巨大水槽の中を泳ぐバス。郷司が倉庫に入るとバスの動きが活発になったという。

バスの動きをカメラで撮影。これを会社に持ち帰ってビデオで動きをチェックしていった。


釣りコントローラー試作品をチェック。リアルな感触をつかんでいく。
プロローグ
スポーツフィッシングのヒットから2年。郷司は、次世代フィッシングゲームとして、アグレッシブな釣りで高い人気を誇るバス釣りをゲームにできないかと思いつく。ルアーを投げてから食いつくまでの魚の動きがみたいと、巨大水槽に50匹のバスを放流し、観察の日々が始まったのだった…。
“攻める”釣り-バス・フィッシング
スポーツフィッシングで釣りに興味を持った郷司だったが、その中でも夢中になったのはバス釣りだった。バスは動きが複雑で、活性(元気度)も日によって異なるため、どんなに腕のいい釣り人でも釣果ゼロの日があるほど、釣るのが難しい魚。また、使うルアーや魚を誘うテクニックなどもさまざまあり、経験やカンを頼りに臨機応変にアクションを起こしていかねばならない。郷司は、ハタと思いついた。「これはゲームにできそうだ。新しいフィッシングゲームが作れるぞ」と。
釣りゲーム史上初!水中映像でバーチャル体験
バス釣りをしていると、実際には見えない水中の様子、「ルアーの動き」「バスの反応」などを見てみたいという欲求が生まれてくる。これが見ることができたらどんなに…。ルアーが水の中に入り、魚を誘い食らいつかせる、そのプロセスがすべて見られるようにするにはどうしたら…。郷司の頭に浮かんだのは水中の映像をゲーム画面に映し出すこと!それまでのゲームは、釣り人が上から水面をのぞいた映像しかなかったため、釣りゲームにおいては初めてのチャレンジになる。しかし肝心の魚の動きはどうすればいいのか…。スタッフの意見はみな同じだった。「巨大な水槽でバスを飼って、その生態を観察するしかない」。当たり前すぎることだが、それが最善の方法だった。プロジェクトは、水槽と大量のバスを探すことから始まった。
巨大水槽が会社の倉庫へやってきた
数日後、長さ9m、幅0.9m、高さ2.7mという縦に長い巨大水槽が会社の倉庫に運びこまれた。スタッフが都内を駆けずり回って見つけたものだった。バスは、バス釣り大会の主催者に掛け合って、釣り上げられた50匹を借り入れた。半日かかって水を水槽に満たし、活魚運搬車で運んでもらったバスをスタッフは全身びしょぬれになりながら流し込んだ。翌日から出社するとすぐに水槽のある倉庫に行く生活が始まった。餌を投げ入れたとき、ルアーを入れたとき、違うルアーを異なる方向から入れたとき、何度も何度も実験は行われ、それを映像で撮って会社に戻ってスローで再生。バスの習性と動きを毎日記録していった。すると天候によって、ルアーの種類とその動きによって、バスの動きに法則性があることがわかった。それをデータ化すればアグレッシブなバス釣りの醍醐味がゲームでも味わえるはずだ!
プロジェクトのみなが色めきだった。
バス釣りのプロをもうならせるゲームが完成
こうして「GET BASS」は完成した。初めての水中の映像と自由に操作できる竿によって、バス釣りが実際に体験できるようだと、発売当初から爆発的な人気を誇った。バス釣りのプロの間でも話題になり、ゲームにチャレンジする人が多いことも報告された。その後、50匹のバスは再び活魚運搬車で運ばれ、もと棲んでいた湖へリリースされた。
「不可能かもしれない。でもそれを可能にする努力こそが面白いゲームを作る」と郷司はこのゲーム作りを通して思ったのだった。