松井電撃エンゼルス！「守りたい」プライドがある

　ヤンキースからＦＡとなった松井秀喜外野手（３５）が１４日、ア・リーグ西地区３連覇中のエンゼルスと１年６５０万ドル（約５億７８５０万円）で契約することになった。すでに合意しており、近日中に身体検査を受けた後に問題がなければ、正式発表される。エ軍は代名詞である背番号「５５」や松井が希望する外野守備だけでなく、全試合出場を“確約”するなどＶＩＰ待遇を用意。年俸は今季の半額となったが、松井は金銭面よりも起用法を選んだ。

　ワールドシリーズＭＶＰの栄光から４０日。注目を集めていた松井の来季所属するチームが、ニューヨークから北米大陸を横断したカリフォルニア州アナハイムに決まった。近日中に身体検査を受けた後、正式発表の運びとなる。年俸は１３００万ドル（約１１億５７００万円）から半分の６５０万ドル（約５億７８５０万円）となるが、金銭面は問題視していなかった。松井の心を動かしたのはエンゼルスの誠意だった。

　今季はポストシーズンを含めて一度も外野の守備に就くことなく、ヤ軍ではＤＨ専任だった。そんな松井に、エ軍は「外野手兼ＤＨ」を用意。首脳陣は左ひざの診断結果や、カリフォルニア州内で極秘トレーニングをしていた松井のプレーなどの報告を受け、外野復帰を受け入れた。毎日、試合に出場してペースをつかみたい松井の意向をくんで、全試合を出場させる方針を固めている。

　さらには巨人時代から背負った背番号「５５」も用意。現在は今年６月にメジャーデビューしたＳ・オーサリバンがつけているが、まだ２２歳で今季メジャーデビューしたばかりと実績のない選手だけに、背番号の変更に支障はない。また、打席数やオールスター出場、リーグＭＶＰ獲得など、複数の出来高が含まれているとみられ、まさにＶＩＰ待遇。ＦＡとなった時に言っていた「必要とされるところでやりたい」というチームが現れた。それがエンゼルスだった。

　単年での年俸だけを見れば、ヤ軍が残留交渉で十分にオファーしてくる可能性はあった。それでも松井は、ヤ軍が正式に条件提示をする前に、エ軍との契約を決めた。その裏には「外野手・松井秀喜」の誇りがあった。昨オフ手術を受けた左ひざについて、執刀医からの「問題なし」のお墨付きをもらったが、ヤ軍のキャッシュマンＧＭは「ＤＨとしてしか見ていない」と断言。高い打撃能力は評価しつつも、外野手での起用という選択肢はなかった。

　ヤ軍との交渉が進展しない中で、インディアナ州インディアナポリスで１０日まで４日間開催されたウインターミーティングで、松井獲得を決めたエ軍が外野守備をはじめとした好条件のオファーを提示してきた。松井に迷いはなかった。越年の可能性のあった契約交渉は、エ軍の誠意の大きさが終止符を打った。

　外野手として復活することは、シーズンを通して戦力としてチームに貢献できる。さらに、３年連続地区Ｖのエ軍ならば、再び最高の舞台に立てるチャンスはやってくる。チャンピオンリングをやっと手に入れた松井が、再びメジャーの頂点を極めるため、新天地に向かう。