第4回 ようやく、そう、やっとです・・・。


	 その頃陸送の仕事で、初めて元プロのギタリストだったという人に知り合うことができました。
	その人に自分もdrumsをやってるんだ、プロでやりたいんだという話をして自宅に無理矢理遊びに
	行きました、というより押し掛けました。さすがに「レスポール」や「335」、「ストラトキャ
	スター」、そしてオーダーメイドの特注品のエレキなど持っていましたが、「プロを辞めてからず
	いぶんと何本も処分しちゃって、ホントに気に入っているものしか残していない。」ということで
	した。

	 とにかく、プロ!プロでやってた人!仕事で楽器を弾いて生活していた人にその時の話を、生活
	を聞きたくて聞きたくて、色々聞きました。けれどどんな話をその人に聞いたか、今はよく覚えて
	いません。というのはそれ以降現在に至るまで色々なプロのミュージシャンに、同じような質問を
	して同じような答えを聞いてきたので誰が言っていたことか、みんなゴッチャになってしまってい
	るのです。ただ一つだけその時にした話で覚えていることは、

	「何で、何故辞めたんですか?」

	「仕事、干されたんだよ。」

	「え!どうして!」

	「その時バックやってたアイドル歌手のマネージャーと衝突して、『お前!覚えとけよ!この業界

	で仕事出来なくしてやるからな!』って。」

	「その人ってそんなに影響力のある人なんですか?」

	「そいつから、なんか業界中に話が伝わってて何処行っても仕事になんなくて、結局諦めたよ。」

	「それってどのくらい前なんですか?」

	「5年くらいになるかなぁ。」

	「だったらもうホトボリも冷めていて、復帰できるんじゃないですか?」

	「そうかもしれないけど、もうあまり戻りたいと思わなくなったよ。」

	「そんなこと言わないで下さいよ!一緒にやりませんか?もう一回やりましょうよ!」

	「だめだよ。下手したら君まで睨まれちゃうよ。」

	 その後日、一度だけその人とリハーサルスタジオへ入ってセッションをやりました。その時の感想は、

	「やっぱプロだった人は上手いな!・・・だけど、現役の頃はもっとだったんだろうナ・・・。」


	 それ以降その人とはあまり音楽について話をする機会がなくなりました、というより話題を避け
	てたような気がします。けど、とってもいい人でした。
	 1年間の陸送の仕事を辞めて、今度は運送会社で2トントラックの運転手の仕事に就きました。
	築地に会社はありましたが、平和島からコピー用紙やトナー等のキャノンの消耗品を都内の文房具
	屋さんや会社へルート配送する仕事でした。
	 この仕事は約2年半続けましたが、この期間にウチのカミさんと知り合い、結婚し、子供が産ま
	れることを知ったのを機会に就職することにしました。そう決心してしまったため、運転手の仕事
	を辞めました。就職先も決めてないのに・・・。

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