学術情報処理研究 No.1 1997 pp.111-114

センター紹介 図書館情報大学総合情報処理センター


図書館情報大学総合情報処理センター 松本 紳

〒305-0821 つくば市春日1-2 TEL・FAX 0298-59-1308
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 本センターのことを述べる前に、すこし図書館情報大学のことを説明しておきたい。本学は図書館学と情報学の融合という理念のもとに、新構想大学として1979年10月に設立された。国立大学としては唯一の図書館情報学を探究する、修士課程の大学院も含め全学生数約800名、教員約80名、事務職員約70名の小規模な大学である。小規模といっても教官の研究領域は多岐にわたっており、カリキュラムもバラエティに富んでいる。また、従来の図書館学に加えて、積極的にコンピュータを取り入れた教育にも取り組んでおり、そういう意味でセンターの役割は大きい。
 そのことは教育面にも反映されており、図書館学を学ぶ学生も含めて入学と同時に全員が計算機のIDを持ち、プログラミング言語や計算機システムの授業を受けなければならない(準必修)。本学では誰でもがコンピュータを使えるようにといった教育が行われている。
 本センターの前身はは1981年4月に設立された図書館情報システム開発センターと1982年4月に設立されたメディア機器センターである。これらは附属図書館に属する特殊施設であった。当時は教官組織はなく、事務は図書館情報課によって行われていた。システムとしてはHITAC M180改という汎用計算機が導入され情報処理実習室に50台の専用端末が設置された。同時に各教官研究室にも専用端末が1台づつ設置され、研究室でデータベース検索や情報処理科目の準備作業などができるようになっていた。全教官にもセンターの端末を配置できるというのは本学が比較的小規模な大学であるためであるが、それがために教官とセンターの関係は他大学のセンターよりもより密接になっていると思われる。これは専用端末からワークステーションへと代わった今でも受け継がれている。
 さて本学ではシステム開発センター発足当初から、図書館業務の電算化というプロジェクトを開始し、1982年10月にはLIAISONと呼ばれる図書館業務機械化システムのうちの貸出、返却のためのサブシステムを開発した。その後、さまざまなサブシステムを構築し1985年7月に全システムが完成した。その間、1984年6月には大学間コンピュータネットワーク(N-1ネット)に加入し、1985年3月にはVAX-11/750によるUNIXマシンも導入された。また1988年3月にはCSMA/CD(通称Ether-net)による学内-LANを開始し、1990年3月にはJAIN(LAN間接続実験ネットワーク)に加入した。
 1991年4月に従来の図書館情報システム開発センターとメディア機器センターを統合して新たに総合情報処理センターが発足した。新センター発足にともない、センター長(併任)および専任教官(1名)と図書館情報課に所属する事務組織(当初5名)ができた。また運営委員会、その下部組織としてシステム専門委員会、学術情報専門委員会が設置され、センター運営方針などが検討されている。総合情報処理センター発足を機に、1992年2月には、よりマルチメディア指向の強いワークステーションからなるマルチメディアネットワークシステムを新たに導入し稼働を開始した。同時にサービスを開始したばかりの学術情報センターのSINETに加入し、当初は筑波大学との間を64kbpsの専用回線でつないだ。現在では1.5Mbpsまで回線速度がアップされている。汎用計算機システムとマルチメディアネットワークシステムはいずれも4年で更新するが、それらの更新時期が2年づつづれているので、常に最新のマシン環境で教育研究に利用されている。そのかわり2年毎に仕様書を策定しなければならないのでその作業は大変である。
 本学では大学の性格上、早くからディジタル図書館に対する関心が高く、マルチメディアネットワークシステムの導入はこのディジタル図書館研究にも多大な貢献をしてきている。
 1994年にはFDDI-LANを構築した。その際、FDDIとともに端末を直結できるCDDIの2系統を導入し、ほぼ同時期に行われていた汎用計算機システムの更新においてもFDDI/CDDIの利用を念頭において計画することができた。また、各教官研究室と講義棟の各教室にUTP-5による情報コンセントを新たに設置した。この汎用計算機システムでは、従来の汎用大型計算機のみでなく、サーバ、端末系にワークステーションを導入し、情報処理の実習をUNIX系のOSの基で行うようにした。特にプログラミング言語の授業も従来のPL/IからC言語へと変更された。一方、各教官研究室にワークステーションあるいはX端末を設置し、情報コンセントを通して学内LANと接続した。そのことにより電子メールのユーザが急激に増えた。
 またセンターでは、ワークステーション系システムを導入したことから新たにセンターからのお知らせやニュースを電子的に広報すためのipcニュースという掲示板システムを提供し、紙媒体による方法と電子メールとによる方法と併用してきている。1995年にはそれまでボランティアで管理されていたWWWの学生用サーバに加えてセンター独自のWWWサーバ機を導入し、fire wall を設けた。このサーバでは、ユーザがホームディレクトリ上にWWWのホームページを作成すると自動的にリンクがはられるようになっており、多くの学生がホームページを公開している。
 さて、1995年にはマルチメディアネットワークシステムの初めての更新作業とATMネットワークの導入、さらに総合情報処理センターの新棟建設とが重なり忙しい一年であった。マルチメディアネットワークシステムの方は、従来のサーバとディスクレスワークステーションという形態からサーバとPCという形態に変更した。というのもマルチメディア関連のアプリケーションはワークステーションよりもPCの方が充実していることやPC自体の性能も飛躍的に向上したためである。新棟の方は、2階建てのこじんまりしたものであるが、狭かった情報処理実習室から1.5倍の広さの実習室に移転できることになった。1996年の夏からこの新棟での教育が始められた。
 現センターのシステム構成は以下のようになっている。大きく分けて7つのシステムあるいは設備をサービスしている。  このうち汎用ワークステーションシステムでは、ファイルサーバ、ネットワークサーバ、計算サーバ、実習室教育用サーバ、X端末サーバなどの各種サーバと実習室1には55台のワークステーションが設置されている。また、各教官研究室、図書館、事務局、共同研究室などにワークステーション、X端末あわせて80台近くが設置されている。
 一方、マルチメディアネットワークシステムでは、ファイルサーバがサーバ室に、5台のワークステーションサーバ、25台のPC、および各種AV機器などが実習室2に設置されている。また、研究開発室と呼ばれるところには、シリコングラフィックスの3D CG用ワークステーション4台とCD-ROM作成用のCD-R、MPEG作成用のReal Magic producer、Macintosh6台をはじめ、各種AV機器、スキャナ、カラープリンタなどが設置されている。このほか、入出力室の前に電子メールを見るためのX端末を数台設置している。これは長時間1人で占有しないようにカウンター上に端末を置き、椅子なしで立って利用するようにしてある。実習室が授業などで利用できない場合でもこの端末は利用できるので好評のようである。
 現在は、1998年2月の汎用計算機システムの更新のための入札段階であるが、次期システムでは汎用大型計算機は撤廃し、すべてがワークステーション系のマシンとなる予定である。とはいっても管理運用上の問題から均質の環境の提供ということを念頭に、RAID5によるディスクアレイ装置と2重系の大型サーバを導入し、端末側はすべてX端末を配置するという計画である。前回は分散処理ということで多くのサーバとクライアントという構成であったが、管理運営を考えると以前の汎用大型計算機システムのように集中管理型の方が良いのではないかという結論になったためである。
 さて現在のセンターの状況について少し述べておこう。センター施設を利用した授業としては、プログラミング言語をはじめ、情報検索やデータベース構築、計算機システムなど、かなり多くの授業が行われているが、授業以外の時間帯でも実習室は自由に利用できるようになっている。実際、授業の課題を行う学生でいつも混んでいるが、最近は、WWWを見たり、自分のホームページを作ったり、あるいは、電子メールを利用したりで、ほとんど常に満席に近い状況となっている。
 実習室は、朝9時から20時まで開室しているが、もっと早くから開けてほしいとかもっと遅くまで開けてほしいという要望も多い。土曜日は大学は休みであるが、センターの実習室は外注を雇用して開いている(9:30 - 16:30)。 昨年、ATMを導入したさいに留学生会館や学生宿舎にもネットワークを引き、X端末を設置したために日曜日でもネットワークによる利用がかなりある。こちらも端末の数を増やしてほしいとの要望が強い。
 本学では、原則として計算機利用に関する課金は行っていない。そのために学生は料金のことを心配せずに何度でもプログラムのデバッグを試みることができるが、逆に無駄な出力をしたり、同じ間違いを何度でも繰り返すといった弊害もないではない。また最近はWWWなどで多量の画像ファイルなどを利用する機会が増えてきたので、個人のファイル容量が少ないといってくる学生も多い。システムの更新のたびにかなり余裕をもってディスクを割り当てていたとしてもなかなかうまくいかないのが現状である。
 一方、教官の方も以前の汎用大型計算機の時代では、センターを利用する人は比較的限られていたが、今では文系、理系を問わず多くの教官がセンターを利用している。WWWをはじめ、電子メール、ワープロ、表計算、文書清書システムなど文房具として利用している人も多い。特に、電子メールは研究上なくてはならないものとなってきており、センターのマシンがとまると苦情が殺到する。そのためネットワークやサーバを停止する保守作業の場合は、かなり慎重に日程調整を行わなければならなくなってきている。
 電子メールが使われだし、センターへの要望や質問などが気軽に電子メールでセンター宛に届くので、以前よりも対応作業が大変になってきている。本学ではマシンの日常の運用管理やトラブル処理なども事務が対応しているが、センターの事務組織は人員削減のため5名から4名となってしまったために、恒久的な人手不足に陥っている。しかも本学の場合は、事務職員は本来、図書館の事務職員であるために計算機にさわったことのない人が、突然、計算機の面倒をみなければならなくなるということもある。もっとも、これからの図書館にはコンピュータの面倒を見れる人材が絶対に必要となるはずであるので、そういう意味では役に立つに違いない。しかし、事務職員の場合だと約3年位で移動があるので、せっかくセンターの仕事を熟知したところで他に移られてしまうので、センター側としては大きな損失である。
 ところでセンターの業務におけるトラブル対処は最もハードな作業となっている。学生からのマシントラブルの報告は後をたたないし、また各教官が購入したPCなどをネットワークにうまく接続できないなどの問い合わせなども意外と多い。その症状の種類によっては、ノウハウの蓄積からどのように対処すべきかがわかるようになってきたが、新システム導入時には、メーカーとの連絡対応も頻繁に行わなければならない。
 最近では、学生自身が個人でPCを持ちフロッピーディスクを介してセンターマシンとデータのやり取りをするケースも増えているが、そのために新種のウイルスへの感染にも注意が必要となってきている。実際、一昨年にセンターのPCがウイルスに感染するという事態が発生したが、発見が早かったために大事にいたらなかったということもあった。
 多分、他のセンターでも同じだと思われるが本学では2ヵ月に1度の割で、ユーザとメーカの連絡会議を開いている。ここでは、ユーザから直接メーカに要求を出したり、メーカ側の対応などの説明がなされている。このほかセンターの仕事として、センターからのお知らせ、センターニュースなどの広報作業がある。現在は、電子メール、WWWへの掲載、紙媒体による配布、掲示板への掲示など、ひとつのお知らせでも4つの方法を併用せざるえなくなっている。いずれは1つにしぼりたいところであるが、現段階では難しい。さらにメールの管理、WWWの管理、ネットワークの管理などがあるが、これらはシステム専門委員会の教官に分担して管理してもらっている。
 ところでワークステーション系システムでは便利なフリーソフトウェアが広く出回っており、逆に言うとこれらもインストールしなければ良い環境を提供できないといったことも事実である。その場合に問題になるのは、そのようなソフトウェアは当然ながらメーカーのサポートを受けられないということになるが、ユーザ側にそれが広く知られていないことである。本学では、contrib. グループ というものを設けて、そのグループのメンバー(教職員と大学院生で構成されている)はセンターシステム内にフリーソフトウェアなどをインストールできるようにしているが、そのかわりそれらのアプリケーションのメンテナンスも行わなければならない。
 また、フリーソフト以外にもワークステーション系にインストールされているアプリケーションはさまざまなメーカー製のものなので、たとえば、OSのバージョンアップを行うと動かなくなるものもでてしまうなどの問題から事実上OSのバージョンアップができないといった問題も生じている。
 本学のセンターの状況と他大学のそれとは必ずしも同じではないと思われるが、少しでも何らかのご参考になれば幸いである。



総合情報処理センター棟外観


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