松井をヤンキースが手放した…独占交渉期限「オファーしない」

　ヤンキースからＦＡ申請を行った松井秀喜外野手（３５）に対し、ヤ軍は独占交渉期間である１９日までに残留要請のオファーを出さないことが、分かった。ワールドシリーズ終了翌日の５日から１５日間が独占交渉の期間だが、現地１８日までヤ軍から交渉について連絡なし。２０日午前０時（日本時間同日午後２時）から、全３０球団との交渉が可能になる。すでにメジャー数球団がワールドシリーズＭＶＰに興味を示しており、争奪戦の幕が開ける。

　フィリーズを倒し、ＭＶＰを獲得したワールドシリーズは４日に終わった。翌５日から１９日午後１１時５９分５９秒までが、松井とヤ軍の独占交渉の時間。しかし、松井は残留オファーを受けないまま、期限を迎えることになった。メジャー関係者は１８日、「ヤンキースが松井にこの期間でオファーすることはない」と明言。“白紙”の状態から、来季プレーするチームを探すことになる。

　松井は９日に代理人のテレム氏を通じて、ＦＡ申請した。その後、ヤンキー・スタジアムを訪れ「可能性として、戻ってこない可能性があるので」と、ロッカーにある所持品をすべて持ち帰った。ＦＡ申請をしても１５日間は他球団と接触はできない。だが、松井サイドが打った早めの一手は、他球団の首脳の心を動かした。全球団ＯＫの姿勢を示したことで、米イリノイ州シカゴでのＧＭ会議（９～１１日）ではメッツやエンゼルスなどのＧＭが松井争奪戦に“参戦”する意欲を見せた。

　他球団の注目が集まる一方で、ヤ軍は編成上の事情から、松井へオファーをすることはなかった。今季２８ホーマーでＤＨとしては球団記録の本塁打数をマークした松井の力を高く評価している。だが、キャッシュマンＧＭは守備につきたい松井の起用法について、「外野手としては考えてない」とＤＨでしか起用しないことを明かしていた。

　ＤＨは１選手の起用に固定したくない方針がチーム内にある。３８歳のポサダ、３４歳のＡロッド、３５歳のジーターら主軸を休ませるポジションとする予定。さらに「若返り」も図りたい考えだ。今オフのＦＡでも、投手陣の整備を最優先課題としている事情があるため、松井との交渉までに至らなかった。

　２０日以降はメジャー全３０球団との交渉が可能となる。今ＦＡの注目選手であるホリデイ（カージナルス）、ベイ（Ｒソックス）ら両外野手の動向もあり、すぐに交渉が成立する可能性は低い。移籍先の決定は早くてもウインターミーティング（１２月７日～１０日・インディアナポリス）以降になる見込み。補強の進み具合によっては、まだヤ軍も交渉の席に着く可能性は残っている。

　松井はオフに入り、主にニューヨーク市内の自宅でシーズンの疲れを癒やしている。その他はイベントへの出席や、知人と会食などをして過ごす日々だ。「とにかく必要とされるチームでやりたい」という思いを胸に、新天地からの連絡を待ち、今後の交渉に入っていく。

　◆ＦＡ選手への球団の調停申請　ＦＡ選手に対して、引き留めたい旧球団は１２月１日までに年俸調停を申請しなければならない。この申請がない場合、残留の可能性は極端に少なくなる。ただ、昨オフのヤ軍はペティット投手と粘り強い交渉で１月２６日に契約をまとめた。なお、調停申請を受けた選手は７日までに受諾かどうかの回答をしなければならない。受諾の場合は残留が確定。拒否した場合でも、０７年オフのＡロッドのように契約見直しでヤ軍と１０年総額２億５２００万ドルの契約を結んだ例がある。