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Web担当者 現場のノウハウ vol.1

Googleを成功に導いた6つの教訓

金, 2006-08-11 11:50
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Google Watch

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第1回:ヒットの法則:Google、mixi、iPodを6つの教訓で検証

林 信行(ITジャーナリスト)

今や技術面でもビジネス面でも、インターネットを語るうえで欠かせない存在となったGoogle。この連載では、そんなGoogleが提供しているサービスとそれを支える技術の解説、ビジネス的な可能性の考察など、さまざまな視点から捉えていく。

Googleとmixiの類似点

成功しているIT企業にはどんな秘密があるのだろう。最近、日本でノリにノッている企業と言えばソーシャルネットワークのmixiだ。7月26日には会員数500万人突破を発表している。

mixiはこの2年半、ほとんど広告を打つこともなく、日本でもっとも注目されるIT企業へと成長した。

筆者は2年前にmixiが一般向けに本格的にサービスを始める前からの会員で、同サービスがほとんど誰にも知られていない頃から紹介記事を書き始めていた。

当時、筆者のまわりではほとんどmixiは知られていなかったが、その後、ポツリポツリとユーザーが増えていく。取引先の出版社に足を運ぶと、毎週着実にオレンジ色のページが増えていくのだ。

実は筆者が、その様子を見て真っ先に思い出したのが、5年前となる2001年のできごとだ。

この年、mixiと同様に一切広告を打たないあるITサービスが、口コミだけで同様の広がりを見せていったのだ。

この当時も、筆者がGoogleの記事を書いた雑誌の編集部ですらGoogleを使っている人は5分の1くらいで、その他のほとんどの人は新聞社やポータルサイトのウェブページを開いていた。

しかし、2001年の終わりから2002年にかけて、これが次々と真っ白で味気ないほどシンプルな検索エンジンの画面に置き換えられていった。そう、Googleだ。

mixiが日本一注目されるIT企業なら、世界一は間違いなくGoogleだ。

両社の成功にはいくつかの共通項がある。

例えば売り上げの多くを広告収入に頼っていること。それから自社のサービスについては、ほとんど宣伝を行っておらず、口コミで広まってきたこと。さらに、目的が驚くことはっきりしていること。

Googleは、「世界中の情報を体系化し、アクセス可能で有益なものにすること」、mixiは明文化はしていないが、あえていえば「友達を常にアクセス可能にし、有益かつ楽しい交友関係を築くこと」だろうか。

誰に強制されるでもない形で、友達とゆるく楽しくつながる手段をたくさん用意することで、毎時間とは言わないまでも8割近くのユーザーに3日に1度はアクセスしてもらおう、というのがmixiの狙いであり、実際、同社はその試みにおいて成功している。

Google社が示した6つの教訓

さて、こうした成功した会社に、過去を振り返って語ってもらい、アドバイスをもらうことは簡単だが、過去はいくらでも取り繕えるし、成功した後の意見では、どうしても説得力に欠けてしまう。

まだ成功へのはしごを上り始めていた頃、彼等は世界にどんな風に接していたのだろう。

2001年2月、Googleの共同創業者の1人であるラリー・ペイジ氏が「DEMO Japan 2001/Spring」というイベントに参加するために初来日している。

イベント翌日、8人ほどのプレスを集めた小さな説明会が催されたが、筆者は幸運にもその会に出席し、ビデオカメラを回していた。

この5年前のビデオ映像を改めて見直していたところ、ペイジ氏が説明会の最後に、同社が創業から3年間で学んだ教訓を、日本の企業やマスコミとも共有したいとしてまとめてくれていた。

せっかくの機会なので、ここに再びそれをまとめてみようと思う。

教訓1:何よりも製品が大事

1つ目の教訓は「何よりも製品が大事だ」ということだ。いい製品をつくらなければ何も始まらない。逆にいい製品は、それだけで宣伝になる。

mixiも、アップルのiPodも、この教訓通りいい製品で成功した。機能などが充実していることはもちろんだが、Googleやmixi、iPodに共通しているのは、やたらめったらと機能を追加するのではなく、不要な要素は削って、仕上がりのよさにまで気を配っていることだろう。

教訓2:まずはポテンシャルを試せ

2つ目の教訓は、「まず製品のポテンシャルを試してみて、商用化のことは後から考えろ」というものだ。

ITバブルの時代、多くのIT系企業は、とりあえず製品のコンセプトだけを売り込んで、出資を集め、その後、大勢のエンジニアを投じるものの、結局、製品をつくれないまま泡と消えていってしまった。

これはまったく逆のやり方で、まずは製品をつくって試すべきだというのがペイジ氏の主張だ。

「IT系のサービスなんて、つくるのはそんなに大変ではないし、コストもかからない。とりあえず1~2人でサービスの原形をつくってみて、ポテンシャルを調べてみるのが重要だ。」

実際、mixiのサービスもバタラというエンジニアが1人でその原形をつくったというのは有名な話だ。

説明会で、ペイジ氏は「Googleは特にラッキーだった」と振り返っている。スタンフォード大学時代は、2~3人でチームをつくっては10~20個くらい、いろいろなサービスをつくって試す余裕があったからだという。

そうやって試したサービスの中で、一番、人気が高く、利用率が高かったのが検索サービスのGoogleだったということだ。

ちなみにペイジ氏の兄弟も、同様にいくつかのプロジェクトを試していた。彼が試したプロジェクトの中では電子メールを使ってコミュニティーがつくれるeGroupsというサービスが一番人気が高かった。後に彼はこれを事業化。2000年、eGroupsはYahoo!によって4億ドルで買収されている。

教訓3:マーケティングは不要!?

3つ目の教訓は「ウイルスのように広げろ、マーケティングは不要だ」というものだ。

今の時代、本当に優れた製品をつくれば、後は口コミで勝手に評判が広まってくれる。それによってマーケティング費用も大きく節約できる、というものだ。

それに、「こうやって口コミで製品が広がるか否かは、製品の作り方が間違っていないかを試す指標にもなる」という。

mixiも、Google同様にほとんど広告を打たずに口コミ(と招待状)だけで、ここまで広まった。

では、iPodはどうかと言えば、確かに派手な広告も打っている。だが、口コミの効果も決して無視できないはずだ。

この3つ目の教訓を果たすためにも、1つ目の教訓は重要になる。

教訓4:明快な目標と焦点の絞り込み

4つ目の教訓は「明快な目標を持ち焦点を絞り込め」というものだ。

先にもいった通り、Googleには最初から、明確に会社の使命をミッションステートメントにまとめている。

その解釈を変更したことはあるが、基本の精神は創業以来一度もゆがめていない。

mixiは、こうした目標の明文化はしていないが、ユーザーからどんなにたくさん新機能のリクエストがあっても、それをすべて受け入れるのではなく、着実に本当に必要だと判断した機能だけを堅実に取り入れていく姿勢に、何かディシプリンのようなものを感じる。

iPodも、基本はパソコンとデジタルがジェットの連携で、人々の生活を豊かにするという点で1本筋が通っている。

教訓5:人々の暮らしに影響を与えよ

5つ目の教訓は「人々の暮らしに多大な影響を与えよ」というものだ。

「誰も気にしてくれないようなサービスをつくっても面白くない。それよりは人々が情熱を感じられるサービスをつくった方がいい。人々がそれまでやろうとしていてできなかったことをやれるようなサービスをつくるのが望ましい」とペイジ氏は語っている。

Googleで何が可能になったのか。「10年前だったら図書館に1日中こもって調べなければいけなかったことが、今ならGoogleですぐにわかる」

ペイジ氏は、「私は凧好きだが、これまで世界で一番高くあがった凧はどれくらいまであがったのだろうか――そんな疑問もGoogleで検索すれば、すぐに答えが分かる。これはリサーチ好きの私にとってはたまらないことだ」と言う。

もっとも、インターネット検索そのものはGoogleの登場以前からあった。Googleの登場前後でインターネット検索がどう変わったかは次回以降の記事でとりあげたい。

mixiやiPodは人々の暮らしぶりに影響を与えたか? これは今更、説明するまでもないかもしれない。

筆者が知る限り、何十人という同級生が、それまでずっと消息知れずにいた同窓生との旧交を温め、一緒に仕事を始めたりしている。

筆者自身も親しい友達との話題が増えた。

一方でiPodは、すっかり忘れていた音楽を聴く楽しさをよみがえらせ、多くの人の暮らしぶりを変えてしまった。

教訓6:大きなマーケットに狙いを定める

「自らターゲットとする市場を絞り込んでしまわずに可能性を広げるべきだ。そうすれば成功したときには、その報酬が何十倍になって跳ね返ってくるし、それほど成功していなくても、なんとかうまくやっていける」

この教訓が正しいことは、Googleが自らの失敗で証明している。mixiが流行する直前、日本のIT業界にいる人達はGoogle社員がつくったOrkutというソーシャルネットワークにハマっていた。2004年にいきなり始まった同サービスは、Googleのブランド力もあって、あっという間に広まった。

IT業界の超有名人達が入っていたこともあり、それが呼び水となってわずか2か月で日本人ユーザーが1万人を突破した。

しかし、Orkutは日本語が使えず、当初、英語圏の人しかターゲットにしていなかった。そのため、すぐにGREEに、そしてやがてmixiに追い抜かれることになる。

mixiも、元々はイーマーキュリーという社名で、求人情報サイトのFindJob!に力を入れいてた。同社は、常に自社サイトの集客性を高めることにこだわってきた。そんな中、求人情報以上に間口が広い友達との交遊ができる「SNSサービスをやってはどうか」とバタラ氏が提案し、「それじゃあやってみよう」とmixiが始まった。

iPodの目的は、アップル社のデジタルライフスタイル戦略を広めることだ。

2001年、IT業界では、しきりに「パソコンの時代が終わった」と言われていた。アップルのCEO、スティーブ・ジョブズは、これからはデジタルカメラやビデオカメラ、携帯型音楽プレーヤーといったデジタル機器をより楽しく使うためのハブ(中枢)として、パソコンがますます重要になると説いた。

そうしたパソコン依存型デジタルライフスタイルの実例製品としてiPodをつくった。5年前、秋の発表会で「デジタルカメラとか、他の製品をつくるアイディアはなかったのですか」という記者の質問に、ジョブズは「もっとも多くの人が関わりを持てるのは音楽だろう」と答えており、自身も「音楽が好きだ」と付け加えている。

今から5年前に語られたことではあるが、Googleの教訓からはまだまだ学べることが多そうだ。

※現在、Googleでは自らの理念を「Googleが発見した10の事実」として公開している。


林 信行
ITジャーナリスト。ブログやSNS、インターネットビジネス、ケータイ関連の記事を、経済誌や新聞、コンピュータ雑誌に執筆している。特にアップルの製品やビジネス、カルチャーを長年取材し続けており、Mac関連は日本のみならず英米、フランス、韓国、ドイツなど海外の媒体にも数多く寄稿している。
著書には、アップル30年の歴史を綴った『アップル・コンフィデンシャル2.5J(上巻/下巻)』(オーウェン・リンツメイヤーとの共著/アスペクト刊)、監訳を行った『The Cult of Mac』(リアンダー・ケイニー著/エスアイビー・アクセス刊)などがある。その他、東京InterFMのラジオ番組「PC Talk」にも出演。
ブログ「nobilog2」。


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