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【泣き笑い】

<自動改札機> パソコンの頭脳が10個

中道裕二さん オムロン駅務機器担当主幹(47歳)



中道裕二さん
中道裕二さんさん

 ラッシュ時でも、改札口で渋滞をおこさない。これが自動改札機の最低限の条件だ。目安は1分間に60人を通せること、つまり許される時間は1人につき1秒しかない。

 だが、改札機がこなす仕事は増えるばかり。関西の「スルッとKANSAI」、関東の「パスネット」のような各社共通カードでは残額計算や印字、穴あけなどが欠かせない。最近は2枚同時に投入する改札機も登場した。

 「もはや、メカ部分は行き着くところまできた」。中道さんは思い始めた。

 たとえば「どこから乗ったからいくら」という判定作業だけなら0.03〜04秒で終わる。しかし、券の送り出しや印字時間の短縮には限りがある。裏向きに券が入ってきただけで、裏返す処理に0.15秒かかったりする。

 解決策はなにか。その答えが「並行処理」だった。

 券の投入口から取り出し口まで、改札機の長さは約1.6メートル。その中で乗降客2人分の処理を同時にこなせないか。そう考えたのだ。前の客が入れた券の書き込み確認をしている途中で、次の券の読み取りを始める。そうすれば1人にかかる処理時間は同じでも、全体を短縮できる。
オムロンの自動改札機
オムロンの自動改札機

 券を運ぶモーターの制御。磁気の読み書き。料金計算、そして扉の開け閉め。それぞれの仕事に、パソコン並みの演算処理装置(CPU)を個別に割り当て、独立して働かせるようにした。

 試作機の耐久テストには、30〜40人の社員をかり出す。輪になって並び、「ヨーイドン」でゲートを通り始める。各自が持つのは、駅で回収し、手の脂が付き、少しよれた切符。5分続けるとみんな汗だくだ。中道さんはストップウオッチ片手に、何度も性能をチェックした。

 最新鋭機には、高速のCPUが10個以上搭載されている。これらの並行処理で、処理効率は「1〜2割はアップしたはず」という。

 改札機の中に券を通さない「非接触型ICカード」をJR東日本が本格導入するなど、改札機の仕組みは変わりつつある。

 「切符はいずれなくなり、改札機の主役は演算部になるかもしれません」。期間限定割引や特典付き乗車券など、多様化するサービスに柔軟に対応できる改札機の開発スピードが勝負になる。

(岩切勉)

(09/24)

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