松井よタイトル取れ！恩師・山下監督「引き際」力説

　エンゼルスの松井秀喜外野手（３５）が５日、母校である星稜高（石川）の山下智茂総監督（６４）から「引き際の美学」を説かれた。偉人の生きざまや死に際を紹介する本「人間臨終図鑑」を贈られ、残る野球人生でタイトル獲得など記録を残してほしいと切望された。帰省中だった松井は、石川から帰京。恩師の期待に応えるべく、新天地で臨む２０１０年の準備を始める。

　新天地でスタートを切る松井が授かった言葉は、意外にも“死にざま”だった。日本人初のワールドシリーズＭＶＰ獲得。そして、エンゼルス移籍。頂点を極めたばかりでも、かかる期待はふくらむ一方だ。

　山下総監督は語る。「松井もそういうこと（引き際）を考える年齢になってきたんだから、あとは自分の生きざまの中で、何を残していくかだな」。決して長くはない、現役生活。残りの野球人生をどう過ごしていくかを考える必要性がある。恩師は、そう説いた。

　これまで松井は「自分が野球をやめる時のことはまだ想像できないし、考えたこともない」と現実に目を向けてきた。日々ベストを尽くすことで、両ひざの故障に勝ち、日本人初の快挙を成し遂げた。ヤンキースの一員として頂点を極めたが、プレーヤーとして挑戦できる数字は多い。山下総監督は、本塁打王などのタイトル獲得を強く望んでいる。ユニホームを脱ぐ日まで、個人記録を追い求めてほしい、という願いの表れだ。

　優しくも厳しい恩師の思いが込められた１冊の本、「人間臨終図鑑」（山田風太郎・徳間書店）を、松井は授かった。歴史上の傑物の生きざまや功績などが記されている。戦国時代の武将で天下統一に乗り出した織田信長、幕末に明治維新の誕生に尽くした坂本龍馬、最近では米国に日本の歌を広めた歌手の坂本九など、１０００人に近い偉人が紹介されている。

　分野こそ異なるが、志を高く持ち、名を成した偉人たちの人生は、野球への取り組みにも通じる。山下総監督から「死にざまで人の生きざまが分かる」との教えを授かった。

　今年３６歳。年男の松井は寅年のシーズン、１年契約のエ軍で今後の野球人生を左右する戦いに臨む。いつか訪れるフィナーレを最高の形で飾るため、バットで健在を示す。