2003年11月8日 掲載
 
本塁打、米で「王」目指す 【ゴジラが見た大リーグ・5】
 
 【ニューヨーク支局7日道上宗雅】500勝、4000本安打―。大リーグに残る通算記録のほとんどは、日本のプロ野球記録を凌駕(りょうが)する。主要部門で日本人が上回るのは、王貞治氏(ダイエー監督)の868本塁打しかない。大リーグ挑戦元年はホームランへの意識を抑えたものの、「こだわりは捨てていない」と言い切るヤンキースの松井秀喜選手は日米通算348本塁打。大リーグで偉大な先輩を追う。

 今季、300勝を達成したロジャー・クレメンスや、十二年連続のシーズン30本塁打を放ったバリー・ボンズら歴史に残る現役選手が、節目の記録を樹立するたび、上には上がいることに驚かされた。6号本塁打がクレメンスの300勝の祝砲となった松井は「僕は300分の7(勝)しか一緒にいないけど…。同じユニホームを着てプレーをしているのが不思議な感じ」と、米球界の至宝の偉業に立ち会い、しびれた。

 ただ、勝ち星の大リーグ記録はサイ・ヤングの511勝。日本の金田正一氏の400勝とは、100勝以上の差がある。張本勲氏の日本記録3085安打に対しては、大リーグには4256安打のピート・ローズを筆頭に二十五人もの3000本安打の打者がいた。

 そんな中で、王氏の本塁打数は”世界記録”としてさん然と輝く。松井の348本塁打は大リーグで言うと歴代六十九位、現役では十六位。日本プロ野球に当てはめれば、歴代十九位だ。

 松井が王氏への挑戦権を持つとする理由は、「一番自信がある」と言う試合に出場し続けるための体力、気力があるからというのが、日米記者の一致した見方。大リーグ記録の755本塁打を誇るハンク・アーロンは二十三年、二位のベーブ・ルースも二十二年にわたって現役を続けた。歴代四位のボンズは十九年目の来季、四十歳を迎える。二十九歳の松井なら、あと十年は確実に現役を務めるに違いない。

 もっとも、必要なのは大リーグでホームランを打つ力。「現時点では中距離ヒッター」「持って生まれたパワーが違う」―。開幕前に口にした言葉がシーズン中に変わることはなかった。昨季の50本塁打から16本塁打に激減したのも、今季の松井にすれば必然だったのかもしれない。

 ヤ軍に入ってから本格的に始めたウエート・トレーニングの成果は、徐々によりたくましい体つきとなって表れてきた。投手への対応力も、対戦を重ねるごとに上昇してきた。二年目は松井が大リーグでホームランバッターになれるかどうかの試金石のシーズンになる。(ゴジラが見た大リーグ・おわり)
 
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