ヤンキースを撃て松井！《ヒルマニア》

　松井秀喜外野手（３５）の今回の移籍劇を見ると、レジー・ジャクソンのことを思い出してしまう。ヤンキース時代の１９７７、７８年の２年連続世界一に貢献。特に７７年のワールドシリーズで放った３打席連続本塁打は、「ミスター・オクトーバー」という異名とともに伝説として語り継がれている。

　メジャー通算５６３本塁打で殿堂入り。引退後の現在も、ヤ軍の特別顧問としてキャンプや公式戦を訪問している。松井のことを高く買っている一人でもあった。さてこの２人の共通点とは…。

　ヤ軍との５年契約の最終年だった８１年、ジャクソンは足の故障で不本意な成績に終わる。ドジャースとのワールドシリーズも第３戦まで欠場していた。しかし第４戦に「４番・右翼」で復帰すると本塁打を含む３打数３安打。「１０月男」らしいポストシーズンでの勝負強さを見せつけた。

　しかし、ＦＡとなった主砲に対しヤ軍はシビアだ。３５歳の年齢と守備の不安を理由に「主にＤＨとして契約したい」とのオファーを出した。まだ守れると自信満々のジャクソンは、オファーを一蹴。外野手としての起用を保証したエンゼルスと、当時のスーパースター級の「半額」となる年平均１００万ドルの４年契約を翌年１月に結んだ。

　迎えた８２年。自分を過小評価した古巣相手に燃えたジャクソンは、敵地ヤンキー・スタジアムでの初戦（４月２７日）で、エースのギドリーから本塁打。ニューヨークのファンは「レジー、レジー」の大声援を送った。

　このシーズン、ヤ軍との計１２試合でカード別最高の３割８分５厘、５本塁打を記録し、チームも７勝５敗と勝ち越し。ヤ軍にダメだしされていたはずの外野守備だが、終わってみると１５３試合中１３９試合で守りについた。結局、ジャクソンは２年ぶり４度目の本塁打王となる３９本、１０１打点の大活躍。チームを３年ぶりの地区優勝に導いたのだった。

　往年のスーパースターと、ここまで同じ道を歩んでいる松井。来年４月１３日のニューヨークでのヤンキー・スタジアム凱旋試合で「マツイ」コールを呼び起こせるか。そして、究極の目標は、これまでジャクソンしか受賞していない２球団でのワールドシリーズＭＶＰを獲得することだ。ちなみに、ジャクソンを放出したヤンキースが、次にポストシーズンに出場したのは１４年後の１９９５年だった。＝随時掲載＝

　◆レジー・ジャクソン（Ｒｅｇｇｉｅ　Ｊａｃｋｓｏｎ）１９４６年、米ペンシルベニア州生まれ。６３歳。アリゾナ州立大から６６年１巡指名でアスレチックス入り。７３年に３２本塁打、１１７打点の２冠王となり、ＭＶＰ、ワールドシリーズ（ＷＳ）もＭＶＰ。ＦＡ制施行１年目の７７年にヤンキース移籍。同年ＷＳで２度目のＭＶＰ。８７年引退。通算５６３本塁打、１７０２打点の一方、２５９７三振は大リーグ記録。９３年に資格取得１年目で野球殿堂入り。左投左打。