2006年5月18日 掲載
 
記録ストップに「おびえる自分がいた」 連続出場の心境吐露
 

記者会見を終え、立ち上がる松井選手=ヤンキースタジアム(時事)
 【ニューヨーク支局17日杉山圭一郎】「おびえる自分がいた」。他人に弱さを見せることを嫌う松井秀喜選手が、日米通算1768試合で途切れた連続試合出場記録への思いを聞かれ、こう答えた。意外な言葉だった。一瞬耳を疑ったが、本人の顔は真剣そのもの。けがや病気に気を配りながら試合に出場し続けることは、「鉄人」とまで言われた松井の心から、いつの間にか余裕を奪っていたのかもしれない。

 連続試合出場の始まりは巨人時代の一九九三年八月二十二日。当時の長嶋茂雄監督から「ファンのためにも、全部出続けるんだ」と励まされた。メジャーリーグの世界に飛び込んでも、トーリ監督という理解者に支えられ、松井は「1768」という数字を刻んだ。

 連続出場への思いを「誇り」と口にし、出続けるための体調管理は怠らなかった。それでも、長年プレーしていれば、欠場のリスクが迫るのは一度や二度ではない。知らず知らずのうち、プレッシャーが大きくなっていたのだろう。「いつかこういう日がくると思っていた。小さい部分なんでしょうが、心の中でおびえる自分がいたような気がするんです」と胸の内を明かした。

 しかし、「僕自身は特別残念な思いはなく、気持ちの切り替えは早かった」と言う。「(連続出場を)サポートしてくれた方、それを望んでいたファンの方の気持ちを考えると残念」というのが本音なのだろう。

 会見終盤、松井はこれまでの野球人生を振り返るようにやや遠くを見つめ、「今まですべてが順調のような気がしていた」と漏らした。その言葉は珍しく弱気なものだったが、何か吹っ切れた感じにも見えた。

 「これからは、違った心境でやっていけるような気もしている」。松井の表情はやけに穏やかだった。

 
戻る