ＮＹが沸いた！ゴジラの恩返し弾！敵も味方も拍手

ジャッキー・ロビンソンデーのため背番号４２をつけた松井は、２回無死、右中間に３号ソロを放った（捕手・ポサダ）

　◆ヤンキース６―２エンゼルス（１５日・ニューヨーク）　エンゼルス・松井秀喜外野手（３５）が、古巣のヤンキースを相手に３号ソロを放った。昨年１１月のワールドシリーズ第６戦以来、１６２日ぶりとなるヤンキー・スタジアムでの本塁打に、敵味方を問わず観客席から拍手が起こった。ジャッキー・ロビンソンデーとなったヤ軍との３戦目、それまで９打数無安打４三振だったが、２打数２安打２四球と意地を見せた。

　待ち受けていたのは、敵地のスタンディングオベーションだった。「うれしいですよね。ヤンキースファンにとっては（本塁打は）相手チームに点が入る。良い出来事ではないでしょうから」。２回先頭、先取点となる３号ソロを放った松井は、敵味方が入り交じった歓声に包まれ、ベースを回った。

　ワールドシリーズＭＶＰを獲得し、インタビューでヤンキース愛を叫んだのは昨年１１月４日の第６戦。１６２日ぶりとなるヤンキー・スタジアムでの一発は、ニューヨークのファンに世界一の瞬間を思い出させた。

　ヤ軍ヒューズの甘い直球を右中間へ運んだ。３試合連続、１４打席無安打で迎えた打席。「際どいところをつかれたけど、しっかりと球を見ることができた」。ヤ軍バッテリーにボール球を振らされた２試合の借りを、２安打２四球できっちり返した。

　打球に感謝の気持ちを込めた。昨オフ、ファンから残留を望む声が集まった。今でも観客席には「マツイをずっと愛している」というメッセージボードが揺れる。移籍が決まり、「７年間、お世話になったヤンキースのファンへの感謝の気持ちがあるんです」。敵味方に分かれ、直接、気持ちを伝える場がなく、残念がっていた。３連戦の最後に届けた“恩返し”弾。言葉にできない思いを受け取ったからこそ、満場の拍手は生まれた。

　二重の記念になった。ジャッキー・ロビンソンデーで「４２」をつけ、初めて本塁打を放った。開幕戦やワールドシリーズなど、記憶に残る多くのアーチをかけてきた松井に、また一つ“勲章”が加わった。

　アウトになったものの、４回には二塁から本塁へ激走した。１試合で２度スライディングするなど、古傷がある両ひざの不安を感じさせないプレーを古巣に披露した。今季初のヤ軍戦は１勝２敗に終わった。「ヤンキースは強いですね」。初めて敵に回し、松井はヤ軍の強さを知った。だが、ヤ軍も昨年よりもキレを増した松井の怖さを知った３連戦だった。

　◆ジャッキー・ロビンソンデー　１９４７年４月１５日にデビューした初の黒人大リーガー、ドジャースのＪ・ロビンソン内野手の功績をたたえる日。人種差別に屈せず、首位打者に輝くなど、黒人選手にプロスポーツ界への門戸を開いた。デビュー５０周年となった９７年、Ｂ・セリグ・コミッショナーは、現役選手が背負っている場合を除き、ロビンソンの背番号「４２」を全球団の永久欠番とした。当初、試合での「４２」の着用は自由だったが、０９年から全選手、監督、コーチ、審判に義務づけた。現役選手で現在、「４２」をつけているのは、ヤンキースのＭ・リベラ投手だけ。