戦闘機械獣の全て

愛と憎しみの前史




中央大陸地図

 ゾイド星はなぞにつつまれた星だ。たびかさなる大地震と火山爆発など、きびしい自然環境のまえに、この星の歴史はそのほとんどを地底にうずめ、溶岩にのみこまれてきたのだった。われわれが知ることのできるのは、わずか400年ぐらいにしかすぎない。しかもその歴史は血塗られた歴史である。
 そのむかし、中央大陸には約50もの部族が、他の部族と交わることなく孤立はしていたが、平和にくらしていた。山岳を中心にくらす風族、海に住む海族、洞窟に住む地底族などである。彼らは自分達部族の生活に適したメカ生体を家畜として、きびしい自然の中でせいいっぱい生きてきた。

 しかし、ゾイド星暦1600年ころになると、大規模な地震や火山爆発はすっかりおさまり、おだやかな日がつづくようになる。その結果、人々やメカ生体は急増し、食料が不足してしまった。人々は部族間の争いをはじめ、やがて中央大陸は巨大な2大勢力に分類されていった。一方はヘリック・ムーロア(風族の族長)にひきいられ、話しあいで平和な大陸にしようとする連合軍。もう一方は、大陸征服の野心を抱くガイロス(地底族族長)をリーダーとする同盟軍であった。それまで家畜であったメカ生体は武装されて兵器となり、その数は日ごとに増えていく。人々は戦火に傷つき、心は乱れ、平和と愛に満たされていた中央大陸は疑いと裏切りの大陸へと、その姿を変えようとしていた。

 ある日、ヘリックは誰にもつげず中央大陸をあとにした。
 ZAC暦1955年のことであった。連合軍はヘリックの不在を隠して同盟軍との戦いをつづけていく。

 1年半がすぎ、中央大陸が夏に入ろうとしていたある日。見た事もない物体が空をうずめ、攻撃をかけてきた。ヘリックが暗黒大陸に住むなぞの集団をそそのかして攻撃させたのだった。繰りかえされる攻撃に連合軍、同盟軍ともよくしのいでいたが、30日がたとうとしていたある日、とつぜんガイロスの前にヘリックがあらわれた。
「ガイロスよ、ゾイド星は大きい。我々はほんの小さな大陸に住むほんの小さな生き物にしかすぎない。みにくい争いをしているうちに、中央大陸の全てを失うことになるだろう。目を開け! ガイロス」
 ガイロスもただ征服のみを夢見る男ではなかった。各部族はヘリックの元、ひとつにまとまり、なぞの軍団を撃退することができた。やがて中央大陸に平和が戻ってきた。ヘリックを国王とするヘリック共和国が成立する。

 ヘリック王は二人の子供をさずかった。ヘリック・ムーロアU世とゼネバス・ムーロアである。ヘリックU世の母は風族の出身、ゼネバスの母は勇敢な戦士の血を引くガイロスの妹であった。ヘリック王はみずからの血をふたりにわけ、政治力・武力をあわあせもつ国家を兄弟が力を一つにして守るようにと考えていたのだ。
 ヘリック王は78歳でこの世を去った。ヘリックU世18歳、ゼネバス16歳の時であった。共和国議会はヘリックU世の希望を入れ、王位を空席とし、兄ヘリックを初代大統領、弟ゼネバスを共和国軍最高司令官に任命した。平和な日が続いた。しかし、ゼネバスのように戦うことを運命づけられたものには耐えられなかった。やがてゼネバスは共和国を去り、ゼネバス帝国を築くのだった。

 ヘリック共和国とゼネバス帝国の戦いの歴史は、こうしてはじまった。











共和国/帝国軍メカ軍団


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