2003年11月11日 掲載
 
ア・リーグ新人王逃す ベロアに4点差の2位 「ベスト尽くした。悔いはない」
 
 【ニューヨーク支局10日道上宗雅】「縁がなかったんでしょうね」―。巨人時代も受賞を逃した新人王をヤンキースの松井秀喜選手は、大リーグでも手にすることはできなかった。ただ、松井の表情に悔しさは見られなかった。「ベストを尽くしたし悔いはない。残念という気持ちも強くはない」。シーズン中から起こっていた新人資格の議論から解放されたこともあってか、むしろすっきりした様子。松井はこれで大リーグ一年目の公式行事を全て終え、今月二十日をめどに帰国する。

 1位ベロアが88点、2位松井が84点。もしベロアに1位票(5点)、松井に2位票(3点)を投じた記者が一人逆の評価をすれば同点になっていた際どい勝負は、一九八〇年に現在の投票制度が導入されて以来、もっともきん差の結果だった。

 マンハッタンのジャパン・ソサイエティ(日本協会)で約十五分にわたって会見した松井は、終始さばさばとした口調で、「悔しい」という言葉は一度も発しなかった。新人王に輝いたベロアを「ロイヤルズの快進撃を支えた一人で走攻守のバランスが取れた素晴らしいショートストップ」とたたえ、「彼が取って僕としてもよかったんじゃないかと思う」とさえ言った。

●ファン投票では圧倒

 二人の打率と本塁打数はほぼ互角で、打点は松井、盗塁はベロアがそれぞれ大きく上回った。しかし、大リーグ公式ホームページで行われた新人王ファン投票では松井が約50%の票を獲得して他を圧倒。ヤンキースを地区優勝に導いた功績もあり、松井は最有力候補とみられていた。

 しかし、日本プロ野球でMVP三度など超一流の実績がある松井に新人王の資格があるかどうかは、常に議論の的となってきた。もちろんルールの上では認められているが、この議論が松井の新人王獲得に向けてマイナスに作用することはあっても、プラスになることはなかった。

 それでも松井は資格があるかどうかについて「意見が分かれるところだし、どちらでもいい」と無とん着。新人王を逃したことに関しても「選ばれたからとか選ばれなかったかとか、賞によって自分自身のこれから先が変わることはない」と淡々と話した。

 「日本の時はかすりもしなかった」と苦笑いしながら言うように、悔しさなら試合に負けた時の方がはるかに大きいらしい。「チームが勝つためにプレーしてきて、一年間それをやり抜いた。後悔の気持ちはまったくないし、むしろ一年間しっかりやれたというすっきりした気持ち」。堂々と胸を張って日本に帰るつもりだ。
 
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