牧瀬「相米監督にも大声でお礼を」
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女優主演賞を受賞し、天国の相米監督に感謝の気持ちを述べた牧瀬
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2001年(第56回)毎日映画コンクールの表彰式が7日、東京・芝の東京プリンスホテルで行われた。「ターン」の透明感あふれる演技で女優主演賞に輝いた牧瀬里穂(30)、「忘れられぬ人々」のベテランらしい味わいのある演技で男優主演賞をさらった三橋達也(78)、そして姉に続いて田中絹代賞を受賞した倍賞美津子(55)ら、昨年の映画界を彩った“銀幕の主役たち”が最高の笑顔を見せた。 ■各賞一覧
表彰式を一層華やいだ雰囲気にしたのが牧瀬だった。春めいたカラフルな花柄のドレス。控室にまで持ち込んだ4、5着の中から選びに選んで開始直前に決めたオフショルダーのセクシー衣装だ。会場でも堂々と主役を務め上げた。
「今の正直な気持ちを言えば、いただいちゃっていいのかな、そんな感じです」と謙虚な言葉でスピーチを始めたが、華やかな衣装が“ときめき”を感じさせたように今回の主演賞は確かに格別な思いがあった。
昨年9月に亡くなった相米慎二監督の「東京上空いらっしゃいませ」と市川準監督の「つぐみ」でスポニチグランプリ新人賞を受賞したのは90年。女優としての原点はそこにあった。それを踏み台に舞台、ドラマと活動の場を広げ、11年ぶりに毎コン凱旋。
受賞対象作となった平山秀幸監督の「ターン」は、交通事故を機に、誰もいない異次元の世界に入りこんでしまう銅版画家の不思議な日常を描いた。静ひつな世界に閉じ込められたヒロインをピュアに演じきり、この11年で蓄えてきた力を余すところなく発揮した。
「山田洋次監督、平山監督…新人賞をいただいてから、本当に素晴らしい出会いがありました。頑張ってきたことが間違いじゃなかったんだなって、それが何より」としみじみ。
「今年は語学の勉強で英国か米国に短期留学を予定していますが、映画はこれからもずっとやっていきたい。挑戦してみたいのは悪女です」と欲も出す。
「新人賞の時とはまた違った意味で賞の重みを感じます。そして、私を映画の世界に導いてくれた相米監督にも大声でお礼を言いたい」。きっとその声は天国の相米監督にも届いたに違いない。
三橋達也,、故川島監督眠るむつ市に報告に
半世紀を超える俳優生活で映画界の盛衰も肌で感じてきただけに三橋は、受賞に終始、笑みをたたえていた。
受賞作の「忘れられぬ人々」(監督篠崎誠)は、戦友3人が現代の悪に立ち向かっていく気高さがテーマの作品。
「思いもかけなかった権威のある賞をいただいて光栄です」と謝辞を述べた三橋は、クランクイン直前に風邪をこじらせ入院、医者に「命をとるか仕事をとるか」と決断を迫られながら現場に駆けつけたエピソードを披露。「3年前に話をいただいたんですが、企画が一度流れそうになったんです。それでも監督たちがくじけずに意志を貫いていたのにぼくが行かなかったら、それこそパーになっちゃう。出演できて幸運だった」と喜びをかみしめた。
三橋は「天国と地獄」「洲崎パラダイス・赤信号」など数々の名作に出演してきたがなぜか賞には縁が薄かった。「東宝のころには森繁(久弥)さん、三船(敏郎)さんがいらしたので、ぼくなどとても…」と言う。
時間ができたら世話になった故・川島雄三監督が眠る青森県むつ市に受賞を報告に行く意向だ。
≪倍賞美津子、8日「OUT」クランクイン≫86年の姉・千恵子(60)に続いて田中絹代賞に輝いた倍賞美津子(55)は黒いロングドレスで登場。表彰式では副賞の下関産のふぐに「姉(千恵子)の時はなかったふぐを兄弟4人で分けて食べたい」と笑わせた。
亡くなった母が田中絹代さんの大ファン。この日は、家族のアルバムの中に田中さんのブロマイドが入っていた、というエピソードも明かした。「賞をもらうと喜んでくれた親はいなくなったけど、兄弟や娘が喜んでくれた。時代って変わっていくんだなあと思った」と感慨深げ。昨年は「大河の一滴」「ターン」「赤い橋の下のぬるい水」と3作に出演。「昔からどんな役をやりたいというのはないけれど、面白そうだと思ったものを」とあくまでも自然体。8日には新作「OUT」がクランクイン。前回の同賞受賞者で、この日プレゼンテーターを務めた原田美枝子との共演だ。
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