第7回 初めてドラムを叩いたのは・・・。

   
     ワタクシが中学2年生の頃でした。その頃のワタクシはまだ実物の、本物のドラムセット
    というものを見たことはありませんでしたが、「8時だよ、全員集合!」のドラマーをよー
    く観察してましたので、「セットのどの位置のどの楽器がどんな役割をして、どういう風に
    演奏されるか」ということだけは十分研究していましたので、私なりに工夫してドラムの練
    習をしていました。
     どうしていたかというと、まず家の裏庭に置いてあった壊れた松葉箒の細い部分を2本
    折って、それがワタクシのスティック。ちょっと細すぎますがコレには訳があります。その
    訳は後ほど。
    そして家にあったスチールの椅子2つをひとつは横にして置き、背もたれの部分がフロアタ
    ムの位置に来るようにしました。そしてもう一つを横にした椅子の足の部分の上に逆さまに
    置き、その椅子の足それぞれがタムタムだったりシンバルだったりに見立てて、それらを例
    の研究の成果を元に、見よう見まねで叩いていたのでした。
    ペダル類はどうしようもなかったので足だけ動かしていました。
    最初、スティックは楽器屋へ行って安いヤツ(1ペア300円だったと思います)を買って
    きて椅子ドラムを叩いたのですが、金属をソコソコの太さの木の棒で叩くわけですから、
    「手が痛い!音がうるさい!」そしてトドメに、「せっかく買ってきたスティックがすぐ折
    れて」しまいました。
     それに引き替え、ワタクシ考案の松葉箒のスティックは細さと軽さを我慢すれば(当時は
    それが我慢できたのです)適当なシナリがあるから手はあまり痛くない、音は小さい、竹だ
    から折れにくいと、「椅子ドラム」用のスティックには最適なものでした。

     そうやって練習を重ねているとき、ブラスバンドのパーカッションの同級生が
    「兄貴からドラムセットを借りて音楽教室においてあるよ」
    と言っていたのを小耳にはさんで、
    「見せて!見せて!見せて!」
    と見に行ったのです。
     見せてもらいました、本物のドラムセット!パール楽器の「チャレンジャー」、パールの
    一番安いシリーズのもの、と言えども当時6万円くらいだったのではないかと思いますが、
    やっぱりとっても高価で貴重なものでした。

    本物を見せてもらって、「どうも有りがとう」ってそのまま引き下がる訳にはいきません!
    「ちょっと叩かせちゃらん?」(筑豊弁で当時のままに)
    「え?叩くと?叩き方知らんめ〜も。こげな風に叩くったぃ。」(一応通訳しますと「叩き
    方知らないんじゃないの?こういう風に叩くんだよ」)
    って手本を見せてくれました。
    「兄貴が先生についてドラム習いようキ、その兄貴から教わったったぃ」
    彼は得意そうに基本的な8Beatを叩いてました。
    「じゃ、やらして!」
    そして同じようにワタクシが叩くのを見て聞いて、
    「お前、ナシそげん叩けると?本物のドラム見るのは初めてチ言いよったろも!」
    その友達はそう言いながら呆気にとられていました。
     ワタクシは初めて触る、叩くdrumsの感触・感覚に感動を覚え、またいつかきっと叩ける
    日が来ることを願いながら、なかなかそのセットのそばから離れられずにいました。

     私にとって「8時だよ、全員集合!」はこんなエピソードのキッカケをつくってくれた貴
    重な番組でした。

Irie Profile