松井秀、ペドロから技あり遅刻帳消しＶ弾…Ｗシリーズ

　◆ワールドシリーズ第２戦＝７回戦制＝　ヤンキース３―１フィリーズ（２９日・ニューヨーク）　ヤンキースの松井秀喜外野手（３５）がワールドシリーズ第２戦で、芸術的な決勝アーチを放った。練習に遅刻してナインからカツを入れられたゴジラは発奮。同点の６回、苦手のＰ・マルチネス投手（３８）から、内角低めのボール球のカーブを右翼席に叩き込んだ。バーネット―リベラの継投で逃げ切ってフィリーズを破り、対戦成績を１勝１敗のタイとした。第３戦は休養日を挟んで、日本時間１１月１日にフ軍の本拠地フィラデルフィアで行われる。

　チーム、そして自分自身の窮地を救った。同点の６回２死。昨年まで打率１割４分３厘（１本塁打）と苦手にしていたマルチネスのひざもとに入ってくる難しいカーブに重心を残し、うまく対応した。「今日勝つのと負けるのは大きな違い。自分が打ったということも良かったけど、勝てたことが一番」。技ありの一打は右翼へきれいな放物線を描いた。連敗が許されない一戦で決勝ソロを叩き込んだ。

　試合前のウオームアップに松井の姿はなかった。球場に向かう際、高速道路の出口が閉鎖されたことによる交通規制に巻き込まれ、約３０分の大遅刻。巨人時代から遅刻を繰り返し、メジャー入り後も、０４年のオールスターの集合時間に遅れたこともあったが、さすがにワールドシリーズとなると笑って済まされない。

　到着した時は打撃練習が始まっていた。準備運動もせず、バッティングに何ごともなかったように加わったが、これには理解者である主将のジーターやポサダらから「冷たい視線のカツ」を入れられた。世界一を目指して一丸となって戦っている中の大失態。信頼を取り戻すためにも絶対に打たなくてはならなかった。

　追い込まれた危機的状況で集中力が高まったのか。松井は値千金の一発を放ち、何とかミスを帳消しにした。ジーターは「遅刻してホームランを打てるんだったら、俺も毎日遅刻してくるよ」と松井に“クギ”を刺した。その一方で「今日みたいにみんなが苦しんでいる投手の球を打てる、チャンスに強い選手。俺のお気に入りの仲間の一人だよ」と試合後、フォローも忘れなかった。

　これまで「遅刻は吉兆」とし、その試合で活躍して汚名をそそいできた松井が“新伝説”を作った。が「（アップに）いなかった？　覚えてないです」「遅刻したつもりはないです。渋滞には巻き込まれたけど」と最後までとぼけたまま。練習中のこわばった表情は試合後にはすっかり消えていた。

　ほかの日本人選手が１本も打っていないワールドシリーズ本塁打は２本目。０３年に次いで２本ともＶ打となるアーチに導かれ、対戦成績を１勝１敗とした。敵地での第３戦はＤＨ制がない。「（練習日を）１日使ってよく考える」とジラルディ監督も先発出場を明言しなかったが、勝負強い松井のバットにかかる期待は大きい。悲願の世界一へ、まずは大きな１勝を手にした。