J.C.O.敷地内の放射能濃度
社民党調査団に同行してJCO東海事業所を調査した京大原子炉実験所小林圭二氏らが
転換試験棟脇から採取した試料を、同氏と同実験所小出裕章氏が分析した。
次にその一覧(暫定値・一部)を掲げる。

放射性物質濃度暫定値(Bq/Kg)半減期
ナトリウム2417万4695.815時間
スカンジウム46127.483.9日
クロム5111.527.7日
マンガン541.8313日
鉄5970.744.6日
コバルト607.75.2年
亜鉛65不検出244日
砒素76384.51.1日
臭素82605.11.47日
ルテニウム1033.539.5日
ヨウ素13156.48日
テルル1326.03.25日
ヨウ素1331198.120.8時間日
セシウム134不検出752.4日

◆上の表の測定値は1999年10月1日午前4時半の値に補正したもの。
詳細な表はこのページの下の方にあります。

R-DANニュース」No.92による

◆これで同事業所転換試験棟周辺の土壌が中性子線を受けて放射性物質に変わっていることが裏づけられた。
採取は1999年10月7日。試料を採取した地点は転換試験棟脇の5箇所。
中性子を受けて放射化したのは、ナトリウム24(Na-24)など9種類。
なかでもナトリウム24(Na-24)はKgあたり174695.8Bq(ベクレル)と、自然界のカリウム40(K-40)に比べても約1000倍の値。
◆自然界にあるナトリウムなど普通の物質が、事故で「臨界」に達して核分裂するウランから飛び出し沈殿槽や転換試験棟建屋の壁をも透過して来た中性子を受けてこれを原子核に取り込み、大量の放射性の物質に変わったことを意味する。
◆この現象は、事故現場直近に限らない。現場から3Kmも離れた地点でナトリウム24が検出されている。
となれば、中性子を浴びた付近の民家の台所にある食塩などのナトリウム原子も放射化しているはずだ。
つまり、これを摂取した人が体内被曝している可能性を意味する。
また、半減期が5年と長いコバルト60(Co-60)なども生成している。
近隣住民が、飛散したこれらを含む土埃を呼吸によって体内に取り込まないと言う保証はない。
「安全宣言」など出せる状況ではない。
やはりまだ事故は終わっていないのだ。

◆転換試験棟や周囲の建造物のコンクリート、鉄筋なども放射化していると考えられる。

◆また、これとは別にタンク内のウランの核分裂によって生じたヨウ素131(I-131)なども検出された。
これはタンク内で生じた核分裂物質が転換試験棟の建物の外部に漏れた動かぬ証拠といえる。


◆小林氏のコメント
「施設を密閉し、ただちに立ち入らない措置をすることが必要で、早急に手当しないと、
放射性物質が風で周辺に飛散する恐れがある。除染などではなく、施設全体を密閉できる
建屋で覆うなどして、原子炉と同じように解体すべき」

◆次の表は上記放射能濃度の詳細。同じく1999年10月1日午前4時半の値に補正したもの。
第1段の11〜15の数字は試料を採取した転換試験棟脇の5箇所の地点を意味する。
採取点  11  12  13  14  15 
核種名半減期(日)放射能(Bq/Kg)放射能(Bq/Kg)放射能(Bq/Kg)放射能(Bq/Kg)放射能(Bq/Kg)
Na-240.625174695.86.452099.712.916759.627.0  5053.166.9
Sc-4683.9127.42.628.36.3      
Cr-5127.711.586.0        
Mn-543131.861.50.979.8      
Fe-5944.670.76.529.89.44.143.3    
Co-601924.8687.723.1      1.269.7
Zn-65244  7.545.81.974.2  1.769.7
As-761.1384.555.7  171.567.2232.655.3  
Br-821.47605.17.9132.122.1      
Ru-10339.53.538.5      1.452.5
I-1318.0456.411.162.87.990.15.524.410.514.017.4
Te-1323.256.071.6    5.349.0  
I-1330.8708331198.133.81323.525.21770.120.0556.355.1543.051.6
Cs-134752.415  21.28.8      
La-14012.843.19.462.05.7      
Sm-1531.95764.95.8202.715.6      
Lu-1776.7145.930.040.837.2      
Au-1993.1518.765.3        
Cs-13711021.052.083.93.835.41.463.0  3.032.9
Be-753.314.568.514.365.3      
K-404.68E+11211.010.7228.09.9305.09.0382.08.1259.012.1
Bi-2141.63E+122.986.46.741.35.843.88.732.913.323.2
Ac-2285.15E+1215.325.523.622.312.625.425.619.225.222.2
I-133/I-131 21.2 24.3 19.6 22.8 38.9 

社会民主党調査団(1999.10.7.)資料による


J.C.O.事故による放射性ヨウ素の汚染状況
◆J.C.O.東海事業所周辺の各所で採集した試料の分析結果を掲げる。(1999年9月30日18時を推定*)
サンプルサンプル地点事故現場からの方向 事故現場からの距離 放射性ヨウ素濃度
  I-133    I-131
I-133/I-131(比)
よもぎ1東南東88m 860Bq/Kg  32Bq/Kg 27
よもぎ2南 東84m 1500Bq/Kg  52Bq/Kg 29
よもぎ3東南東100m 1800Bq/Kg  76Bq/Kg 24
よもぎ4 南 170m 310Bq/Kg  12Bq/Kg 26
よもぎ5 南 1400m 不明***  不明*** 不明***
よもぎ6 南 750m (38Bq/Kg)  (1,7Bq/Kg) (22)
松 葉6 南 750m 57Bq/Kg  2,2Bq/Kg 26
松 葉7南南西2000m 不明***  不明*** 不明***
落ち葉4 南 170m 220Bq/Kg  8,9Bq/Kg  
 泥 1東南東88m 252Bq/Kg  12,3Bq/Kg 20
 泥 2東 南84m 338Bq/Kg  11,3Bq/Kg 31
 泥 4 南 170m 330Bq/Kg  11,4Bq/Kg 29
 泥 5 南 1400m 不明***  不明*** 不明***
 泥 6 南 750m 不明***  不明*** 不明***
 泥 7南南西2000m 不明***  不明*** 不明***
落葉+泥**4 南 170m 868Bq/Kg  33Bq/Kg 不明***
  

測定者:小出裕章
*:事故途中の1999年9月30日18時に全放射性物質が放出されたと推定。
**:落葉(4)と泥(4)の合計。
***:測定時間が短いためもあり、検出されず不明のもの。
(  ):誤差が大きいもの。

R-DANニュース」No.92による

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