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牧太郎の大きな声では言えないが…:結婚する結婚詐欺師?

 結婚詐欺師は結婚しない。結婚する意思がないのに結婚を餌に異性に近づき、相手をだまして金品を巻き上げる。心も体ももてあそぶ。しかし、「結婚する結婚詐欺師」はもっと始末が悪い。

 「大好きです。あなたの子供が欲しい」と言われて結婚したら、専業主婦とは名ばかり。掃除、洗濯、料理はまるでダメ。亭主が出勤するとエステ、三つ星レストラン、ブランドショップ。果てはパチンコ。夜はホストクラブに入り浸って午前様。不倫も時々。亭主とはセックスレス。子供ができるハズもない。

 家計は独占。亭主の小遣いはスズメの涙。もちろん、高額の生命保険をかけているから、亭主が抵抗すれば病気と見せかけて……ああ「結婚する結婚詐欺師」は恐ろしい。

 それでも、結婚詐欺は訴えられ「結婚する結婚詐欺」はいつも放置される。

 今年の漢字は「偽」。何を信じていいのか分からなかった1年。応募者の約18%が「偽」を選んだ。でも……日本人は「偽」に慣れていない。

 産地をごまかしたり、賞味期限を偽った「民の偽」は謝罪会見で袋だたき。(これは冗談だが)賞味期限を過ぎていても「おいしい」と褒めたたえた有名人がいたこと。例えば「赤福」のように(これは社会貢献と思うが)先代が伊勢神宮の前に江戸時代の街並みを再現した「おかげ横丁」を造り、市のスポーツ施設建設に私財18億円をなげうっていることなどは情状酌量されることはない。「民の偽」には厳しい。

 それに引き換え、メディアは「公の偽」にすこぶる寛容である。総理大臣が「公約? 言ったかな?」ととぼけると二の矢、三の矢が出ない。政治家は「結婚する結婚詐欺師」のように、ふてぶてしい。

 最近の「大きな偽」を紹介する。「衆参ねじれ現象は想定外」は真っ赤なうそである。憲法制定過程で連合国軍総司令部(GHQ)は「300人以上500人以下の公選議員からなる単一の院」を主張した。理由は「一院、二院の間に争いが生じる」だった。

 何かにつけて「想定外」で逃げようとする「偽」。衆院落選組の天下り先?になった参院に無用論が出ては困る。そこで独立行政法人の廃止統合に熱心なフリをする「偽」。果ては防衛汚職を守屋武昌前次官の“おねだり妻”の仕業にすり替える「偽」……「結婚する結婚詐欺師」によく似た人種になすすべもない。我ら善人たちの切ない年の瀬だ。(専門編集委員)

毎日新聞 2007年12月18日 東京夕刊

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