坂本が帰ってきた！１・５差でも大丈夫！２安打２打点

９回１死、坂本は岩瀬にバットを折られ中飛に倒れた

　◆巨人３―５中日（２８日・東京ドーム）　４試合ぶりに公式戦にスタメン復帰した坂本が、欠場の原因となった腰痛の不安を吹き飛ばした。難敵のチェンから３回に右前安打、５回に左前２点適時打。５打数２安打で打率を３割２分に上げ、リーグ２位とした。巨人はオビスポが７回、森野に勝ち越し２ランを浴びるなど３発を浴びて降板。反撃も及ばず、９連勝の中日に１・５ゲーム差に迫られたが、リードオフマンが待望の復活。あわてずに戦っていく。

　球威に負けることなく、左の手首を返した。力強い打球が三遊間を切り裂いた。仲間がつないでくれた満塁の好機で、坂本が見せたフルスイング。「このチャンスを何とかものにしたかった」。一塁ベース上から、ベンチへ左の拳を突き出した。

　０―２の５回無死満塁だった。フルカウントから、チェンの外角直球に食らいついた。「ストレートが速いので、少し始動を早くして強く振ることを意識しました」。腰痛から４試合ぶりにスタメン復帰した首位決戦で、変わらぬ勝負強さを発揮。試合は敗れはしたが、左前への同点タイムリーで意地を見せた。

５回無死満塁、一時は同点となる２点適時打を放つ坂本

　思い切り振り抜いたから、力負けしなかった。「僕は引っ張りバッターですから」と認める通り、フルスイングは勇人にとっての基本。この日の２安打で打率を３割２分とし、リーグトップの井端に３厘差の２位に上げた。今季１０８安打の内訳は、５本の内野安打を除けば、６６本が左中間より左方向。中堅の１７本、右中間より右方向の２０本を、大きく上回る。

　野球の神様がくれた左手で、ヒットを積み重ねてきた。右投右打だが、元々は左利き。幼い頃、右利きの兄のグラブを使ううちに、いつの間にか右利きとなった。日常生活では、両方を器用に使う。東京Ｄの試合でシャワーを浴びた後、２本のドライヤーを両手に持って髪を乾かし、周囲を驚かせているという。「その方が早く乾くから」と照れ笑いを浮かべるが、左手の筋力や感覚は右手に負けていない。

　スイングでは、その左手がリードとなり、ボールを芯でとらえ飛ばす。華麗な守備とグラブさばきも、自在に動く左手のたまもの。首位打者を争う井端が「野球センスがすごい」と脱帽する今季の飛躍は、坂本だけが持つ左腕が支えている。

　７月に入り、前半戦最後までの月間打率は１割９分１厘と調子を落としていた。さらに腰痛を発症し、前半戦最後の３試合を欠場していたが、２安打とフルスイングで不安を一掃した。「体の調子もいい。（打撃の）状態もいい。あとは勝つだけですね」。復調の手応えは得た。後半戦も勇人の左手が、勝利への扉を開く。