松井「甘い球をしっかり打てた」完全男撃ち１９戦ぶり５号

　◆エンゼルス４─０アスレチックス（１４日・アナハイム）　エンゼルス・松井秀喜外野手（３５）が“降格”に意地の一発を見せた。不振のため本拠でのアスレチックス戦で今季初めてクリーンアップを外れ、「６番・ＤＨ」で先発出場。６回に自身１９試合ぶりの本塁打となる５号３ランを放った。完全試合男のブレイデン投手から貴重な追加点をたたき出し、チームの連敗もストップ。眠りから覚めたゴジラが、上昇気流に乗る。

　試合開始前のクラブハウス。ホワイトボードには「ＢＩＧ　ＢＡＮＧ　ＦＲＩＤＡＹ（爆発の金曜日）」の文字が躍っていた。エンゼル・スタジアムの金曜ナイターは「花火デー」。６回開始前に打ち上がった号砲に、松井の大砲が続いた。

　６回、１点を先行した直後の２死一、二塁。松井は、１打席目に打ち損じた肩口から真ん中に入るスライダーを、迷いなく振り抜いた。「体を前に出されず、強いスイングができた」。自画自賛のライナーが、右翼席に突き刺さった。

　４月２２日のタイガース戦以来、自身１９試合、７５打席ぶりの本塁打。１試合３打点はエ軍移籍後最多となる。今季初の走者を置いての一発は、ブレイデンを攻略する価値ある一撃となった。「ゴジラにやられたね。失投だ」。９日のレイズ戦で完全試合を達成したばかりの技巧派左腕も、苦笑するしかなかった。

　この試合まで５月は３６打数４安打、打率１割１分１厘。４番どころかクリーンアップの座も明け渡した。「打順が変わったことで、自分は何も変わらない」。長いトンネルの出口は信念の「好球必打」を貫いた先にあった。「状態は少しずつ良くなっていると思いますけど、甘い球をしっかり打てたのが一番。それだけです」

　松井が６番に下がった新打線について、ソーシア監督は「出塁を期待して新しい１、２番を試した。しばらくこの打順でいきたい」と説明。それでも「ヒデキは、これまでと変わらず強いスイングができている」と評価した。松井自身も、これで完全復調だと安易には考えていない。「またいい形で、つながればと思います」。主砲のプライドを見せたアーチは、まだ狼煙（のろし）にすぎない。