2007年05月30日 更新

松井秀“喜”べない135m弾…ヤ軍4連敗で最下位に転落

レストランの窓に当たる(写真下、AP)特大ホームランを放った松井秀。レ軍との差は開く一方だが、まだ諦めてはいない(撮影・原田史郎)

レストランの窓に当たる(写真下、AP)特大ホームランを放った松井秀。レ軍との差は開く一方だが、まだ諦めてはいない(撮影・原田史郎)

 【トロント(カナダ)28日(日本時間29日)】ヤンキース・松井秀喜外野手(32)が「3番・DH」で出場したブルージェイズ戦で4試合ぶりの5号2ラン。飛距離135メートルの特大アーチだったが、チームは2ー7で敗れて4連敗。借金「7」と地区首位・レッドソックスとの13.5差はともに今季最大で、デビルレイズと同率の地区最下位に転落した。

 鈍い「ゴン」という音が響いた。0−7となった直後の八回二死一塁。松井秀の打球は、バックスクリーン上部にあるレストランの分厚い窓を直撃。飛距離135メートルの特大アーチに敵地のファンもどよめいた。

 「完ぺきでした。最後に甘い球がきた。タイミングもスイングもよかった。(あす以降に)いい形でつながってくれればいいと思う」

 小さな声でブ然と空砲を振り返った。ヤ軍打線は、先発では通算1勝しかしていないブ軍のダスティン・マゴワン投手(25)に七回まで3安打と沈黙。ゴジラも初回一死二塁の先制機で三飛に倒れていた。八回に出た4試合ぶりの5号2ラン。飛距離は大リーグ移籍後トップ級だったが、勝敗には影響しない完封を阻止するだけの1発だった。

 松井秀が不機嫌だったのには、他にも理由がある。4連敗で借金は今季最多の「7」となり、地区首位・レ軍とは同最大で95年8月以来となる「13.5」まで広がってしまった。しかも試合後には、デビルレイズがサヨナラ勝ちしたため同率の地区最下位にまで転落してしまったのだ。

 ただ、この特大アーチがゴジラにとって復調の兆しであることは間違いない。3連敗した前日までのエンゼルス3連戦では計12打数2安打。不振時の特徴である内野ゴロが多かったとあって、試合前にはケビン・ロング打撃コーチ(39)と室内練習場でフォームを修正。打撃練習ではサク越えを捨てて「ライナーとかフライはとか考えず、自分のスイングをしてミートを心がけた」という。巨人時代のように打撃練習でアーチを連発して観客をどよめかすことはなくなったが、この日の特大弾で改めて長距離打者としてのパワーを見せつけた。

 「ここ数試合よくなかったが、願わくは今夜の本塁打をいいきっかけにしてほしい」とジョー・トーリ監督(66)も、この大ピンチでの“救世主”にゴジラを指名した。松井が本塁打を放った試合は今季1勝4敗。勝利に導く一発を打つことが、3番打者の使命になる。


■データBox

 松井秀はDHで好成績を残している。過去39試合に起用され、打率.356、10本塁打、34打点。定位置の左翼などDH以外での出場時は1本塁打平均7.4試合だが、DHでは同3.9試合にハネ上がる。DHで出場した今季3試合は不発だったものの、4試合目のこの日にデータ通りの本塁打が生まれた。

■GODZILLA in USA

 トロントはゴジラにとって、気に入っている遠征地の1つだ。美味しいレストランの多いことが一因。行きつけの店もあるのだが、訪れるたびに新しいレストランを“開拓”するのも楽しみにしている。ニューヨークから試合後に移動してきた前夜も気分転換を兼ねて外出。タクシーで約20分かけて「トロントでトップ級」の評価を受けている日本料理店を訪れた。新鮮な魚介類を食べてリフレッシュしたことが、この日の特大弾につながった?

★クレメンス3Aで零封「準備できてる」

 ロジャー・クレメンス投手(44)が28日(日本時間29日)、3Aスクラントンの先発としてトレド戦に調整登板し、6回無失点と好投した。五回まで毎回の6三振を奪い、許した安打は2本だけ。直球は最速で91マイル(約146キロ)程度だったが、最後まで球速が落ちなかった。「準備はできている。明日の体の状態が普通であれば、あとは首脳陣の評価を待つだけ」。この日はクレメンスを見ようと、チケットは完売。六回を終えた時には、満員の1万1310人から拍手を浴びた。

(ムージック)