今から、8ヶ月ほど前の会話を思い出している。
2005年の年の暮れ。メンフィス グリズリーズがシアトルを訪れていた。
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敗れはしたものの、ジノビリーはその能力を存分に発揮。日本のファンをおおいに沸かせた。
Garrett W. Ellwood/NBAE/Getty Images
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その時、隣りでパウ ガソルが膝をアイシングしていた。時間が来るまでは身動きも取れず、暇そうにしている。すると、その世界選手権の会話に、バティエーが巻き込んでくれた。
「スペインは、結構本気なんだろう？」 ガソルは、乗ってきた。
「お前らは、どうでもいいんだろう？(笑)」 二人は、声を上げて笑った。
スペインとアメリカの決勝ーーそれは当時から現実的だったものの、アメリカは準決勝で敗れ、スペインは同じ日にアテネ五輪を制したアルゼンチンを破って、決勝へ駒を進めている。
ガソルは試合途中で左足を痛め、試合終了の瞬間をベンチで迎えたものの、残り1分を切ると、涙が止まらなくなっていた。
彼の本気は、偽りのないものだった。
アメリカは、スペインを一番マークしていたという。3位決定戦でアルゼンチンを破った後、ドワイトハワードはスペインとアメリカを破ったギリシャとの決勝戦の行方を尋ねられて、「スペイン」と答えてえている。
「大会前から、スペインをマークしてきた。彼らが勝ち進んだのは順当だ」
はっきりとは口にしなかったが、アメリカにとってギリシャは「ノーマークだった」との印象を受ける。確かに昨年のヨーロッパチャンピオンだが、それでも、「なせ負けたのか」と。
そう。彼らの目は、常にスペインであり、アルゼンチンに向いていた。だからこそ、ギリシャに不覚を取ったのだろうか。五輪では、そのギリシャを破った。スペインも決勝リーグで退けたが、スペイン強しとの印象は彼を含め、誰もが持った。
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MVPに選出されたガソル。準決勝で惜しくも骨折してしまったが、それまでスペインの大黒柱を勤め、納得の受賞となった。
Garrett W. Ellwood/NBAE/Getty Images
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かつては世界のトップにいた、セルビア・モンテネグロの衰退は、不安定な国政、協会の混乱が原因か。
さて、結果としては、スペインの圧勝。
しかし、負けてなお、アメリカが次の北京五輪の優勝候補筆頭であることは疑いがない。敗戦はむしろ、彼らにとって薬になったかもしれない。
ギリシャに負けた瞬間、カーメロ アンソニーは天を仰いだ。彼が負けたことに対して、あれだけのリアクションを見せたことは、プレイオフでも記憶にない。負けても勝っても、本心を表さないのが彼だが、その彼が、悔しさを露にしたのである。
3位になったからといって、屈辱には変わりのない翌日のアルゼンチン戦で、アメリカはこの大会最高のバスケットを見せた。「順位決定戦は、モチベーションの作り方が難しかった」という、カーク ハインリックだが、ドウェイン ウェイドを中心にアメリカは、マヌー ジノビリー率いる世界王者を圧倒。確かに、彼らはアメリカのバスケットスタイルに近く、戦いやすい面はあったかもしれないが、その差は得点以上のものがあった。
あの日アンソニーが、天を仰いだ時の気持ち。引き上げる時に、こぼれ落ちようとする涙をこらえた気持ちーーそれらを持続できれば、米代表は日本で大きなものを得たということになる。
ところで、スペインを決勝まで導いたガソルが、左足小指の剥離骨折の疑いにより、決勝戦に出場できなかった。しかし、チームは圧勝して彼に金メダルをもたらす。NBAのシーズン出遅れは避けられないが、彼もまた日本で、大きなものを得たといえる。