ブラウンGPがデビュー戦1-2フィニッシュの快挙!
オーストラリアGP - 決勝
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週末を通じて速さを発揮したブラウンGP
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29日(日)日本時間15時(現地時間17時)から2009年F1世界選手権第1戦オーストラリアGP決勝レース(周回数58周、レース距離307.574km)がメルボルンのアルバート・パーク・サーキット(全長5.303km)で行われた。
F1界は今シーズンより、レース中の追い抜きを増やしてエキサイティングなレースを展開することを目的とし、大きな改革を導入した。大きく分けて3つあるその改革とは新しい空力レギュレーション施行によるマシンデザインの変化、11年ぶりのスリックタイヤ(溝なしタイヤ)復活、運動エネルギー回収システム(KERS)の導入である。
レーススタート直前のコンディションは晴れ、気温22℃、路面温度29℃。ブリヂストンはオーストラリアGPにミディアムコンパウンド(ハードタイヤ)とスーパーソフトコンパウンド(ソフトタイヤ)を持ち込んだ。
28日(土)の公式予選後、グリッド順にいくらか変化があった。予選を15番手で終えたルイス・ハミルトン(マクラーレン)はギアボックス交換を実施したため、ルールによって5グリッド後退。このままであれば最後尾からのスタートだったが、さらにトヨタ勢のリアウイングが“過度に変形しやすい”状態と判断されてレーススチュワードがトヨタ勢を予選から除外したため、ハミルトンは18番グリッドからのスタートに。トヨタはウイングに修正を加えたため、ピットレーンからスタートすることになった。
フォーメーションラップが開始となり、予選でポールポジションを獲得したジェンソン・バトン、2番手のルーベンス・バリチェロの順にダミーグリッドを離れた。多くのマシンがハードタイヤを履いたが、ロバート・クビサ(BMWザウバー)やフェリペ・マッサとキミ・ライコネンのフェラーリ勢、セバスチャン・ボーデ(トロ・ロッソ)、ルイス・ハミルトン(マクラーレン)らがソフトタイヤを履いてスタートした。
トヨタを除く18台がスターティンググリッドにつき、レーススタート! バトンはうまく発進したが、バリチェロがスタートでミスし、大きくポジションを落とした。2番手にセバスチャン・ベッテル(レッドブル)、3番手にマッサとなり、4番手以下はクビサ、ライコネン、ニコ・ロズベルグ(ウィリアムズ)、バリチェロ、中嶋一貴(ウィリアムズ)、ネルソン・ピケJr.(ルノー)、セバスチャン・ブエミ(トロ・ロッソ)がトップ10でオープニングラップを終えた。
オープニングラップでいくつか接触があり、ニック・ハイドフェルド(BMWザウバー)、エイドリアン・スーティル(フォース・インディア)、マーク・ウェバー(レッドブル)、ヘイキ・コバライネン(マクラーレン)が緊急ピットインを強いられた。コバライネンは走行不能の状態に陥ったため、ガレージにマシンを収めた。
レース3周目でバトンは2番手ベッテルにすでに4.5秒のギャップを築いた。一方のバリチェロはスタート時に接触し、フロントウイングの左エンドプレートを破損。しかし緊急ピットインはせずに走行を続けた。
ハミルトンは下位から順位を上げ、7周目に9番手まで浮上。またロズベルグがライコネンを攻略して5番手に上がった。それに続いてバリチェロもライコネンに迫ったが、ターン3でわずかに接触。両者ダメージはないようだが、ソフトタイヤを履いているライコネンは明らかにタイムが落ちていることもあってピットに入った。
同じくソフトタイヤを履いているマッサもタイムが上がらず、4番手のクビサ、5番手のロズベルグのプレッシャーを受け、たまらずピットインしてハードタイヤに履き替えた。ハミルトンもピットに入りハードタイヤに交換した。
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スタート直後の第1コーナーは今年も大混乱
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先頭のバトンは2番手ベッテルに4.2秒のギャップを築いてレース14周目を走行。ベッテルは17周目にピットインし、再びハードタイヤを履いて11.6秒間の給油を終えてコースに復帰。ロズベルグもピットインしたが、左フロントタイヤの脱着に手間取って大きくタイムロス。再びマッサとクビサの後ろに戻ってしまった。また17周目にバトンが1分28秒020のファステストラップをマークした。
すると19周目に中嶋がターン4の先でクラッシュ! 出口の縁石に大きく乗り上げてしまい、コントロールを失ってノーズからコンクリートウオールに接触したのだ。中嶋はここでリタイアとなった。
これを受けて多くのマシンがピットイン。バリチェロもピットに入ってノーズ交換と給油を済ませた。バトンも14秒とかなり長い静止時間の後、再びハードタイヤを履いてコースに戻った。バトンは2番手ベッテルに40秒以上の大差を築いたが、その直後にセーフティカーが導入された。
セーフティカー先導でレースが継続され、隊列が整った。23周目での順位は先頭のバトン以下、ベッテル、マッサ、クビサ、ライコネン、ロズベルグ、ピケJr.、トゥルーリ、ブエミ、バリチェロ、グロック、ハミルトン、アロンソ、フィジケラ、ボーデ、ハイドフェルド、スーティル、ウェバー。現地時間17時40分を回り、気温が21℃、路面温度27℃まで下がった。
セーフティカーは24周目いっぱいでコースを離れ、リスタートの時を迎える。バトン、ベッテル、マッサ、クビサ、ライコネンは順調にレースを再開したが、ピケJr.がロズベルグに並ばれた。するとピケJr.がホームストレートエンドでのブレーキング時にコントロールを乱し、制御不能に陥ってスピン。そのままグラベルでストップしてリタイアを喫している。ロズベルグもミスしたことが響いて9番手までポジションを落とした。
レースはそのまま進み、32周目にマッサが最後のピットイン。ハードタイヤを履いて14番手でコースに復帰した。バトンはベッテルに安定したギャップを築き、首位を保って走行。完全にペースをコントロールしている模様だ。
レースは39周目。バトンとベッテルのギャップは5秒。いずれも1分28秒4あたりのラップタイムで走行を重ねた。40周目にクビサとライコネンが同時にピットイン。クビサ、ライコネンの順番は変わらずにコースに復帰した。
しかし44周目にライコネンがまたもピットイン。直前のセクター3でスピンを喫してノーズを軽くウオールにヒットしたことが原因のようだ。表彰台の可能性もあったライコネンだが、その望みは失われてしまった。
2番手のベッテルが46周目にピットインし、ソフトタイヤに履き替えてコースに復帰。再び2番手でコースに戻った。またマッサがスローダウンし、ガレージに帰還。そのままマシンを降りてしまい、フェラーリ勢にとっては昨年以上に不運な開幕戦となっている。
フェラーリ勢の後退によってバリチェロが上位に復帰。またバトンが48周目に最後のピットストップを行い、ソフトタイヤを履いた。きっちりベッテルの前、首位でコースに戻る。52周目にピットインしたバリチェロは8.6秒静止、ソフトタイヤを履いてガレージ前を離れた。ロズベルグとの勝負になったが、わずかな差でロズベルグの後ろでコース復帰。レース残りは7周だ。
レース終盤になって路面にはラバーがかなり乗っているように見受けられたものの、その時点でもソフトタイヤのデグラデーションは激しいようだった。多くのマシンがソフトタイヤを装着していたが、ハードタイヤを履くクビサ、トゥルーリ、ハミルトンと比べるとラップタイムは1秒以上遅い。そのため、ソフトタイヤのロズベルグがトゥルーリやハミルトン、グロックにかわされて8番手まで落ちた。
レース残りは4周。トップを走行するバトン、2番手ベッテル、3番手クビサ、4番手バリチェロ、5番手トゥルーリ、6番手ハミルトン、7番手グロック、8番手アロンソまでがポイント圏内。ロズベルグはアロンソにもかわされて9番手に落ちた。
2番手のベッテルも苦しい。クビサがターン3で仕掛けたがベッテルも粘って・・・接触! これで両者ともに大きなダメージを負い、クビサはさらにコントロールを失ってウオールにヒット。ベッテルも完全にスローダウンしてピットに向かった。これでバリチェロが楽に2番手に浮上、ブラウンGPが1-2態勢だ。
クビサとベッテルのクラッシュによってセーフティカーが導入された。これでバトン、バリチェロ、トゥルーリ、ハミルトン、グロック、アロンソ、ロズベルグ、ブエミ、ボーデ、スーティル、ハイドフェルド、フィジケラというオーダーに。
レースはセーフティカー先導のままフィニッシュ。バトンが2006年ハンガリーGP以来の通算2勝目をポール・トゥ・ウインで飾った! バリチェロも最後に幸運に恵まれ、2位。ブラウンGPはデビュー戦で1-2フィニッシュという快挙を成し遂げた。またトヨタのトゥルーリもピットレーンスタートから見事な立て直しをはかって3位(
*)。日本人ファンにとってはなんとも感動的な表彰台の面々となったことだろう。
4位以下はハミルトン、グロック、アロンソ、ロズベルグ、ブエミ。ブエミはルーキーとしてデビュー戦ポイント獲得を達成した。9位以下はボーデ、スーティル、ハイドフェルド、フィジケラ、ウェバー、ベッテルからクビサ、ライコネンまでが完走扱いとなり、マッサ、ピケJr.、中嶋、コバライネンの4台がリタイア。
ファステストラップは1分27秒706を刻んだロズベルグが記録している。
(*: レース後、レーススチュワードがトゥルーリに25秒加算ペナルティを科した。2回目のセーフティカーラップ中にハミルトンをオーバーテイクしたのが原因である。このため、トゥルーリは12位に後退し、4位でゴールしたハミルトンが3位に浮上。以降のドライバーも1つずつ順位が繰り上がり、ボーデが8位1ポイントを手に入れた)