2003年9月30日 掲載
 
きっぱりV宣言「11回勝つ。それ以外ない」 大リーグプレーオフ、あす開幕
 

プレーオフの地区シリーズに向け、打撃練習をするヤンキースの松井=29日、ヤンキースタジアム(共同)
 【ニューヨーク支局29日道上宗雅】大リーグのプレーオフ開幕を翌日に控えた二十九日、ヤンキースの松井秀喜選手はヤンキースタジアムで会見し、「十一回勝つという気持ちを持ってやる」とワールドシリーズ優勝の目標を明確に掲げた。ツインズとの地区シリーズは、米国東部時間三十日午後一時(日本時間一日午前二時)に始まる。

 世界一の栄光をつかむためには、地区シリーズ(5回戦制)、リーグ優勝決定戦(7回戦制)、ワールドシリーズ(7回戦制)をすべて勝ち抜かなければならない。プレーオフに出場した8チームすべてに世界一へのマジック「11」が点灯している。

 松井が「流れは非常に大事な要素になる」という短期決戦。地区シリーズで3勝を挙げればリーグ優勝決定戦に駒を進めることができるが、逆に3敗すれば早々と姿を消すことになる。「ただ勝ちたい。勝つという気持ちを持ってやりたい。それ以外はない」と、松井も1試合の重みをずしりと感じている。

 打席、守備位置、塁上ですべきは「次に起こり得るすべてをしっかり予想して準備する」こと。ミスを防ぎ、いい流れを手繰り寄せるためには「一球一球、プレーボールからゲームセットまでボールに集中するしかない」。松井の心構えはレギュラーシーズンで貫いた姿勢そのままだ。

 ヤ軍は地区シリーズの相手ツインズを、ここ二年で13勝0敗と「カモ」にしている。松井も本拠地デビュー戦で放った大リーグ1号の満塁本塁打や初の“猛打賞”を記録したのはツ軍戦。7試合で3割2分の9打点と打ち込んだ。

 「日本シリーズならあと四つ(4勝)だけど、これからワールドシリーズまでまだまだ先が長いですから」。松井の頭の中には会見で連発した「勝つ」ことしかない。ヤ軍にとっても松井にとっても、長いプレーオフになりそうだ。



●健闘、苦戦 7つの足跡 大リーグレギュラーシーズン終了

 【ニューヨーク支局29日道上宗雅】(30日付朝刊)米大リーグは二十八日、レギュラーシーズンの全日程を終え、ヤンキース松井秀喜選手の最終成績が確定した。単独1位に輝いた試合数や「(日本のファンには)がっかりさせたかもしれない」という本塁打。満足できる数字も納得がいかない数字も、ゴジラが初めて大リーグに残した足跡だ。中でも興味深い7部門を振り返る。(順位はア・リーグ内)

『試合数・163(1位)』

 松井が個人記録で唯一狙った全試合出場は、引き分け試合があったため、162試合に出場した他球団の二選手を抑えて単独1位という形で達成された。「無事やり通すことができて良かった」という松井は、ヤ軍百一年の歴史で全試合出場を果たした三人目の新人となった。

『本塁打・16(50位)』

 「日本の皆さんにはどうしてもホームランのイメージが強いから、多少がっかりさせたかもしれない」と言うものの、本拠地デビュー戦での満塁弾や日本人初のサヨナラアーチなど、印象的な一発もあった。「これから頑張りたい」と、ホームランに対するこだわりは捨てていない。

『打点・106(10位)』

 チーム打点王は1差で主砲ジアンビに譲ったが、打撃3部門の中で唯一、大リーグの一流どころと肩を並べた。チームトップの得点圏打率3割3分5厘は、松井の勝負強さを示す分かりやすい数字だ。

『二塁打・42(8位)』

 1936年にディマジオが記録した44本のヤ軍新人記録に惜しくも届かず。ライナーで外野手の間を抜く打撃が、一九九六年の巨人時代の最高34本を大きく上回る長打を生んだ。

『併殺打・25(2位)』

 結果としては最悪だが、ランクインしてしまった選手の中には3割30本塁打を達成したウェルズ(ブルージェイズ)やラミレス(レッドソックス)ら強打者が顔をそろえているように、強い打球を放った証明にもなる。

『ゴロアウト・223(1位)』

 文字通り“ゴロ王”になってしまった。「日本の時と同じようにやっていたら、間違いなくもっとゴロが増える」と、大リーグの投手に適応するためにはやむを得ない選択だった。ちなみに2位はイチロー(マリナーズ)の220。

『三振・86(48位)』

 「三振では何も起こらない」。走者がいる時、松井は意識的に三振を避けた。巨人時代は100前後の三振を喫してきただけに163試合でこの数字は少ない。トーリ監督が「何かを起こしてくれるバッター」と信頼を寄せた要因の一つだ。



※その他の数字

・打率―.287(34位)

 八月一日に3割を切って以来、大台に戻ることはなかった。しかし、チーム3位。

・安打―179(14位)

 巨人時代の167本を更新する自己最多記録。

・四球―63(25位)

・長打率―.435(52位)※イチローは.436で51位

 
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