松井「僕の知ってる上原だった」…アメリカで実現元巨人対決

８回無死、左飛に倒れ悔しがる松井秀

　◆オリオールズ７－５ヤンキース（８日・ボルティモア）　盟友の気迫に、バットマンの本能を呼び起こされた。初回２死一塁。松井は上原の投げた初球のフォークにフルスイングで応えた。空振りだ。２球目は選球眼の良い松井が勢いに押され、ボール球に手を出した。「インハイのボール気味の球。いいところに来ていた」バットは２球続けて空を切った。最後はフォークを打たされ二ゴロ。魂のぶつかり合いだった。

　懐かしさと違和感が交錯した。「そんなに変わっていない感じ。僕の知っている彼だった」直球にフォークの組み立てなど、巨人時代に外野から見ていたイメージは変わらなかった。「打席から彼を見るのは、若干変な感じがしたけどね」と対決を振り返った。

　松井は上原の先発する試合が好きだった。それは試合時間が短いからだ。「テンポが速いと守りやすいし、打者にとってはいいこと。俺はだいぶ彼の恩恵を受けた」ともに過ごした９９～０２年の４年間で放った本塁打は１７０本。このアーチの中には、上原のテンポの良さが導いた本塁打もあったはずだ。

　４年間で上原が先発した９３試合、松井が放った本塁打は３０本もある。松井の巨人ラストイヤーとなった０２年は、２６試合で１２本もオーバーフェンス。「目に見えるものではないけれど、テンポがいいと意識をしていない部分でいい影響があった」と背番号５５は分析。オ軍打線も上原の好投に応えるように、４回まで７点と大量援護した。「（上原の）テンポの良さも変わっていなかった。今日のような投球をされると、ヤ軍でもそうは打てない」敵となった今はもう脅威でしかなくなった。

　「４番として、エースとして勝つために一緒に戦った。それが一番の思い出です」００、０２年に日本一と巨人の一時代を築いた２人が交わした３打席、１７球の“会話”は２人だけではなく、多くの人々の心に刻まれた。