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小泉氏と共産党志位氏の握手

 「日朝首脳会談で小泉さんの支持率が上がったのはしようがないな」

 CSテレビの朝日ニュースターの「各党はいま」での私のインタビューで共産党の志位和夫委員長がこう答えた。へえ、そこまで入れ込むのかとびっくりした。

 なにぶん拉致の5人生存8人死亡の知らせがショッキングだったから、自民党内からは「それなのに何でこんな平壌宣言に署名してきたのか」と小泉純一郎首相への反発が噴き出した。「支持率が落ちるんではないか」と気をもむ政府幹部もいた。

 野党はといえば、民主党の鳩山由紀夫代表は「首相は追及しておらず、情けない」と語り、自由党の小沢一郎党首も「北朝鮮の思惑通り」と評価しなかった。その中で「重要な前進の一歩」と小泉支持を強く打ち出したのは共産党だったのである。

 平壌から帰って小泉氏と野党党首が一堂に会した。

 志位氏「小泉さんと私は国政のありとあらゆる基本問題で対決しているけれども」

 小泉氏「そうだ」

 志位氏「交渉再開への首相の決断は重くつらいものだったと思うが、強く支持する。協力を惜しまない」

 会談が終わって小泉氏と志位氏は「自然な形で」握手した。小泉氏にとって拉致問題で苦しいときだっただけに、共産党の支持はうれしかったらしい。各種世論調査で支持率上昇の報が相次いだのはその後のことである。

 「国交正常化」はいい、しかし共産党は拉致問題はどうしようというのか。志位氏は小泉氏との会談でも「今回明らかにされたものがすべてなのか、拉致犯罪の責任者はだれなのか、被害にあった人はどんな扱いを受けたのか」の全面解明が必要と述べ、責任者の厳正な処罰、被害者への謝罪と補償を求めるべきだと強調した。金正日総書記の認めた「国家犯罪」に対して当然といえば当然の要求だが、決して甘くはない。

 はて共産党と北朝鮮の関係をこれまでどういうことだったかなと振り返ると、ははあそうかと思い当たる。

 87年11月に大韓航空機爆破事件が起きると、当時の社会党内にはまだ「マルクス主義はテロリズムと無縁」などという意見もあったときに、宮本顕治共産党議長は「北の犯行」と明言した。共産党と北朝鮮は冷たくなって、しばしば国会議員訪朝団があったけれど、共産党は99年12月の村山富市訪朝団に誘われるまで行かなかった。

 88年3月、共産党の橋本敦参院議員が今回の拉致リストにある3組のカップルの行方不明事件について質問、梶山静六国家公安委員長の「北朝鮮による拉致の疑いが濃厚」という答弁を引き出した。この拉致問題を調べた先駆者の一人が橋本氏の秘書兵本達吉氏。ところがのちに共産党を除名になっている。

 不可解な部分も含めて様々なかかわりがあったんだなとうなずけるわけである。

 それにしても共産党は日朝問題に限ったとしても「必要な協力は惜しまない」などと言い切っていいのかどうか。イラク問題や経済政策では小泉内閣と厳しく対決しなければならないだろう。一つの政党として、ここは協力ここは対決とうまく使い分けできるのかどうか。対決姿勢が鈍くはならないか。

 その点で七転八倒したのがこの1年5カ月の小泉政権と民主党の関係である。鳩山由紀夫代表があるときは小泉構造改革に協力の姿勢を見せ、小泉氏に振られると対決に転じたりして、どうも民主党はよくわからんと世評もかんばしくなく、今回の鳩山氏の勝利とはいえない薄氷の3選につながっている。もっとも民主党は「政権」をめざさなければならない立場だから、こんな苦労も曲折もあるのであって、「政権」には遠い共産党は案外あっさりと使い分けできるということでもあるかもしれない。

 志位氏は「私たちは権力を持っている政党ではありませんし、もちろん軍隊を持っているわけではない。持っているのは道理だけなのです」と朝日ニュースターで共産党の自画像を描いている。何だか立派すぎて幾らか戸惑う思いもするのである。(2002.10.01)


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