松井、メジャー５度目のサヨナラ打！ごほうびは古巣相手に外野守備

　◆エンゼルス４ｘ―３アスレチックス（１０日・アナハイム）　エンゼルス・松井秀喜外野手（３５）が移籍後初のサヨナラ適時打を放ち、チームの連敗を４で止めた。アスレチックス戦に「４番・ＤＨ」で先発。９回１死一、二塁から右翼線へのタイムリーで試合の幕を引いた。エ軍・ソーシア監督は１３日からのヤンキース３連戦（ヤンキー・スタジアム）で左翼での起用を明言。古巣に不安視された外野守備を披露する機会を与えた。

　スタジアムの熱気は最高潮だった。「マツイ」と「ＭＶＰ」。２つのコールが入り交じった。同点の９回。３番・ハンターが目の前で敬遠された。塁を埋め、左打者と対戦するのが狙い。１死一、二塁。松井は大歓声に背中を押され、打席へ入った。カウント０―２、ア軍左腕・ブレスローの８７マイル（約１４０キロ）の速球だった。「カウントが有利になったので、ストレート系、甘いのを待っていましたよ」。バットを強く振り抜いた。

　快音に続いて、一塁への全力疾走をやめた。右翼線で打球が弾むのを確認したからだ。「チームメートが喜んでくれるのはうれしい」。５試合ぶりの勝利を呼ぶサヨナラ打は、もちろん移籍後初。昨年７月２０日のオリオールズ戦以来、メジャー通算５本目だ。マウンドにできた歓喜の輪に、赤い５５番がのみ込まれた。外野のスクリーンでは、ゴジラのキャラクターが跳びはねて祝福した。

　３回２死一、三塁では先制の右越え適時二塁打。連敗を４で止めた試合は松井で始まり、松井で終わった。球団広報によれば、負けて開幕から１勝５敗になれば、１９６１年以来のスロースタートになっていたという。前夜、大敗に腹を立てたソーシア監督に笑顔が戻った。５打数３安打２打点、打撃３部門でチームトップに立つ殊勲者を「野球をよく知っている選手だ。だからこれまで成功してきた」とねぎらった。

　活躍に応えるべく、指揮官はプレゼントを用意した。松井が口に出さない思いをくみ取り、後押しを決めた。「明日からの２、３日、ひざの様子を見て、次のカード（ヤ軍戦）で守らすことを考えている」。ヤンキー・スタジアムで左翼を守らせると明かしたのだ。

　昨年、一度も守備に就けなかった松井にとって、新ヤンキー・スタジアムは初めて守る思い出の舞台。しかも昨オフ、ヤ軍は松井を外野手として評価せず、「ＤＨ専任」を残留交渉の方針とした。「守備をやりたい」という松井の強い希望を受け入れたのがエ軍だった。

　古巣を相手に攻守で活躍できれば、これ以上ない痛快な“恩返し”となる。「今のひざの状態なら（ヤ軍戦で）守備に就いても大丈夫。ニューヨークが寒くないといいけどね」。松井は心身ともに万全。最も見せたい相手に、復活を証明する時が来た。