「ベルばら2001」が30日、ついに新しいロマンの城・東京宝塚劇場でベールを脱ぐ!星組版“アンドレとオスカル編”はトップスターコンビ・稔幸と星奈優里のダブル退団、東京サヨナラ公演でもある。はばたけ!宝塚・星組編第1回は去り行くトップスター稔幸――。(花井 伸夫) |
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咲き誇ったままサヨナラを
「宝塚だからこそ、一番華やかな時にサヨナラ…。長く居て、養分を培っていくことも大切ですけど、余力を持ったまま咲いて、咲きまくって辞めるのもいいと思ったんです」と、ノルさん・稔幸は言った。
今がその時!と思ったのは前作、宝塚大劇場での「花の業平」(今年1月2日初日。作・演出柴田侑宏、演出・振付尾上菊之丞)の稽古段階らしい。
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髪型一つにもファンが注目する稔幸のオスカル
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平安朝の公家で歌人、在原業平(ありわらの・なりひら)に扮して稔が演じ歌い上げた王朝ロマンは、美しくはかない夢に満ちて素晴らしい舞台成果を示していた。稔自身も充実を感じていたという。
「柴田先生の作品で、次が“ベルばら”…、それに新しい東京宝塚劇場のオープン、今が辞める最高のタイミング」と、稔は言った。意志的な整った顔。歌・踊り・演技の3拍子そろった実力。瞳の輝きが“悔いなきタカラジェンヌ生活”を物語っている。
第2次“ベルばら”ブーム(89年から)の時、下級生だった稔は星組東京公演“フェルゼンとマリー・アントワネット編”で、近衛兵と出世コースと言われる“ばらの少年”を、そして新人公演でベルナールを演じた。
「あの時代に、人間としてこんなに熱く生きた人たちがいるんだ!っていう印象が強く残ってます。だから今回、歳月を経てオスカルをやれて良かったと思うんです」
激動のフランス革命を背景に繰り広げられる華麗なるロココの洋式美。小細工の効かない美しく気品あるセリフ。稔・オスカルは、王家を守る将軍家の娘として生まれながら、男として育てられた青年士官役。
今、稔は男女の概念を超えた、えも言われぬ夢物語の頂点に立つ。それは、女が男を演じる宝塚の愛と美の世界の原点でもあるだろう――。 |
ダブル退団・星奈優里は「同志」
稔幸は85年の「愛あれば命は永遠に」で初舞台。99年に「WEST SIDE STORY」で星組トップとなり、月組・真琴つばさ、雪組・轟悠、花組・愛華みれという宝塚歌劇史上初の同期4人の同時期トップが実現した。
正統的男役の雰囲気と実力に、モダン感覚をも備えた舞台の和物の頂点は、今年1月の宝塚大劇場「花の業平」。東京公演がないのが惜しまれるが、代わって今回、アンドレを湖月わたる、樹里咲穂と役替わりで演じる次期トップの香寿たつきが、11月9日からの東京宝塚劇場でのお披露目公演で在原業平役に挑む。
相手役の星奈優里も同時退団する。「“一緒に辞めよう”って言いたかったけれど、彼女には彼女の人生があるんだし…」と、ついに言えなかった。その星奈が「私も辞めます」と言ってきた時“同志!”という言葉が浮かんだという。
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