松井　開幕出た４４５号！長嶋さん超えました

７回１死一塁、右中間に１号２ランを放った松井

　◆オリオールズ１０―５ヤンキース（６日・ボルティモア）　ゴジラがミスターを超えた。ヤンキース・松井秀喜外野手（３４）がオリオールズとの開幕戦に、メジャー７年目で初めて「４番」で先発出場し、７回の第４打席で大リーグ通算３本目の開幕アーチをたたき込んだ。日米通算４４５号（日本３３２、米国１１３）となり、恩師の巨人・長嶋茂雄終身名誉監督の本塁打数を超えた。日本のミスターに最高の形で完全復活の知らせを届けた。

　バットにいくつもの思いを込めた。苦しみや試練、そして感謝。すべてを力に変えた。３点を追う７回１死一塁。初の開幕４番に入った松井が真ん中低め、やや外寄りに入った初球ストレートをフルスイング。「いい形で打てました。完ぺきでした」オ軍の右腕レイから放った打球は、大きな放物線を描き深い右中間席で弾む。昨年９月に手術を受けた左ひざ痛など、故障に泣かされ続けた男が力強く戻ってきた。

　主砲のプライドだった。０６年以来、メジャー通算３本目、自身７本目の開幕アーチ。試合には敗れたが、一時は１点差に迫る反撃弾。「あれでゲームがわからなくなったんですけどね」空砲となり表情を曇らせた。それでも４月に入り、オープン戦ラスト３試合で２ホーマー。キャンプで別メニュー調整を強いられ、もどかしさを味わったが、今はＤＨとしてヤ軍に不可欠なピースだ。

　試合後の駐車場へと続く通路。携帯電話を手に取った。「おかげさまで無事に開幕を迎えることができました」と話しかけたのは、長嶋茂雄・巨人軍終身名誉監督だ。開幕弾を報告すると「中堅方向に本塁打を打てるのは状態が良いのだろう。楽しみだ」と激励された。

　ついに、その恩師を追い抜いた。昨季は８月２３日に同じ敵地でのオリオールズ戦で放った日米通算４４４号が、最後の一発となっていた。「僕が活躍することが監督は一番、喜ぶ。それが恩返しになると思う」松井の脳裏には笑うミスターの顔が浮かんだ。あの時と同じ笑顔だった。

　日本に帰国した昨年１２月。松井が真っ先にしたことは恩師への結婚報告だった。自宅を訪れ、夫人を紹介した。長嶋さんは夫人の品格の良さをとても気に入り「松井、いい子じゃないか！」と大喜び。あいさつ程度で終える予定だったが、場所を自宅からレストランに移しての会食に発展した。監督の喜ぶ顔は何度見てもいい。それは今でも松井の原動力となっている。

　勝負のシーズンが幕を開けた。４年契約最終年は誰もが納得する結果が求められる。「本塁打が次につながっていければいい」黒星スタートも４番としての存在感は見せつけた。オフにまたミスターと笑顔の花を咲かすため、松井はひたむきに走り続ける。