自民党総裁選で21日、都道府県連の持ち票(各3票)を誰に投票するかを決める予備選の開票が8県で行われ、小泉純一郎元厚相が全勝した。特に麻生太郎経済財政担当相の地元・福岡で麻生氏を抑えて勝利したことは小泉氏に強い追い風が吹いていることの証明。野中広務前幹事長はこの日夜、24日の本選で橋本龍太郎行革担当相が1位にならなかった場合、決選投票を辞退する可能性を示唆。早ければ22日にも橋本氏が決選投票辞退を表明するとの見方も出始めた。
小泉氏1万3959票、麻生氏1万3756票…。地元の麻生氏が勝って当然であるはずの福岡県連予備選でも小泉氏が勝利を収めるなど、地方票が「小泉新総裁」に向かってなだれを打ち始めた。この日、予備選が行われたのは千葉、新潟、岐阜、福岡、佐賀、長崎、徳島、兵庫の8県。小泉氏はすべてで1位となり、県連票計24票を獲得。亀井静香政調会長は19日に開票した広島の3票。国会議員票で有利とされる橋本氏と、麻生氏はまだ0票だ。23日までに各都道府県連で順次、開票作業に入り、地方票計141票の行方は同日中に確定する見通し。全国紙政治部デスクは「小泉氏はこのままだと90票を超えるのは確実。100票を大きく超える可能性も大きい」と指摘した。
橋本派はこの日夜、緊急幹部会を開き対応を協議。橋本氏自身は「最後まで戦う」と執念を見せたが、有力幹部は「24日の両院議員総会での1回目の投票や決選投票での橋本氏の逆転は難しい」との認識を表明。またこれまで主戦論だった野中広務前幹事長も「流れはだいたい決まっている。地方(党員)の考え方を尊重しなければならない。国民に可能な限り醜いところを見せないようにしなければならない」と決選投票辞退を主張。党内では事実上の「敗北宣言」との見方が広がっており、一気に「小泉新総裁」が現実味を帯び始めた。
23日にすべての予備選結果が判明した後、橋本氏の「候補辞退」を含め、橋本、小泉両陣営などで協議が行われる可能性も高い。加えて、永田町では「小泉氏が90票を獲得してしまえば、橋本氏はダブルスコアかトリプルスコアで負ける可能性が高い。そうなれば橋本氏がいかに国会議員票で有利であっても、本選辞退に追い込まれることもあり得る」(与党関係者)との見方が出始めた。さらに、決選投票でカギを握る江藤・亀井派では、「小泉氏が予備選で圧勝すれば、小泉氏支持に回らざるを得ない」(幹部)とのムードが強まっている。橋本派内では「これ以上傷つく前に、橋本氏は22日にも辞退を表明すべき」(橋本派関係者)との声まで上がり始めた。