第6回 やっとの思いで就職できた!
よ〜うやく給料もそこそこ希望にかなっていて、カミさんも反対しない会社が見つか りました。店舗の設計施工をやっている業界で中堅より少し上の会社でした。職種は営 業、1年目のノルマは2000万円。初めての業界で初めての営業職でその2000万 のノルマは多いのか少ないのかは分かりませんでした。たぶん普通だったのではないで しょうか?いや、少なかったかもしれません。 いずれにしてもこの会社で勤め始めてから退職までやっていたのは飛び込み営業でし た。朝一で都内の地図を広げ、その日回る鉄道路線の駅をいくつか決めて午前中に会社 を出て、夕方までときには夜までそれらの駅周辺のお店に片っ端から飛び込んで売り込 み、会社に戻って営業日報を記入してそれを部長の机の上の箱に入れて帰宅する、それ が日課でした。この頃はもう音楽のことはあまり考えられなくなっていました。 私が入って2〜3カ月後、中途採用でワタクシより4〜5才年上の人が同じ営業2部 に入ってきました。それまでもときどき同僚の人と一緒に回ることもありましたが、そ れから数日後、その人と一緒に回ることになり色々話をしていると、その人、「キム ラ」さんは以前芸能プロダクションに勤めていたというではありませんか。それ以来キ ムラさんとはよく一緒に営業に出て行っては仕事の途中で喫茶店に入り、音楽の話しや 業界の話などをしていました。 そしてそんなある日、キムラさんから「新宿の知り合いの小さなライブハウスで出演 バンドを捜している。チャージバックだけどメンバー集めて出てみない?」との話があ りました。それまでギャラが入らないどころか、お金を払ってライブハウスに出演して いた口です。お金をもらって出演する機会なんかほとんどなかったワタクシにとってそ れは非常に魅力的な話でした。 「ちょっぴり、プロの気分ン〜〜。」 1も2もなくOKしました。後はメンバーです。 大急ぎでその頃までに知り合っていた音楽仲間に尋ねまくって女の子のボーカル& キーボードを見つけました。川島ノリちゃんです。キムラさんが、ギターの人とアフリ カから来たという黒人ベースを連れてきました。そして、ノリちゃんがもう一人のキー ボーディストとして連れてきたのが、現役プロミュージシャンの「西沢正明」。(今の USPメンバー第一号です。)「現役か〜ぁ!この人がプロでやってるひとか〜ぁ!」憧 れの眼差しで見ていました。遂に現役プロミュージシャンと一緒に演奏できることに なったんです!!さすがに、鍵盤のタッチが強力で、譜面も渡すと即弾けるし何もかも が新鮮でした。 リハーサルは4〜5回原宿のスタジオ「ロサンジェルス」でやって、そして本番の 日。お客さんはというと、身内が4人!お客さん4人です!(片やバンドメンバーは5 人です・・・。)それも狭い店のステージから一番遠いカウンター席の一番奥に肩を寄 せ合うがごとく寄り添って・・・。 それでもライブが始まり、ノリちゃんのオリジナルや彼女のピアノの弾き語り、ユー ミンの曲、尾崎亜美の曲などまあ順調に(?)演奏していって4曲目だったか5曲目 だったか、 ツッッッ遂にやってしまいましたぁぁぁぁ〜〜〜〜〜。 曲が終わるところで、ドラムだけ続けてしまったのです!叩きながら 「しまっった!あそこで終わるんだった!あ〜続けて・・・タタタ叩いてるけど・・ どうやッッッッておわろ〜〜〜か〜〜な〜〜〜ぁ〜〜、ドラムソロしちゃエ!!って、 ドラムゥ〜・・ソ・ロ・〜〜に・・して・・〜シマッタ・〜・・け・!このままおわっ ちゃえ!!!!!!」 その時の他のメンバーの顔は、唖然・呆然だったことを今でもはっきりと覚えていま すですハイ。因みにこの時以来だと思います、ワタクシがドラムソロを嫌いになったの は・・・。