第20回 MIDI POWERって・・・

     そのコンセプトは、「コナミのゲーム音楽(X68000・アーケード版)を(当
    時DTMファンの間に最も多く使用されていた)音源モジュールSC-55(ローラン
    ド社製)を使って原曲に忠実に再現、また更にゴージャスにする」というもので
    す。

     その頃のワタクシたちの仕事は通信カラオケのデータ制作でSC-55を中心に
    作っていましたので、MIDIデータ制作の技術と使用音源に慣れているという2
    点で、依頼があったのだと思います。

     そしてワタクシどもが担当することになったMIDI POWER Ver.2で指定された
    ゲームタイトルは「グラディウス」「沙羅曼蛇」「A-JAX」という、コナミ硬派
    シューティングゲームの代表的3作品で、制作曲数は全36曲でした。

     データ制作に取り掛かり5〜6曲出来た段階でプレゼン提出をし始めました。
    ところが、コナミサウンド室からのそれら曲に対する評価コメントは、
    「何小節目の何拍目の音が違ってる(これは指摘されて当たり前ですネ)、この
    曲は細かい作り込みが足りない(ムムム・・・)、リバーブかけ過ぎです、リバ
    ーブかけると元の作り込みの甘さがごまかされてしまうから、次回からはノンリ
    バーブで提出しなさい(トホホホ・・・)。」
     その他ヒッジョ〜に厳しく細かくチェックされ、何度も同じ曲に手を加えて提
    出しました。
     当時のワタクシは、前にも書きましたがMIDIに関しては殆ど判りませんでし
    たから、制作陣に「おんぶに抱っこ」状態でした。
 
    この頃福武さんにワタクシが電話をかける度に言われた事は、
    「入江さん、けっこう苦労されてますね。締め切り間に合いますか?発売を1カ
    月延ばしましょうか?」
    「入江さん、やっぱ締め切りを延ばした方がいいんとチャいますか?」
    「発売、延ばしました。」

     結局完納出来たのは当初の納品予定より2〜3カ月遅れ、福武さんに大変な迷
    惑を掛けてしまいました。しかし、厳しいコナミ・クォリティーの勘所がわか
    り、なおかつワタクシどものMIDIに関する技術やノウハウが貯まっていったの
    も、このやり取りがあったお陰だととても感謝しています。(ホントですよ!)

     そしてその後のこのシリーズが、MIDI POWERからMIDI POWER Pro.に音源と
    共に(SC-55からSC-88Proへ)進化し、制作コンセプトも「MIDIで原音のシミュ
    レート」から、
    「アレンジャーがアレンジした曲を超一流のスタジオミュージシャンが演奏した
    らきっとこうなる!というアレンジの妙をSC-88Pro1台で表現する。」
    という非常に自由度の高いものになりました。更には
    「1枚のオーディオCDとして完成させる。」
    というコンセプトも盛り込まれたことで、サウンドプロデュースやライナーノー
    ツまで任せていただけるようになりました。そしてこういった流れを作って下
    さったのも福武さんでした。

     今ではMIDIにおけるコナミ・クォリティーの一翼を担わせていただいている
    ような気がするのも、このシリーズのヤリガイの大きさと、かなりズッシ〜ンと
    来るプレッシャー(制作陣は「次は何をやってDTMファンやリスナーを驚かそ
    うか?」といつも悩んでマス)に繋がっています。


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