2004年7月13日 掲載
 
ホームラン競争を辞退 米球宴前夜祭 「僕が出たらビール缶飛んでくる」
 

米大リーグ、オールスター戦前日に守備練習するヤンキースの松井=ミニッツメイド・パーク(共同)
 【ニューヨーク支局12日道上宗雅】(13日付夕刊)十一日のデビルレイズ戦後、ヤンキースのトーリ監督が松井秀喜選手に思わぬ言葉を掛けた。

 「ホームラン競争に出る気はないか」

 「僕が出たらビールの缶が飛んでくるからやめてくださいよ」

 オールスター戦前夜祭の本塁打競争の出場要請だった。しかし、松井は即座に辞退した。松井は「ああいう場はスーパースターが出るものだし、(自分が参加すると)失礼」という思いだった。今季17本の本塁打を打っているとはいえ、まだ本塁打を売り物にする打者には達していないと松井は考えているのだ。

 本塁打競争の出場依頼は、ア・ナ両リーグから出場予定だった八人のうち、体調を崩している同僚ジアンビの代役として白羽の矢が立った。

 ヒューストン入りしてからは大リーグ機構の関係者からも出場を求められたが、再び断った。同機構球団担当のフィリス・メリジ副会長は「断られて残念だったが仕方がない」と、出場要請をしたことを明らかにした。

 通算681本塁打のボンズ(ジャイアンツ)や555本のソーサ(カブス)ら、大リーグの歴史に残るホームランバッターに松井がぶつかる姿は、日本人なら誰でも見たいはず。現時点での本塁打数を見ても、17本の松井は出場選手八人に交じって5位と見劣りしない。

 それでも松井が断ったのは、大リーグの本塁打競争を「聖域」ととらえているからだろう。遊びの場ではなく、選ばれたスラッガーによる真剣勝負の舞台。誰よりも強いホームランへのこだわりが、「ベンチでお客さんとして楽しみたい」という言葉になった。

 オリオールズのテハダが優勝した十二日のホームラン競争を、松井はファンの一人として見つめた。「出られる選手になりたいですね」。心中を察すれば、出るからには日本のファンにいいところを見せたい、そして勝ちたい。松井が自分を認めるのは、いつの日か。



●自己新の17号も満足せず 進化の途中「気持ちよく球宴に」

 【ニューヨーク支局12日道上宗雅】(13日付朝刊)ヤンキースの松井秀喜選手が十一日のデビルレイズ戦で前半戦を終えた。打率2割9分4厘、17本塁打、58打点。本塁打数は早くも一年目の16本を超え、堂々たる数字である。それでも松井は「(日本で)50本打った松井秀喜を皆さん知っているわけですから」と素っ気ない。進化を続ける松井が満足することはない。

 球宴前最後の打席は圧巻だった。打球はぐんぐん伸びてヤンキースタジアムのバックスクリーンを直撃した。この試合は17号ソロを含む4打数3安打2打点。前半戦を最高の形で締めくくった。

 名将トーリ監督は松井の前半戦を振り返り、「昨季の経験が大いに物を言っている。いろんな球種が見分けられるようになり、スイングにも思い切りの良さが出ている」と分析する。一方で、「松井が日本でやってきたことを思えば、驚くべき数字ではない」とも。

 松井自身「去年と比べると(本塁打は)ペースよく出ているかもしれないけど、そんなに打ってる感じはしないですね」と話す。日本では七年連続で30本塁打を記録した。それほど打っているという感覚がないのは、このペースが体に染みついているからなのかもしれない。

 とはいえ、最近の調子については「投球に対していいスイングができている」、17号本塁打には「これで気持ちよく球宴に行ける」と素直に喜ぶ。松井はいい余韻を残したまま二度目の大舞台へ向かった。

 
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