと去りやがれ! 嘘です。何でもこのアルバムの初回盤には特典としてシングルが付くらしく、そこに収められた「Can't take my eyes off you」のアレンジをなんと小西康陽がやってるっていうんです。天晴れなミーハー精神ですね。さっそくその曲を聴いてみたんですが(どうやって?)、cobaのアコーディオンと子供コーラスに彩られた、ゴージャス&ドリーミングなアレンジでした。ただ、そうなると坂井泉水の平板な英語ボーカルが気になってくるわけで、果たして相性は良いと言えるのかどうだか。
あと、中谷美紀のシングル「クロニック・ラヴ」って、86年に坂本龍一が出した「未来派野郎」に収録されてた「Ballet Mecanique」の歌ものヴァージョンなんですね。こっちも落として、いや聴いてみたんですが懐かしー。「beauty」までは坂本龍一が好きだったんで、「Ballet Mecanique」もさんざん聴いた覚えがあります。原曲の方も、今聴いても結構いいサウンドですよ。
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2月
21日
(sun)
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周辺の本やCDを撤去することから始まり、横の本棚を一旦空にしてどかせ、そしてコンポの撤去作業に。機械の背面やコード類に積もった埃を掃除機で吸い込み、アンプやCDプレイヤーなどをひとつずつ丹念に拭いて、部屋から搬出。それからやっと新しいコンポのセッティングとなったわけで、こうやって文章にすると簡単そうですが、これだけで半日以上かかってしまいました。しかもコンポ関連の作業が終わった後も本の整理をしていたし、中途半端に重いものを運んで、中腰で作業をすることが多かったんで、もうグッタリです。こんなに働いたのは久しぶりだ…なんて言うのは社会人として問題がありますが。
これまで10年以上愛用してきたAKAIのコンポと別れ、今日からはKENWOODのコンポと同居です。大枚はたいて手にしただけあって、10分以上待たなくてもすぐにアンプから音が出るし、盤面の印刷が厚いCDも問題なくかかり、CDシングルもアダプター不要、もちろん何回も入れ直さなくてもすぐにCDを認識してくれるのです! …いかに今まで劣悪な環境下にあったかバレてしまいますね。また、テクノロジーの進歩でしょうか、コンポ自体はコンパクトになっても音は俄然良いのが一聴して分かります。ただ、スピーカーが小さくなった分、中高音の伸びが良くても低音のパワー不足は否めないんですが、まぁじきに慣れるでしょう。いいかげんです。
そして晴れて今日からMDが聴けるようになりました。これで一昨年ぐらいにまちださんの家でコピーしてもらった音源群も聴けるわけで、気が付けば2年越しの再会。はっぴいえんどの85年の再結成ライヴ盤「THE HAPPY END」、The Beach Boysが70年にBrother Recordsから出したものの今では聴けない「Sunflower」といったレア盤、それに山下達郎の「ADD SOME MUSIC TO YOUR DAY」やORIGINAL LOVEの「ORIGINAL LOVE」といったインディーズ盤も聴けるってわけです。あと、Dessyさんの家でコピーしたさそり座のインディーズ盤「チャイム」も。MDを聴ける日を夢見て、我ながらよくこんなにたくさん後生大事に保管してきたもんですよ。
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2月
20日
(sat)
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SOUL FLOWER UNIONのストアイベントを見にHMV新宿SOUTHへ行ったら、開始10分前だってのに既に凄い人数が集まってました。CD棚と棚の間に人がギュッと肉詰めという感じで、イベントと無関係のお客さんを呆然とさせること必至。とりあえず今日発売のSOUL FLOWER UNIONの新作「WINDS FAIRGROUND」を買って、僕も肉詰めしてみました。
見るからに低予算のビデオクリップが流れて、本来とは別の意味で泣けてきた後、メンバー登場。「東アジア最高のロック」と、中川敬は相変わらず強気です。短いトークをしてから、大熊亘とHEAT WAVEの山口洋も加わって、「EACH LITTLE THING」「潮の路」「満月の夕」の3曲を演奏。モノノケではなくユニオンとしては珍しいアコーステック・セットでした。そして彼らの歌の世界は、その編成でも変わらず力強いのです。
終わってからやっとMASAさんと合流、ラーメン屋へ。それからMASAさんを騙すかのように「まんがの森」へ行き、上連雀三平「アナル・ジャスティス」を探したのですが、見つからないので店員に聞いてみると、成年マークのマンガは扱ってないとのこと。そうだったの!?
ディスクユニオンを覗いてから向かったヴァージンメガストアでは、CDのポップにFABRIZIO DE ANDREの訃報が。4枚ぐらいアルバム持ってるイタリアのミュージシャンなんですが、どれも傑作ばかりの人だっただけに残念です。そんなに歳食ってたんでしょうか。そして、同じく故人であるパキスタンのNUSRAT FATEH ALI KHANのライヴ盤「SWAN SONG」を購入。マニア談義付きCD捕獲部隊は解散となったのでした。
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2月
19日
(fri)
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OKAMAの「めぐりくるはる2」をやっと読みました。連作の「せんたくき」と「かいじゅうとあそぼう」は活劇要素入りハッピー路線。けれど他の作品は、幼稚なほどに純粋な愛情と、それとは裏腹のディスコミュニケーションの淋しさが漂っています。少年と父親の関係を軸にした「はちうえのたね」を覆うのは、強い鬱屈。ほとんどエロとしては機能しないであろう「きりかぶの芽」は、かなり話が分かりづらいのが難点ですが、生と死を優しく描いていて泣けました。どの作品もハッピーエンドで、ほどよい幸福感を与えてくれます。線の多さや彩色も作品ごとにバラバラで、やる気見せてますね。
今週の「彼氏彼女の事情」、
山本麻里安は女子生徒A役でした。それはいいとして、原作の方はあと何回分ぐらい残ってるんでしょう。というのも、ここのまま雪野と有馬のセックスが無かったことのように話が展開するのはなんか惜しい気がして。「なんで次は学校の屋上や体育倉庫でしないの!」と友人は怒ってましたが、別にそういうことでもなくて、あのエピソードをもっと有機的に展開させる手もあったんじゃないかと思うんです。アニメの方は普通に面白かったので、なんとかこの調子を保って欲しいのですが、不意に実写とかが飛び出しそうなんで油断は禁物かも。
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2月
18日
(thu)
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そして今日も、XTCの「Nonsuch」以来7年ぶりの新作「APPLE VENUS VOLUME 1」を聴いているというわけ。昨日「RIVER OF ORCHIDS」がHMVで流れているのを聴いただけで、あまりの美しさにその場で聴くのが惜しくなってしまった。「Idea」なる自前のインディー・レーベルからの発売だっていうのに、1曲目からオーケストラを導入してるんだから豪気。ストリングスとトランペット、そして歌とコーラスが響き合う。混沌と瑞々しさがひとつになって始まるのがこのアルバムだ。
続く「I'D LIKE THAT」は、決して音数が多いわけではないけれど、過不足なく音を組み合わせて、そこにアクセントを打ち込んでくる。ああこれがXTCの新作なんだよなぁ、と感慨に浸るのも忘れる心地よさだ。
新人ミュージシャンの音楽性を形容する時、ちょっとねじれたセンスがあろうものならXTCの名が持ち出されるのは日常茶飯事。「屈折」という言葉がついてまわるバンド(今は2人なんでユニットか)だけど、新作でもそうした世界はそのままだ。また、このアルバムは比較的落ち着いた印象で、安定感もかなりのもの。でーんと置かれた白い陶磁器みたいなイメージだ。全体の流れとか文句のつけようもないし。
ただ、10年前「Oranges and Lemons」で彼らと出会った時のショックを覚えているだけに、あの針の振り切れたテンションの高さに及ばないことが気になったのも事実だ。でもそれはアルバムの性格の違いもあるだろうし、なによりそんなことを考えていると、エセ異国風味の「GREENMAN」が鳴り始めたりする。やっぱ油断ならんな。
「APPLE VENUS VOLUME 1」を聴いてるうちに気が付いたのは、僕にとってはANDY PARTRIDGEの歌声がこの上なく魅力的だってことだ。そりゃ歌の上手いミュージシャンはもっと他にもいるだろうけれど、この声でコーラスなんかされたらたまらない。「I CAN'T OWN HER」の美しさなんて、頭の隅々まで染み込んでくる感じだ。
時代性との折り合いを求めた挙げ句に陳腐なサウンドになっていくより、こうして我が道を見失うことなく進むのも素晴らしいじゃないか。というか、XTCは放っといても死ぬまでXTCのままなんだろう。そんなことを確信してしまった僕は、つまりこの新作に満足しているというわけなのだ。
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2月
17日
(wed)
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XTCの新作「APPLE VENUS」はトーク&サイン会の整理券欲しさに渋谷で買い、広末涼子のセカンド「private」はポスター欲しさに渋谷タワーレコードで買ってきました。外資系大型CD店の繰り出す特典商法の術中に、まんまとはまっている消費者です。
雑誌では「Quick Japan」Vol.23と「PC Computing」3月号を購入。新装刊のQJは当然いろいろ変ってるわけですが、一番衝撃的だったのは文字の密度が低くなっていたことです。以前の活字の詰め方が異常だったのかもしれませんけどね。「PC Computing」では、「ハッカーズプログラミング超入門編」なんて記事が、内容とはまったく無関係な少女マンガ風イラストで彩られているのが笑えました。
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2月
16日
(tue)
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人を小馬鹿にしてるのかと思うほどのまわりくどさ、無駄と思えるほど詰め込まれた情報量。町田康みたいになったなぁ、とちょっと思ったのが阿部和重の短編3本を収録した「無情の世界」だ。「トライアングルズ」では「!」が異様に多いし、「鏖(みなごろし)」ではファミレスのメニューのカロリーまでいちいち書かれていて、「インディヴィジュアル・プロジェクション」の記憶が下手に残ってると、この変化に逆に混乱しそう。
3編とも主人公は、揃いも揃ってどうしようもない人間。「トライアングルズ」の家庭教師は理屈と行動力を兼ね備えているがゆえに困ったストーカーだし、「無情の世界」の主人公は露出狂の女を見てオナニーするために公園へ行ったがために殺人犯と疑われてしまう。「鏖(みなごろし)」の主人公は、きっと「反省」という言葉を知らない。「インディヴィジュアル・プロジェクション」の男っぽさとは、これまた違って情けない連中だ。
それでも、物語の構造に凝る阿部和重らしく、「トライアングルズ」では最後になって語り手が誰なのか突然はっきりしなくなったり、「無情の世界」のラストでは意外な形で語られていることが示されたりする。最後の最後になって、物語を突き放すかのような構成だ。ただ、「トライアングルズ」と「無情の世界」の2編を読んだ時点では、そうした構造上の工夫が鼻について、「インディヴィジュアル・プロジェクション」でのテンションの高さはもう無いのかと不安になったのも事実だった。
しかしそんな気分を拭い去ったのが「鏖(みなごろし)」。冒頭から滑り込むようにして物語に引き込んでいく手腕には、まんまと乗せられてしまった。後半、店に流れる美しいBGMと殺人の修羅場が交錯する場面はこの作品のハイライトだ。途中、落ちが見えそうにしておいて、肩透かしを食らわすのも心憎い。
ここに収められた作品群の狙いは必ずしも功を奏していない部分もあるけれど、ひとつのスタイルにとどまる気配も見せずに模索しつづける阿部和重の姿勢は支持したい。と言うか、好きだ。
常磐響による、ビキニギャルズ@ワイルドブルー横浜な装丁も、関係無いようで作品のムードと通じてるのが面白い。帯の裏に英語しかないのも人を食ってていい。
書き忘れてましたがo u t d e x更新、「セヴィニエ夫人と私」を相互リンクに追加しました。
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2月
15日
(mon)
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昼休みに会社近くの古本屋へ行ったら、中古盤のCDを投げ売り中。1枚なら150円、2枚で250円では、「投げ売り」というより「捨て売り」という表現の方が適当です。ワゴン2台に収まらず、さらに5箱のダンボールに詰め込まれ地面に置かれた埃だらけのCDを嬉々として物色したのですが…まぁ、大方の労力が無駄だったとお知らせしときましょう。そんな中から厳選された2枚をご紹介です。1枚当り131円(税込み)。
サンデー&サンセッツ「祝再生(VIVA LAVA LIVA)」
中学生だか高校生だかの頃、NHK-FM番組でやってた「日本ロックの歴史」みたいな番組で彼らの曲が流れた時のインパクトは強烈でした。なにせ、和風のメロディーやリズムを恥ずかしげもなくブチ込んでいたんですから、まだ音楽的免疫の無かった当時の僕は驚くのみ。その時流れた2曲は、サンディーのソロを愛聴するようになっても分からないままでしたが、入ってましたよ、このCDに。
80〜83年の作品を収めたベスト盤で、この時代は細野晴臣と久保田真琴の共同プロデュース。オーストラリアのチャートで8位まで登った「STICKY MUSIC」も聴けますが、他の情報なしでこの曲だけ聴いたら、どこの国の音楽だかまず分かんないような雰囲気です。クールな演奏に、サンディーの濃厚な歌い回し。レゲエや沖縄の要素も飲み込んで、それでいてキワモノとは思わせない度量の広さがあるんです。サンディーと久保田真琴は、90年代に「MERCY」や「DREAM CATCHER」といった超弩級の傑作を生み出して当時のワールドミュージック・ファンを感涙させたもんですが、最初っからこうだったんですね。
10年かそれ以上前に聴いたのは、「OPEN SESAMI」と「HEAT SCALE」。その程度の時間を一気に引き戻すだけのインパクトがある音楽です。
「銀色夏生プレゼンツ1/バランス」
実は僕、このアルバムを既に1枚持ってるんですが、あまりの境遇に保護してしまいました。詩人として有名な銀色夏生ですが、作詞作曲もやる人で、ここに収められたのも全曲彼女の作。応募テープを送ってきた女の子にそれを歌わせて、あえて素早く簡単に作ったというアルバムです。発売は89年。
一言でいえば、切ない恋の歌テンコ盛り。でも単に切ないってよりも、どこか生々しさを感じさせるような歌詞があるのが聞き流せない理由です。斎藤由貴が「AXIA」というタイトルで歌い、このアルバムでは改題されている「かなしいことり」もまた然り。アレンジは、最近では篠原ともえの「MEGAPHONE SPEAKS」に参加していた長谷川智樹で、簡素なサウンドが特に上手いとはいえない歌と合ってます。これ、銀色夏生の完全なコンセプト勝ちですよ。
このアルバムを誉めてた人って、マスノさんと小倉エージと石原さんしか知らないんですが(石原さんの評はここを参照)、極東裏ネオアコの名作だと思います。青春ですとも、一瞬のきらめきですとも。それに、意図されたものじゃなく、結果としてネオアコっぽいのが素敵です。
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2月
14日
(sun)
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今日は久しぶりに一般入場だし、自分が参加した本も出ないから、力を抜いて回ろうと思っていたコミティアですが、気が付けばバッグは膨らみ、財布からは5千円ほど消えていました。もうすっかりそういう体質になってしまったようですが、全然困った気にもならず、肩に食い込む20冊強の重さを気にする程度です。社交性増量でずっと人と立ち話をしてたんで、足は疲れましたけどね。あ、数人の方には会うなり「広末ライヴ最高でしたよ!」とかわめき出してしまったんで、謝っときます、スイマセン。終了前に流通センターから撤退したのも、これまた久しぶり。
今日買った中で特に気にいった本は、オムニバスの「Plastic Earth '99」<まるちぷるCAFE>、藤空子さんの「思考孵化装置」<藤屋>、志賀彰さんの「Tableau 3」<憂貧局>。吉本さんが文章書いてる「みるく☆きゃらめる1号」<みるく☆きゃらめる>は、読んだ僕に上連雀三平の「アナル・ジャスティス」の購入を決意させたんですから罪な本です。また、檜木さんと加賀美さん、御本をありがとうございました。僕はこういう恩は忘れませんから、ホントに。もちろんペーパーを下さった皆さんにも感謝。
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2月
13日
(sat)
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大学時代のサークルの後輩が結婚したっていうんで、新宿の中華料理屋でお祝い。先月ぐらいに結婚の話を聞いたんですが、入籍自体は去年の暮れにしてたそうです。なんでその時期だったのかって聞くと、税金の控除の関係というんですから、やはり結婚ってのは現実的。式は挙げなかったそうで、職場を含めて僕の周囲では盛大に式を挙げるってパターンの方が少数派になってます。親が強く式を希望したら仕方ないですけど、簡単に済ます方が金も時間も労力も使わんで済みますからねぇ。もっとも、今日は20人以上集まったのに、結婚した当人たち以外に既婚者が誰も居ないという状況で、結婚自体が周囲に少ないって話もあります。でも10年後には「離婚自体が周囲に少ない」とか書いてそうな気が…いや、縁起でもないですね。
昨日に引き続いてアクセス数の話題で恐縮ですが、この日記も8万アクセスを突破しました。もう日記となると本格的に文字だらけ、しかも内容は必ずしも世間一般的な話題じゃないというか、サブカルとかオタクという言葉で形容されるであろう、ある意味文化的にローカルなネタ中心なんですから、有り難いことです。文体とか一人称はやや不安定ですが、たぶん10万とか越えてもずっとこのまんまの方向性でダラダラ続きますんで、これからもよろしくお願いします。なんて書いてると、カウンタ壊れてたりするんだよな。
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2月
12日
(fri)
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糸圭(←1文字でスガと読め!)秀実・高澤秀次・宮崎哲弥「ニッポンの文化人」と「噂の真相」3月号を一緒に買うと、なぜか自分がタチの悪い人間のような気がしてきます。元からそうですけどね。OKAMAの短編集「めぐりくるはる2」も購入し、CDではさかなの「Little Swallow」と、SQUIRREL NUT ZIPPERSの「Perennial Favorites」でレッツ散財。両作とも去年出たアルバムですが、音響ソウルとでも呼ぶべきさかなも、ラッパでスウィングなSQUIRREL NUT ZIPPERSも、もっと早く聴けばよかったと思わせる佳作です。
それにしても我が耳を疑ったのは、XTCが来日してストアイベントというニュースです。文字で読んどいて耳を疑うのは違うだろうという話は置いといて。17日には新作「APPLE VENUS VOLUME 1」も発売されるというのですから、長年音信不通だった父親が土産を持って帰宅すると知らせてきたようで半信半疑。もっとも、BRIAN WILSONの7月来日決定という情報よりは確度が高いでしょうから、その日を楽しみに待ちたいところです。ええ、信じてますとも。
「彼氏彼女の事情」、十波の延々と続くモノローグは個人的にキツいですね。また、たぶん原作からそうなんでしょうけど(まだ単行本に収録されてないので知らない)、十波の変化は極端すぎてギャグみたい。もう少し設定詰めればいいのに。前半には雪野が出てこなかったけど、彼女が出てきた方が面白くなるってのは発見でした。
o u t d e x、やっと5万ヒットを越えました。前にも書いたけど、あんな文字攻めプレイオンリーのページを訪れていただけて感謝。時間さえあればもうちょい更新するんですけどね、CDのレビューとかも。
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2月
11日
(thu)
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夕方になって今日初めて部屋の外へ出たら、雪降ってやんの。積もんないでくれよー、と願いながら向かったのは渋谷のNHK。「ライブビート99」というFM番組の公開録音で、青山陽一のミニライヴをタダで観ようという寸法です。集合時間の6時前に渋谷に着いたら、もう雪は雨に。
やっぱりメジャーデビューの効果は大きいのか、スタジオには客が大入りです。THE BLUE MOUNTAINSを引き連れて登場した青山陽一は、いつものように飄々としながらも熱いステージを展開。淡白なようでエロチックな音楽で、彼の音楽はいつもいい意味での意外性に満ちています。途中機材トラブルもあったけど、それでも1時間強の演奏には満足感を覚えました。
終演後、梯子さんに紹介してもらって、o u t d e xと相互リンクさせてもらってる中西さんとFumieさんにお会いできました。Fumieさんは僕と会うなり「普通の人だぁ!」と声を上げていて、僕も期待を裏切って好青年の地を見せてしまったかと反省しきり。やはり雪が降る中でも、先日の武道館ライヴで買った広末Tシャツ(背面にどーんと広末・2500円)を1枚着ただけで来るべきでした。それで死なずにたどり着けたかは別問題ですが。
それから焼き鳥屋で、JIMMYさん&久美子ちゃん、TAGROさん・市川さんと飲んでから帰宅。いや、僕は飲まずに食ってばっかだったんですけどね。知りもしない種類の焼き鳥頼んで、何頼んだか全部忘れたりしながら。
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2月
10日
(wed)
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やってくれたねアスペクト。一時復刊した「ガロ」に発表された松本充代作品を収録した単行本が、「潜む声 鏡の中の遺書 その他の短編」だ。イラストや原作付きマンガ、あるいは「ビーム」での連載などに比べて、90年代はじめまで「ガロ」に描いていた頃のテイストに戻っていることに当時驚いた記憶がある。無愛想に塗られたベタ、最小限のトーン。そして、表層的には以前に戻ったようでも、物語はより冷徹さを増していることに気づくのにそう時間はかからなかった。
「潜む声」の真理は、自分よりも弟を可愛がる母親の愛情を求めるあまり、母親の呪縛にとらわれ続けることになる。母親に愛されるため自分を殺して生きるものの、やがて母親は既に自分を見ていないことを知った彼女は、極端な行動に走る。彼女が選択した行為は確かに「幸福」をもたらしたけれど、それはやはり他者の存在を通してしか自分を確認できなかった人間の悲劇だ。
「鏡の中の遺書」に登場するのは、正義感が強くて活発、そして可愛いテルと、太めで引込み思案なレイ。レイが好きな男子に告白するよう、テルがちょっと強引に世話を焼いたことが、ふたりの仲が壊れるきっかけとなる。裏切りはクラスでのいじめを招き、そして最後に全てが解決するように見せかけて、もう一度裏切り。このラストに、中途半端に優しげな幻想を拒絶する、松本充代の表現者としての厳しさが端的に表れている。テルの子供時代を描いた「世界の中の一人 全体の自分」を読むと、その印象は一層強まった。
「過ぎし日 積みし日」では、かつて若くして売れっ子となった小説家が、結婚すると次第に仕事が無くなって日常に埋没していき、そんな自分を肯定するために同窓会へ行くようになる。が、そこで自分と入れ替るように有名作家になった旧友と再会し、彼女は自分が敗北者であることを思い知らされる。これも残酷な物語だ。
これらに比べると、唯一「ガロ」以外に掲載された「Weed of the Shallows」は、メルヘンチックな印象すら受ける。暖かいけれど、生温くもあって居心地が悪い。
松本充代は、その初期において思春期的な自我の軋みを描き続けた作家だった。それに対して現在の彼女は、幸福の中の不幸・安定の中の揺らぎを捉えて描き出す。本質的には何も変わっていないけれど、彼女の観察眼は対象をえぐるような凄味を増していた。
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2月
9日
(tue)
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「『エレキング』や『天国と地獄』は大好きだったけど、コロンビアに移ってからは…」なんて言っているかつてのカーネーション・ファン全員に再召集令を発動したくなるのが、彼らの新作「Parakeet & Ghost」だ。バッファロードーターとフイッシュマンズのファンも連れてこい!
ストリングスの演奏をビートで切り刻んだような「はたして野菜はどうなのか?」と、ラウンジ感覚がねじれきった「Parakeet Kelly」という冒頭2曲を聴いただけで、ここ数年来の作品と大きく異なるサウンドに驚かされること必至。しかも2曲ともインストときていて、頭っから意外な展開だ。
続く曲たちは、骨っぽい演奏に粘り気のあるグルーヴ、つまりは肉体感むき出し。これまでの音楽的要素を全部抱えたまま、さらにアレンジは大胆だ。テクノなポエムリーディングが派手に鳴る一方で、比較的シンプルな「Strange Days」が沁みるのだが、これとてサウンドはひしゃげ気味。とにかくエクスペリメンタルで、この攻撃的な姿勢がたまらない。これは共同プロデューサーの上田ケンジの力も大きいのだろう。キラキラあるいはギラギラと光る曲の数々、そしてスリーヴのデザインに、「ホワイトアルバム」を連想してしまった。
コロンビア移籍後のカーネーションは、「GIRL FRIEND ARMY」でひとつのピークを迎えて、続く「booby」で再び混沌に身を投げた印象があったんだけど、「Parakeet & Ghost」ではその両方の要素が結実している。混沌をひとつの形へまとめあげ、アルバムとしての統一感も見事。カーネーション関係の仕事したからって僕は誉めてるんじゃないぞ。このアルバムから溢れるエネルギーの放射熱を、耳から全身に流し込むべし。
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2月
8日
(mon)
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この戦後最悪と言われる不況下にあっても、我々プロレタリアートは厳しい労働環境下において、資本家階級の私利私欲のために休暇を削減されながら働く毎日を送っているわけであり、その一方では本意ならざる無期休暇をリストラの名の下に強制付与される不安に苛まれているのが現実であります。しかるに労働者階級諸君、我々は適時適切なる余暇を取得することを要求し、今こそ革命的闘争に立ち上がろうではありませんか! ま、要は疲れてるんで更新情報だけという手抜き日記を許して欲しいということなんですけどね。
o u t d e x更新、かわかみじゅんこ「少女ケニヤ」・園山二美「蠢動」・桃吐マキル+福耳ノアル「森繁ダイナミック」を「COMIC」に追加。また相互リンクには、今や僕にとって最大の脅威であり、下手にリンクを張るとお客を大幅に奪われかねない「大衆決断」と、
「Noise in the Night Sky」を追加しました。もう相互という枠組も怪しくなってきて、むやみに重いリンク集になってます。でもここだけの話、地下水道よりお気に入り。大風呂敷広げるようで恥ずかしいんですが、同時代性を吸収した個人ページは「o u t d e x」の相互リンクの方が多いような気がするんです。
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2月
7日
(sun)
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僕のステレオコンポはもう12年とか使っていて、保証書が切れるどころか、今では製造元の会社自体が消滅するという不幸な里子のような運命をたどっています。AKAIっていうメーカーのコンポで、当時は松尾清憲出演のCMが羽振り良くテレビで流れてたんですけどね。当然コンポも調子が悪くなっていくわけで、無茶な延命治療を重ねに重ね、しまいには自分でCDプレイヤーの修理ができるようにもなったんですが、近頃はさすがにもう限界。毎年冬になるとアンプから音が出ないし、CDプレイヤーもCDを数回に1回しか認識しないという痴呆症状を見せはじめてしまいました。自室に居る間、睡眠・風呂・トイレの時以外は音楽を流しっぱなしの電力消費野郎としてはさすがにこれは痛く、とうとう諦めて新しいコンポを買いに行くことにしたのです。秋葉原まで行くのは面倒なんで、近所の安売り店へゴー。
以前に集めたカタログの中では比較的マシだったのがケンウッドのCORE-5000。試聴するにも中に入ってるのがグローブなのはいただけませんでしたが、まぁこれでいいかと決定。ここに値段を書くのが憚られる高値の買い物のわりに、決めかたはいい加減です。たぶん現在使ってる骨董品みたいなコンポよりは音がマシだろうという、安直なテクノロジー信仰のたまもの。店員に「端数をまけろ」だの「CDプレイヤーは持って帰るから送料をまけろ」など、値段交渉も銭ゲバ気分で進めます。買い物って気分いいねぇ、なんてCDプレイヤーを抱えて家路に向かったのですが、実際にずっと持ってると重いったらありゃしないんです。送料と筋肉痛、どちらを選ぶのが正解だったのか、今の僕はまだ答えを出せません。
あと数日の命のコンポ、今日は調子がいいのでシトラスの「スプラッシュ」を聴きました。このバンド、メンバーが誰で一体何人いるのかさっぱり判らず、バンドなのかも怪しいところです。よれたような演奏に爽やかながら気の抜けた英詞の歌声が響く頭3曲には、ラッパをアクセントに加えたHEAVENLYという印象を受けました。ポップスかなりグシャッとしたサウンドなのに、全体としてはチャーミング。センスで聴かせるポップスです。
ところが4曲目「tuesday sunday, lazy jazz(featuring INAZZMA★K〜男社会絶滅二分前 MIX)」では、そのまんまジャズな演奏に野郎が延々と男の情けなさを感じさせる喋りを乗せるという変化球。突然過ぎます、変化が。ラストは、同じ曲をまともなボーカル入りでもう1回。酔って吹いてるんじゃないかという感じのサックスの、人をなめたムードが曲に小粋なアクセントを与えます。何だかよく分かりませんが、気持ちいいから何度も聴くことに。TRATTORIA、罪なレーベルですな。
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2月
6日
(sat)
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視界の色をかき消すほどの光、もはや人のものとは思えぬ音波となって響く歓声。その全ては、ステージ上のただひとりのために。集中力の足りない僕の不意を突いてステージ正面左から現われた18歳は、いかにもコンサート慣れしてない感じで「MajiでKoiする5秒前」を歌い踊り出したのです。僕が発狂寸前の状態になったからといって、誰が責められることでしょう。それに、気が触れてるから責められても意味が理解できませんしね!
「RH DEBUT TOUR 1999」、広末涼子、日本武道館。彼女の初のコンサート。
同行した山田くんの40分遅刻、皇居の堀を越えた門に最後尾があったグッズ販売、そしてそして並ぼうとするとどんどん武道館から遠ざかる果てしない入場行列。一番通ってるライヴ会場が渋谷クアトロという僕には過酷すぎました。何もかも予測不可能な事態の連続に開演前からグッタリ、しかしそんな気分も一瞬にして吹き飛び、そしてラリっていきます。
テレビとは違って編集不能、また同じ生広末でも、ミュージカル「銀河の約束」のような配役はありません。そんなレアな広末だからこそ分かるんですよ、彼女って歌う時に首を前に出すってことが。そう、実は猫背なんです。日本一ラヴリーな猫背。猫背万歳、僕も猫背気味で良かった!
しかもよく動きます、両脇に張り出したステージまで階段を上って駆け上がるんです、それも何往復も。それは同時に、僕の目の前5メートルほどの場所まで広末が走ってくることを意味していたんですよ! しかも1回ならず3・4回も! スポットライトに照らされた髪、そして肩甲骨の美しさに、脳の神経は全面ダウン。ハードディスクがクラッシュする時って、こういう状態なのかもしれません。いや、広末画像を入れるとクラッシュするわけじゃなくて。
定番通り最初にテンポの早い曲で盛り上げて、それから「風のプリズム」「プライベイト」と聴かせる歌へ。 「プライベイト」ではステージ後方のスクリーンに歌詞が映し出され、この曲を広末史上(短い)屈指の名曲と考える僕としては喜ばしい限りでした。これで「いろいろ葛藤はあるんだけど」の歌い出しの部分でしっかり声が裏返っていれば文句無しだったんですが、生で聴けただけでももうオッケーですよ。声もよく出るようになったもんです。
「聴くだけじゃなくて参加して欲しいんです、歌って下さい!」と客に練習させたりすると、内心でちょっと醒めた気分になったりするのも事実。で、俺は彼女のどこが好きなんだろう…なんてことが頭をよぎったりもしたんですが、すぐに中断しましたよ。広末を目の前にしてる間は、思考停止の快感を満喫するのが最良の選択です、絶対に。だってさぁ、広末なんですよ!(理論無限循環)
今日はドラムでカーネーションの矢部浩志も参加。本編は1時間という予想外の短さでしたが、アンコール3曲&長めのMCで、終わってみるとかなり満足感がありました。自分を剥き出しにした広末のMCが効きましたね。彼女はエゴを表に出すぐらいでちょうどいいキャラだと再確認しました。
終演直後に山田くんに「どうだった?」と聞くと、「皆どうしちゃったの、普通の女子高生じゃん」とか言い放ちます。ライヴ中はコケシのような表情で見ていたので、彼なりの集中方法なのかと思ったのですが、広末グッズマニアという特殊形態のファンである彼には、生広末自体はどうでも良かったようです。その代わり、携帯のストラップとか変なグッズは大量に買い込んで御満悦でした。携帯、持ってないのに。
そして、自宅あるいは打ち上げへ向かう人々でごった返す中、かちゃくちゃさんと合流。真人間なのか不安になるほど面白いメールをくれる彼とは初対面だったのですが、予想外に精悍な印象です。普通の人で心底安心しました。広末が広告に出てるアサヒの紅茶「ティオ」の無料配布(広末シール付)に群がる狂気の一団となって紅茶を強奪した後、山田くんと別れた僕らは神保町へ。話を聞くととんでもなくアクティヴだし、広末と同い歳なのに僕と趣味の範囲が妙に重なるしで、入ったそば屋の閉店時間を過ぎて店員を困惑させるまで話し込んだというわけです。
憑かれました、いや、疲れました。
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2月
5日
(fri)
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今日の「彼氏彼女の事情」について書く前に、山本麻里安に触れずにはいられません! 「アップトゥボーイ」3月号の「アイドルのお部屋訪問」みたいなコーナーに登場しているのが彼女なんですよ(河合さん、情報サンクス)。好きな服はヒラヒラのフリル付きだっていうし、しかもお父さんは制服系が好きだってんですから、父娘揃ってキャラが立ち過ぎています。このままでは彼女のCDまで恐る恐る聴いてしまいそうなんですが、お父さんが参加していないか不安です。
そしてカレカノですが、紙の代替使用によってセルの大幅削減に成功していて、まさにエコロジー! でもエンディングを見たらセルも使ってたみたいですから、結局節約できたのは手間だけかもしれませんね。まさか先週の予告編と同質だとは。でもまぁ、風景写真の中に紙で書いた校舎を入れたり、キャラに生顔写真を使ったりするヤケっぷりには大爆笑してしまいました。これをあんまり受け入れてもまずいとは思うんですけど、なんか後半に行く頃には慣れてしまっていたから不思議なもんです。でも、やっぱこれはビデオ化の際には作り直して欲しい気もしますね、それこそエヴァみたいに。
おまけ:にせカレカノ Watch ☆2(C)はちさん
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2月
4日
(thu)
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今日聴いた曲についてダラダラ書こうって寸法ですよ。
ロケットマン「交響曲第4126番『ハトヤ』」
まさか自分が感動するとは思わなかった。友人の山田くんが「まだ聴いてないの!?」と僕に説教したのも納得してしまう。小西康陽が、ピチカートの「大都会交響楽」のバック・トラックと「ハトヤ」のCMソングを見事に融合。何のために融合したのかなんて不粋ながら考えて当然のことすら忘れさせてしまうほどの荒技だ。ドラムンベースとピュアな子供たちの生み出す馬鹿馬鹿しさは、「HAPPY EDN OF THE WORLD」以降の小西の吹っ切れたフットワークの軽さを象徴しているかのよう。でも後半のテクノ的な展開はディープ。ところで、ロケットマンのもうひとりのメンバー・ふかわりょうはどこに入ってるの?
椎名林檎「ここでキスして」
巻き舌ボーカルのアクの強さを、大仰なストリングスがさらに加速。歌の個性にサウンドも拮抗してる印象で、しかも「歌舞伎町の女王」と続けて聴くともう中毒性すら感じる。とにかく一丸となってうねってて、その野蛮なまでの情念の猥雑さがたまらない。
KEMURI「Minimum Wage」「Heart Beat」
話題のスカコアの代表格バンドだけど、一聴した印象は意外とアメリカン・ロック色が強いなぁという感じだった。当然ながらけっこうハード。ストレートに攻める「Minimum Wage」より「Heart Beat」の方がブラスの含有率が高く、途中で容赦無くスピードが上がったり下がったりするのが面白い。これ、10代の血気盛んなガキが聴いたら気に入るでしょ、俺も単純に楽しめたもん。
ショコラ「Like a Starberry」
山田くんの一押しはシトラスなんだけど、そのメンバーが曲を書いてるっていうんで聴いてみた。全体的には爽やかでポップなのに、ラッパやエレクトロ感触のキーボドとかが混ざってて、えらくゴチャッとした音世界にびっくり。でも意外なほど気持ち良くて、あっさりめのボーカルと溶け合ってるのが不思議なぐらい。これは相当なセンスがないと作れない音だよなぁ。
坂本真綾「走る (Album Version)」
菅野よう子プロデュース。ストリングやコーラスには西欧音楽の枠に囚われないニュアンスを感じるし、テクノっぽい音の取り入れ方もうまい。この曲に詰め込まれた音楽的情報量の多さに唖然としそうだけど、同時に普通のポップスとしても成立してしまっているのが菅野よう子の手腕だろう。この人って、表現衝動よりも器用さで音楽を作ってる印象も受けるんだけど、やっぱ聴きたくなってしまう音楽家だ。
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2月
3日
(wed)
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今日の日記のアップロードは早いですよー、と言っても更新の時間帯じゃなくて所用時間が。なにしろISDNに換えたんですから。てっきり何か家で工事するのかと思っていたら、自分で屋内配線をするならNTTで設定をするだけで済むというんですから、気が抜けるほど簡単です。まぁ僕はハード面に弱いんで1回設定をやり直しましたが、それでも10分とかからずに再設定完了。ほんの数秒で接続されるのを見て感嘆の声を上げてしまった僕は、端から見たら初めて新幹線を見て歓声を上げる人のようなものかもしれません。いや、新鮮な感動って重要ですよ。負け惜しみで言ってるんですけど。
しかも画像の表示も速い速い、実に今までの回線の4倍の早さなんですから、かっぱ巻きが太巻寿司になったようなもの。なにを今更と言われそうだし、そりゃ会社や学校の太い回線にはかなわないでしょうけどね。ISDNなんて自分とは関係無いものだとずっと思い込んでいた僕、完全な間違いでした。転向宣言です。2万2千円程度の初期投資で、この速度なんですから夢のようであり、睡眠時間が減って本物の夢を見る時間が減りそうです。ISDN万歳、というかISDN萌え萌え! 萌え萌えって、いつのまにか懐かしい響きの言葉になってますね。でもテレホ帯になるとSo-netはしっかり重いんですよ。So-net萎え萎え。
そんなわけで落としまくってます、MP3に広末ムービー。一気に25MBぐらい。テクノロジーが進歩しても、それに比例するほど人間の精神は進歩しないという典型例です。
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2月
2日
(tue)
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書き上げました、カーネーションの原稿。2本ある原稿のうち、96年作品「GIRL FRIEND ARMY」のアルバム・レヴューはこれで完成、もう1本のエッセイも一部データのチェックをしたら完了です。踏み越えたぜ4500字。これでやっとプレイヤーの中身を「GIRL FRIEND ARMY」からニューシングル「たのんだぜベイビー」に替えられるってもんです。
ディスコグラフィー担当の平澤さんにアルバム・レヴューの原稿を送ったところ、同じくレヴューを書いてる松本亀吉さんとパラダイスガラージの豊田道倫さんの原稿をご褒美として送ってくれて、一足先に読ませてもらえました。このメンツと一緒の本に書けるってだけで身に余る光栄、思わず本当に光が余って全身がビカビカ輝いてしまいそうです。そして何が素晴らしいって、松本さんは松本さん、豊田さんは豊田さん以外の何者でもないって感じの文章であることでした。松本さんは「俺度」が高く、豊田さんの文章に埋め込まれたキーワードは「東京」。それに比べてこの俺は…というのは、まだ原稿の詰めが残ったこの段階では考えないでおきましょう。というか、勘弁して。
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2月
1日
(mon)
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2月になっても僕はまだまだ正月気分。原稿が終わってないからです。いえ、快調に進んではいるのですが、なにせ字数が多くて。そんなわけで、広末涼子ファンクラブ会報「R H Friendle」VOL.7が届いたってのに読むのも後回しで、ディスプレイに向かっている次第です。ああっ、そこにまた電話、催促に違いありません。
「聞こえますかー? 今ノリとってるんですよ。食べるのじゃないですよ、貼る糊ですよ、CDの。CDのどこに糊がついてるかって? 分かんないんですか、盤面じゃないですよ、ケースなわけないでしょ、いやシングルじゃなくて、そう、デジパックの袋! なんで糊とってるのかって? そう決めたからです、決めたからにはとるんです、とらなきゃいけないんです! あ、馬鹿にしてますね、心から馬鹿にしてますね。でも本当は理由が無いわけじゃないんです、糊の部分ってホコリとかが付いてだんだん汚れちゃうじゃないですか、だからキレイじゃないとヤだー、とるー!」
狂ってやがります。どうして忙しい時に限ってこうゆう電話が掛かってくるんでしょう、自分に隙がある気がして全てを投げ捨てたくなります。とりあえず、「CDはケースから取り出して保存し、デジパックのケースの方は袋ごとサランナップで密閉して冷蔵庫で保存すれば汚れないからそうしろ、そしてお前は寝ろ」と冷静に指示して電話を切りました。耳を澄ませば、海の波音のかわりに、袋をこする音。ちなみに問題のCDは浜崎あゆみって人のアルバムだそうですが、昔「翼の折れたエンジェル」とか歌って人でしょうか。
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