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いのえもんのはじめての風俗(1)

いのえもん  世の中には、風俗情報が溢れている。新聞、雑誌、テレビ、チラシ、電柱、ウェブ、ポン引き‥‥。これほど多くの情報があるにもかかわらず、私は風俗店に足を運んだことがない。

 営業マン時代、「風俗へ行かなければ男ではない」という言葉もよく聞いた。商社や各種代理店など、比較的若い感じのする営業会社が多かったように思う。そんななかで、これ以上ないぐらい地味な製品を作っていたメーカーの担当者と、一度きり、風俗の話をしたことがあった。

 彼は、日本でもっともラブホテルの数が少ないと言われている長野県出身、しかも両親が揃って教員という家庭に育った。長じては、関西のミッション系の大学へ進み、真面目に経済学を勉強した後、真面目に勤め、かなり真面目に恋愛して結婚した。実のところ、結婚するまでに、女性経験は学生時代に交際した女性1人だけだったのである。そんな彼が、関西の一大ソープ街である雄琴に連れて行かれたのは、どうしても顔を出さなければならなかった接待の日のことだ。彼は相当嫌がったようなのだが、立場上、また行きがかり上、先に帰ることができず、とうとうある有名な高級ソープ店の待合室へと雪崩れ込んでしまった。

 指名もせず、適当にあてがわれた女性と個室へ向かう間も、なんとか今から帰れないと逡巡したという。

大満足 しかし、彼は高級ソープ店でのプレイに大マン足してしまったのである。「あれは‥‥、そうですね、文字通り天国に昇天するような気持ちと言えばいいのかな」徹頭徹尾、堅物としての人生を歩んできた彼をして、恥ずかし気もなく代表的な夕刊紙ワードである「昇天」などと口走らせてしまう高級ソープでは、いったい、どのようなプレイが‥‥?

 そう、私とて、興味がなかったわけではない。 ところで、プレイといえば、我が京都が生んだ碩学、三浦じゅん氏は言う。宿題でも仕事でも、嫌なことをやらなければならないときは、プレイだと思えば気楽にこなすことができる。

 宿題プレイ、原稿執筆プレイ、飛び込み営業プレイ。つまりは、プレイをしている自分は本来の自分ではなく、あくまで仮の自分を演じているのであると納得することで、メンタルな障壁を取り去ろうとするのである。

 自分探しなどと、チョコレートの上に砂糖をまぶし、さらに蜂蜜をぶっかけるような大甘かつ大ヌルなことを、何の躊躇もなく言い放つひきこもり野郎とは比べ物にならないぐらい、爽やかである。誠に至言である。

 さすが、日本唯一の中華思想の都、京都の民。常に始まりを我と我がこととし、我と我 がことを世界の中心に置くことで、心の平安を得る。ホンマにそうどすなあ。へえ、おおきに。

 つまるところ、我と我がことのみに徹することができる場所、それが風俗だという悟りなのだろうか。

(と無理やり余韻をもたせて次号へ)


第二回目(4/5発行)につづく

文:井上トシユキ(電波2ちゃんねる編集長)


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第一回「ある営業マンの体験談」(3/29)
第二回「しるだし…」(4/5)
第三回「桜花賞と遺伝子と」(4/12)
第四回「スポーツ新聞で」(4/19)
 
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