since 14/DEC/96
 
小心者の杖日記@o u t d e x、書いてるのはムネカタです。
 
テキスト BY ムネカタ
ロゴ&ページデザイン BY ゴー
 
430日 (fri)

 遂にというか、やっとというか、この日記もカウンタが10万を越えました。書いてる僕が酔狂なら、読んでる皆さんも酔狂。僕の遊びに付き合ってくれる余裕のある人が、世間にはこんなにいるという事実がとても嬉しいです。地下水道がもうすぐ40万なんですが、はっきり言って、この喜びとは比べものにはなりません。「固有名詞が多くて分からない」と言われ続けているのにも構わず、適度の無愛想さで運営していますが、メールの返事は確実ですのでご安心を。いつまで続くのか自分でも見当がつきませんが、最大の敵が「社会人としての自覚を持った健全な生活」であることは確かです。

 さてさて、10万アクセスを記念して、りなさんからお祝いCGを頂きました! ―お祝いCG。それはオタク系のページとして周囲から認知されてることの証明であり、それを交換し合うことは、自分たちがネット上において形成するコミュニティーへの帰属意識の確認作業でもあります。なーんて小理屈を言っても、本当はこういうことを一度やってみたかっただけですし、もうCGが用意されてる時点で、「くれくれ」と事前に言ってたことがバレバレですけどね。

 今後もこんな感じの適度なデタラメさ加減でお送りしますので、よろしくお願いします。

 
429日 (thu)

Clingon「cliff and wagon 」
 大阪出身の4人組バンド。70年代の音楽の匂いがプンプンしていて、その吸収と表出のバランスが絶妙です。ボーカルの歌い回しと、ジャジーなキーボードが耳に引っ掛かります。身体にしっくりくる古着のような音楽で、とても僕と同い年くらいの人たちとは思えないほど。でも、その安定感が良くも悪くも前に出すぎてる印象も。

Femi Kuti「shoki shoki」
 Fela Kutiの息子もナイジェリアから世界へ。親父ほど闇雲なパワーと粘りが無い代わりに、適度な軽さと抑えた熱さで攻めてきます。あんまりにもソウルっぽい「what will tomorrow bring」は苦手だけど、「beng beng beng」などで複雑なリズムがすごく丁寧なプログラミングで処理されているのには耳を奪われました。

「The Music of Japan : THE ROUGH GUIDE」
 Paul Fisherの編集による、日本の伝統を継承する音楽のオムニバス盤。この手の音楽は聴いてる方だと思っていたけど、収録された19曲のうち半分近くは知らないアーティストです。国本武春→河内屋菊水丸→ソウルフラワーモノノケサミットという頭の3連発から強烈だし、伊藤多喜雄・平安隆・琵琶の後藤幸浩・大工哲弘・ネーネーズの吉田康子・大熊亘のシカラムータといったチョイスは、相当のマニアの所業で驚かされました。お見事。演歌はないけれど、尺八や津軽三味線を収録しているほか、バナナの叩き売りも。木製楽器・トンコリを使った、アイヌのオキの音楽はとても美しいです。あとは喜納昌吉が入っていれば…と思ったけど、久保田麻琴と夕焼け楽団の「ハイサイおじさん」もあるし、元チャンプルーズの長間孝雄率いるアヤメ・バンドも入っているなど、ちゃんと配慮されているのが心憎い。Paul Fisherは沖縄在住らしく、安場淳&アンチャン・プロジェクトや、ザ・サーフ・チャンプラーズなど、まだまだ無名である沖縄のバンドも収録しています。琴の楽曲にしても、わざわざ琴4人組のコト・ヴォルテックスを選んでる辺りに愛情と熱意がうかがえて感動ものでした。


 
428日 (wed)

 ゴールデンウィークも終わって人々が通常生活モードに戻る頃、それに逆行するかのようなイベントが開催されます! なにしろ僕がDJという肩書きなのですから、安請け合いを後悔するハメにならないことを祈るばかりです。そもそもDJのやり方なんて知らないし、レコードを押入れから出すのが面倒なんで、たぶんCDばっかり流します。良かった、CDJという単語があって。そんな僕に電話の向こうから一言、「何着てやるの?」。嗚呼、悩みが次から次へと…。

日時:5月8日(土曜日) 20:00〜
場所:下北沢RED G MONSTER
DJ:由一さんユウタさんOGAIさん・DJ 陰毛羅流さん・そしてムネカタ

 他のDJの皆さんはあまり強調していませんが、イベント名は「スティービーワンダーとんち合戦」なのです。ええ、24日に飲んだ時に決めたタイトルですからね。会場はクラブというかバーだそうなんで、数十人入ったら肉詰め状態と予想されますが、入場料1000円ですし、皆さんも軽はずみにご来場下さい。翌朝5時まで続くロングラン公演、自我が保てるか不安です。

 しかも、6月には中西さん主催のイベントでもDJをやらせてもらいます。もう次の予定が入ってるわけで、見切り発車もいいところ。僕の人生そのものです。

 
427日 (tue)

 読み終わりました、高見広春の「バトル・ロワイアル」。自分がこんな速さで650ページ強の本を読んだのは驚きですが、本を閉じてからあまりに余韻がなかったことにも驚きました。

 舞台は「大東亜共和国」、文化と経済はまんま日本です。しかし、そこでは異常なまでの恐怖政治が行われていて、毎年全国の中学3年生のクラスから無作為に選ばれ行われるのが「プログラム」。1クラスを隔離して、最後の1人になるまで生徒同士を殺し合わせるという、設定での理由付けに苦労しそうな行事です。海には監視艇、外せない首輪、居場所をじりじりと狭めていくシステム、しかも24時間誰も死なないと皆殺し。そんな状況下において、ある生徒は葛藤の末に、ある生徒は躊躇無く仲間を殺し、殺し合うのをやめようと呼びかけた生徒はあっさり肉塊に。澄み切った良心ほど悲惨な結末を迎えていきます。

 この作品は管理教育批判とか、北朝鮮への皮肉とかいろいろ取れるそうな部分もありますが、たぶんどれも錯覚でしょう。そんなことより作者が細かく描写しているのは、銃弾で頭が半分吹っ飛んで脳漿が飛び散るような死に様です。他にも薬殺絞殺爆殺のオンパレード、物語のそこら中で血の池ができています。そして極限状態で生き残る道を模索する生徒たちの葛藤。ほとんど死にますけどね。

 恋愛関係の回想とかになると、スニーカー文庫あるいはコバルト文庫あるいはX文庫のような雰囲気になるのは困りました。ラストのまとまりの良さに、安堵しながらも物足りなさを感じてしまうのは、全体を読み通した後では仕方ないことかもしれません。あと、「プログラム」の実施理由は、やはり弱い気がしました。

 中学生にしては大人びているキャラが多いのですが、それでも心安らぐ場面の次に肉片が舞う展開は、だらける隙を与えません。読み手の頭の中に熱を発生させます。ストーリーの基本は、各生徒のバッググラウンドを語り、死を目の前にしたそれぞれの姿を描いて、そして死体は野晒しになるというもの。それが生徒によって様々に形を変えつつ反復されます。この作品は、モラルが強い人間ほど激しく反応するのかもしれません。拒絶であれ、その逆であれ。

 
426日 (mon)

 今日ずっと手にしていたのは、レンガか角材のような厚さの1冊の本。たいして期待もせずに読み始めた高見広春の「バトル・ロワイアル」を、一気に500ページ以上も読んでしまいました。京極夏彦の本ですら厚すぎると嘆いていた、この僕がです。中学生の凄惨な殺し合いは、これまで僕が読んだ本の中でも最悪の読後感ならぬ読中感。夢中で読んでしまうのは読み手のゲス心を突いてくるからだけではない気がするものの、それを考えるほどまだ冷静にもなれません。どこまで読んだかを友達と話す時は、「生き残りはあと○人」と言えばいいのも便利ですね。そんな相手はいないんですが。

 o u t d e x更新。「MUSIC」にカーネーションのライヴリポート、「BOOK」に赤坂真理「ヴァイブレーター」と森川昇撮影「広末涼子写真集 relax」、「OTHERS」に文章1本を追加しました。相互リンクは、UzusioShe songs "koon"Hang off!フルネルソンです。

 
425日 (sun)

 「COMIC CUE」Volume SIXの特集は「手塚治虫リミックス!」。そのテーマと関係ない作品が混ざってるのは別に構わないんですが、以前と比べ、どうもガツンとかましてくる作品が減ったのは気になります。創刊編集長だった江口寿史が、編集長を降りた上に今回は作家としても参加せず、完全にいなくなってしまったのも淋しいですなぁ。

 その今号の重要作は2つ。黒田硫黄の「メトロポリス」は、またしても分けのわからないほどのデカい展開を見せ付けます。どこか乾いているキャラも魅力的で、物語中でガンガン人を死なせる残酷さもそれと無関係じゃないですよね。全然違う絵柄なのに手塚キャラを混在させてしまうのも力技です。この作品には、針が振り切れ過ぎて少年マンガに戻れなくなった少年マンガともいうべきダイナミックさを感じました。

 予言をするため作られ、未来に対して願うという行為を知らないロボットの悲しみを描くのは、地下沢中也の「予言者ピッピ」。本編最初の3ページが本当に巧いです。以上2作品は、元の手塚作品を読みたいと思わせるほどインパクトがありました。(27日追記:『予言者ピッピ』はフリーテーマの作品で、元になった手塚作品はないらしいです。ご指摘頂いたしばたさんniwaさんに感謝。)

 手塚治虫が生きていたらマックを使ってたのかなーと思わせられるのが、筆致がそっくりの田中圭一。しりあがり寿の「火の鳥 in 弥次喜多」では弥次喜多と火の鳥が競演、両作のテーマが重なっていることを示してます。おおひなたごうの「七色いんこ」はオチが見えるけど、そのベタさがいい味。島本和彦の「マグマ大使」はマニアックにして血管が切れそうな熱さ、あるいは暑苦しさ。細野晴臣×手塚るみ子の対談もあります。

 水野純子「ドリームタワー」は、「PURE TRANCE」の続編。相変わらず有機物と無機物の境が無いような絵ですが、以前よりキャラの内面に突っ込んでます。さっそく一人頭が狂ってるし。

 
424日 (sat)

 大雨が降る新宿の路上で待ち合わせて、ウガニクさんOGAIさんトモミチさんユウタくん由一さんというメンツと飲み会。ゴーは最近始めた仕事のために急遽欠席でした。

 それにしても、「天狗」は土曜だってのに客を入れ替えなくていいんでしょうか。夕方5時半から11時過ぎまで、我々は同じ席で延々と飲み続けちゃいましたよ。明らかにそこだけ温度というか湿度というか濃度が上がってました。トモミチさんとOGAIさんの絶妙の掛け合いとか、由一さんとウガニクさんの「芝姫つばさ物真似合戦」とか、ユウタくんによるギャルゲー論の演説とかいろいろありましたが、とにかく皆ガツガツ食い過ぎ。レシートがめちゃくちゃ長かったです。

 
423日 (fri)

 「東京国際ブックフェア'99」のため、不必要なまでに構造を熟知してしまった東京ビッグサイトへ。東の2・3しか使ってないと、「出展に抽選落ちはないのかな?」とコミケと同じ感覚で心配してしまいます。

 新日本カレンダー株式会社のブースで広末のポストカードセットを買ったり、MP3ハンターである日本音楽著作権協会の前をブルブルと震えながら通ったり、日本出版貿易で品揃えが去年と同じアナログ盤を漁ったり。僕のやってることは普段とあまり変わりませんでした。蛍光色に身を包んだ人物が視界に入って何かと驚いたら、志茂田景樹事務所にいた志茂田景樹本人。ずっと一人で店番してたのかなぁ。

 基本的には出版社の商品・事業紹介が中心なんで、派手にやってる大手のブースでもそれほど見るところが無いのも事実です。不況のわりには派手な展示もあるし、人は多いし、1周するのに1時間半かかりましたが。無名の会社だと、商品を安売りするかデモのCD-ROMでも配布しないと、足を止めてももらえません。シビア。

 僕は毎回「週刊読書人」のバックナンバーをもらってくるんですが、これはけっこう面白いです。

 
422日 (thu)

 コロラドの銃声の影響で、Marilyn MansonのCDはどのぐらい売れるんでしょうか。ま、被害者への補償云々という謳い文句を免罪符にできる「少年A」の両親の本よりは、素直に興味本意が丸出しになる分マシですが。

 今年亡くなったFABRIZIO DE ANDREのアルバム2種を購入。「DE ANDRE」名義なのはなぜなんでしょ。ホームページ見てもイタリア語だからどんな中身か全然分からなかった「MI INNAMORAVO DI TUTTO」は、ずいぶんとエレキギターの音が古めかしいと思ったら、70年代から90年代までの編集盤でした。地中海音楽路線の前には、けっこう普通のカンツオーネっぽい曲もあったんですね。「in concert」は97・98年のライヴ音源で、どう考えても大傑作である「地中海への道程」の1曲目で始まる時点で興奮してしまいます。個人的にはCaetano Velosoのライヴ盤と並ぶか、それ以上に好きです。

 THE WILD MAGNOLIASの「LIFE IS CARNIVAL」はグツグツ煮えたぎるニューオリンズ汁が素晴らしく、THE OLIVIA TREMOR CONTROLの「black foliage volume 1」は僕のツボを突くポップス黄金律+実験性が気持ちいいです。でも後者はジャケットの趣味が悪い。PIZZICATO FIVEの「darlin' of discotheque e.p.」は、銀メラ変形ジャケットで5曲約30分収録。最近のピチカートには感情移入ができそうな歌が増えてる気がしたけど、ここでは情感は抑え目にしてディスコディスコディスコです。

 突然聴きたくなって「ハウス名作劇場」3枚組と「うる星やつら」のCDをレンタル屋から借りてるんですが、聴く暇がありません。「あらいぐまラスカル」の擬似カントリー「ロックリバーへ」だけをリピート。

 
421日 (wed)

 「軍鶏食おうぜ!」という呼びかけに乗り、しばたさんサイトウさんと池袋で評論系ページ呑み会。このメンツで飲むのは初めてです。軍鶏を「しゃも」と読めずに「ぐんけい」と連呼するほど僕も期待していたのですが、目当ての店が満員で他の焼き鳥屋へ入りました。

 そしてあっという間に4時間経過。よくリンク集のマンガの項で一緒に並べられてる3サイトのわりにはそれぞれ視点が違っていて、それゆえ話は尽きずに喉が渇いてもう一杯という感じでした。といっても、ぐいぐい利き酒をしている他の2人を横目に、僕は途中からソフトドリンク。今夜は作家・作品単位より評論という行為自体についての話が多かった気がしますが、「原秀則どうよ?」の一言に評価をめぐって紛糾したのは、予期せぬ伏兵でした。

 キーワードを挙げるなら、しばたさんは「男気」、サイトウさんは「美学」ですね。

 
420日 (tue)

 戦後最大の思想家の言葉は易しくも難しく、それは言葉の平易さとは裏腹に、読み手の常識を越えるような仮説を平気で持ち出して話を進めてしまう迫力に、読者の僕が押し切られた結果でもあったわけです。吉本隆明の「詩人・評論家・作家のための言語論」は、講演の文字起こしに本人が手を加えたもの。いきなり胎児には母親の感覚が分かる内コミュニケーションがあるという前提で始まります。

 乳児の頃の経験が精神の異常を引き起こすとし、そうした異常はカウンセリングで乳幼児期まで遡れば治すことができるとする論は、果たして医学的にどれほどの根拠があるのか分かりませんが、勢い良く「思想家」を見せ付けてくれます。こうした「言葉以前のこと」だけで、3章構成のうちの1章を丸々費やしてしまうのも特異です。やがて言葉の自己表出と指示表出、琉球沖縄語の逆順序、詩歌の最古の形式である四七七などにも言及されていきますが、それぞれがブツ切れのまま展開されてしまうのは残念。もっとも、古今東西にわたる数多くの引用は、それだけで豪奢ですらあります。話が多岐に渡りながらも言葉の根源へと向かい、そして自己の思想を語るために突き進むこのスピード感は、軽い驚きをもたらしてくれました。

 すぐに読者の役に立つような直接的なアドバイスを示すような本ではありません。しかし、印象批評や政治的立場からの批評を批判し、作品自体の正確な分析を行った上で批評家の資質や見解が表れていることを理想とする意見には重みがあります。そして、百人が百回ずつ読んだら同じ評価に到達する場所があるだろうとして、主題よりも韻律・撰択・転換・喩を究極的な芸術的価値として挙げているのは、相対的評価に慣れ切っていた僕には刺激的でした。

 巨人の思考の断片を知るだけではなく、言葉というものの持つある種の得体の知れなさを認識させてくれる様々な示唆にも富んだ本です。

 
419日 (mon)

 今月は「COMiC CUTiE」の発売が早いなーと思ったら、「COMIC anan」って新雑誌でした。裏表紙がコンドームの広告なんで変だと思ったんです、カラナゲン入り水溶性ゼリーを塗布なんて。…わざとらしい間違い方で恐縮です。中身は去年出た「COMIC P!」を一部受け継いでいて、高口里純はその続き、江口寿史に至っては同じものが掲載されています。他の作家は、安野モヨコ・吉野朔実・やまだないと・魚喃キリコ・村田順子・冬野さほ・松田奈緒子・亜月裕。当然ながら「COMiC CUTiE」に比べ専門学校度は低く、全体として落ち着いてますが、突出した作品がないのは残念。ベッドに入った子供たちの夢うつつを1ページ1コマで描いた冬野さほと、切なすぎでこっちの胸が痛くなるやまだないとは気に入りました。

 「MUSIC MAGAZINE」5月号で最重要なのは、中村とうようが共産党の運動員を傘で殴った話です。雨の日は中村とうように気を付けろ。宮子和眞VS和久井光司・小野島大の「ワールドミュージック的視点」をめぐる闘いは、ロック馬鹿も度を過ぎるとウザいんで、僕は宮子和眞を断固支持(影響力ゼロ)。石井恒の「北京おだまり日記」のオカマ言葉、いっそパクってしまいたいですわよ。音楽の話題になりゃしませんね。

 ソウルフラワーユニオンのファンは「Quick Japan」を読まなさそうですが、中川敬インタビューは読まれたし。魂花速習に最適、小林よしのりに1ページ言及。今なら華倫変も付いてきます。

 
418日 (sun)

 朝から降り続く雨のせいで私の心もちょっぴりブルー。そんな寝言は置いといて、すっかり季刊状態になっている地下水道の更新作業です。今回は軽めにやろうと思ったものの、ついつい30サイト以上をブチ込んでしまいました。しかしそれ以上に大変だったのは、この4月に行われたドメイン名の変更に伴うURLの修正です。「JPNICはリンク文化の敵だ!」と、規模は知らないものの影響力のでかそうな相手に怒りながらの作業で、危うくリンク・フェチも廃業寸前でした。数が一番多かったのはBIGLOBEのページですが、あそこはお知らせページが表示された後で転送されるので、思い切って放置。移転したページの行方とか探してると、自分って「来る者拒まず、去る者を追う」タイプの人間なんだと思いました。そして肥大肥大肥大。テキストだけで73KBありますよ。

 今回はサブカルとインフォマニアに追加が多く、特に前者ではサブカル系とコジャレ系が混沌としてきました。でもそれでいい気がするので見て見ぬふり。エヴァと広末は消すタイミングを逸したのが悔やまれます。

 繰り返されるコピー&ペーストが生み出すミニマルビートを感じながら地味な作業をしていると、なんでこんな金にならないことしてるんだろうという自問のボリュームだけが大きくなっていきます。もう雨の日曜日なんて大嫌いです。

 o u t d e xもひっそりと更新が続けられています。いくら相互リンクの追加が中心という怠けぶりだとはいえ、このごろは日記に書くのも忘れてました。最近は、insects' breathエレクトリック グラフィクスxeno's minelayerチャンバラクロック二輪駆動自転車 ハッタリ号PERFECT BLUEHEXAGONが追加されてます。XTCのイベント・リポートが人目を避けるように「MUSIC」に増えたのは、バンドの性格を考慮してのことのような違うような。

 
417日 (sat)

 新宿でけむろさんシモゾノさんと三者面談でした。以前会ったことのあるけむろさんはすぐ分かったものの、2人ともシモゾノさんの顔を知らずキョロキョロしていると、そこへ金髪でえらくガタイのいい男が。「やばいカツアゲされる、あるいはカマ掘られる!」と泣きそうになったら、彼がシモゾノさんでした。勝手に細身の人だろうと想像していたので、はなっから大番狂わせです。

 最近は躁鬱が激しそうだったけむろさんですが、今夜は大丈夫。僕らはコミティア仲間なので、もう家族も同然です。…今度サークル入場券ください。自衛隊時代のこととか、人生いろいろ話が酒の味を深めます。でも、酒飲んだくらいで眠そうになっちゃいけませんよ!(スイマセン、僕は寝ました。)

 シモゾノさんはまだ19歳でポジティヴ全開、この点でも予想と大違いです。僕とけむろさんの金で飲み食いした男は本当にシモゾノさんでしょうか。しかもページデザイン関係の話を聞くと、心配になるほど労力をかけてます。やはり今後はコジャレを意識せずに独自モテ系路線を目指すべきだと、思わず彼を説得。あ、彼は本当は皆のことが大好きなんですよ!

 ところで帰り際、興奮で(というか酒で)顔を高潮させながらシモゾノさんが「オフカイオフカイオフカイ」と繰り返し始めました。なにか悪い種を蒔いたようで不安でなりません。

 
416日 (fri)

 電気グルーヴからまりんこと砂原良徳が脱退だそうで。音楽的には石野卓球がいれば平気だろうけど、3人のキャラクターのトライアングルが崩れちゃうのは寂しいですな。

 「レコード・コレクターズ」5月号はXTC特集。大好きなバンドのわりには持ってないアルバムも多いんで、この特集は嬉しい。しかも、XTCのルーツを知るために紹介されているアルバム19枚の中に、ROY WOODの名盤「BOULDERS」が入ってるじゃないですか。素晴らしい。

 
415日 (thu)

 「おっ、『COMIC CUE』の最新号が出てる」と本屋で思ったそこのあなた、ちょっと待った! それは太田出版から出た季刊誌「MANGA EROTICS」Vol.1ですよ。サイズが同じだし、南Q太・塔山森(=山本直樹)・やまだないと町野変丸なんて作家のメンツも共通してますね。他に町田ひらく福山庸治もいる豪華さです。そこにおける柳沢きみおのポジションは微妙なわけで。セリフを朗読すると凄いぞ。

 「エロティック・コミック」ということを意識したせいか、南Q太はいつもとノリがちょっと違っていて描写が露骨です。塔山森はここぞとばかりに実験的、やまだないとはいつも通りにスタイリッシュで高水準。町野変丸は、いつもと同じ絵・同じ内容ながらマックを導入していて、脱力的衝撃を受けました。安彦麻理絵はもう芸風が完全に確立されちゃったようで、少し寂しさを感じます。福山庸治はもっと悪夢を。

 気に入ったのはビッグネーム陣よりむしろ若手(?)の方。駕籠真太郎の「大葬式」は、葬儀にかこつけて性欲を晴らさんとする人間が、迷路のような空間で先を争ってデッドヒート。しかも大混戦。テーマの異常さ、キャラ同士の入り組んだ関係なんかはパラノイア寸前の奇妙さなんだけど、そこをユーモアですり抜けていきます。自己決定権やフェミニズム、資本主義についてまで考えながらアナル売春をしている大学生を描いた、砂(←これが作家名)の「セクスパレイト」も強烈。肉体とアカデミズムが卑猥な音を立ててぶつかり合うような物語です。「フェミニズム・セックスマシーン」と絶叫してるもんなぁ。

 あ、実用性は期待せぬ方が良いかと思います。

 
414日 (wed)

 仕事に疲れて外の非常階段へと出てみれば、5階の踊り場に桜の花びら1枚。もう春も終わりですね。いや、先走りました。

 春真っ盛りといえば、鬱になる人も多いようです。暖かで柔らかな空気や、新生活への希望に溢れる人々が一杯の街は、時として逆に人の心縛り付けてしまいます。皆さん大丈夫でしょうか。溜まった鬱屈を不必要にネットで晴らそうとしていませんか。他人を否定しすれば自分が肯定されるような気がするのは幻想ですよ。他人を刺激して反応を期待することしかできなくなってしまったら、それは精神が涸れかけているのかもしれません。さぁ、テレホを忘れてゆっくり眠りましょう。レッツ同衾。ぐー。

 しかし鬱になる暇もなく、喜怒哀楽がゴロゴロと回転する日々も疲れます。車輪の回転が早くて、しかもそれを支えるパーツがボロでは、軋みは神経にまで響いてしかたありません。久しぶりに電話で話した知人が「自意識」という言葉を口にした時、そんなこと頭をよぎり、そして次にこんなことを考える頃には季節は変わっているのだろうと思ったのです。

 
413日 (tue)

 高橋源一郎の数少ない近作は読んでなくて、いまだに「さようなら、ギャングたち」や「虹の彼方に」といった所期作品のイメージが残っていただけに、彼の新刊「あ・だ・る・と」を読み始めた時にはわりと普通の小説の形態であることにが逆に意外でした。自分の不勉強を棚に上げて。

 このAV業界を舞台にした物語は全部で4章構成、そのうち最初の2章は現場でのエピソードで引っ張っていく感じです。人妻や女子高生、電波な人々の性態に、常識とか羞恥心とかいうものが疑わしく思えて、「内面の葛藤」なんてものは一部の人間にしかないものなんじゃないかと思うに至る現場話。この辺は、AV業界のことを高橋源一郎も面白がって取材したんだろうなって伝わってきて、エロルポ感覚でも読めます。

 ちょっと雰囲気が変わりだすのは第3章。老婆とのセックス(もちろん撮影)の話です。相手の人間としての歴史、ひいては生死まで背負い込まされてしまった男優の葛藤。しかも勃たなくて苦しむのですが、妙に健やかなのが可笑しいです。この辺の描き方がまた上手いわけで。

 エピローグでは、反権力を志してロリコンAVなどを撮っていたものの、虚無を感じてインドに渡った男が日本に送ってきたビデオについて語られます。自然から奇形、そして娼婦へとカメラの対象は移り、繰り返される娼婦とのセックスが浮き彫りにする死と罪と穢れ。他の章とはまるで雰囲気の違う熱さで、セックスという行為自体の持つ意味にまで一気に突き進みます。いや、「ソドムの同窓会」というタイトルにせよこの展開にせよ、あまりに文学的過ぎるんじゃないか、俺は何か騙されてるんじゃないか? そう思いつつも引き込まれ、それまであまり効果を感じなかった太字強調も、その最後の部分はグッと来ました。なんて巧みな小説なんだろうと思いつつ。

 
412日 (mon)

 指先の血豆が潰れて電話機が血に染まらんばかりに必死こいて電話予約したBrian Wilsonの来日公演、S席が取れたと喜んでチケットを交換してきたら、2階席3列目でした。愕然。あの土曜の朝、なかなか電話が繋がらなくてトチ狂い、「チケット取れました!?」と爆睡中だった知り合いを叩き起こしたりしながら、ようやく予約したのに。普段は戦闘気分で電話予約をするようなアーティストなんて観ないんでダメージもでかく、僕にもランディ博士が必要です。東京国際フォーラム・ホールA、きっと耳目に厳しい広さに違いありません。これで8500円だなんて、悪い冗談です。萩原健太先生、挫けそうな僕を優しく叱って下さい…。

 あと、「AERA」が360円というのも悪い冗談です。「あの薄さで」と言うと、予期せずしてダブル・ミーニングになるので口の端が上がりますが、それもブライアン・ショックを思い出してしまったら…。

 津島祐子の「私」が1700円(税抜き)なのは我慢します。純文学ですから…。

 
411日 (sun)

 横浜TAHARAであがた森魚かしぶち哲郎のストアイベント。かしぶち哲郎は弾き語りで、あがた森魚は青木孝明とのコンビによる演奏でした。それぞれ2曲ずつ披露し、最後に一緒に「リラのホテル」。久しぶりに生で観たあがた森魚は、歌もギターもエネルギッシュで、トークは散弾銃のように飛び散る分けのわからなさでした。彼の溢れる生命感はなんでしょう、素晴らしい。終了後、喫茶店でハルヲさんからマニア講義を受けて帰宅。


 
410日 (sat)

最近聴いた曲無差別レヴュー〜'99春

advantage Lucy「シトラス」
 神経質まではいかないけれど繊細そうな、ボーカルの女の子の歌声が生み出す空気が心地いい。バックのサウンドとも相性が良くて、歌い上げる時の広がりは格別。

instant cytron「adventure monsters」
 女性ボーカルと英語の上手いガキどもが合唱。単純な要素の組み合わせがポップスにおいては絶大な効果を発揮するという見本。ひとりで部屋で小躍りしたい時に最適。

WINO「Devil's own」
 かっこいいんだけど粘着力もうねりも足りない気がして、最初は「イエモンよりは好き」という自分でもよく分からない比較に。でも巻き舌ボーカルも演奏の噛み合い具合はけっこうガッチリ。

上原多香子「my first love」
 背後の男声コーラスに、思わずレベッカの「ムーン」や岩崎宏美の「万華鏡」同様の現象かと疑ったが、実はプロデュースの河村隆一。だよね。

川本真琴「ピカピカ」
 緩やかなリズムと明るくしなやかな歌声は、しかし新しい世界を求める腹の底からの願いに満ちていた。この明るさは絶望と裏表のような予感がして、「ドキューン」などの擬音語も突き刺さる。笑顔のままで。

SCUDELIA ELECTRO「レインボー」
 全然エレクトロじゃなくて、むしろギターポップ。ビーチボ−イズの「スマイル」が歌詞に出てきて、そこだけビーチボーイズ風のコーラスが入ると言えば、思わず買いに走る好事家もいるはず。

chappie「welcoming morning」
 歌もサウンドも無機質に揃えることの快楽、ここに極まれリ。矢継ぎ早に意味が連射される歌詞も気持ち良く、グルビのキャラの歌という企画性も吹き飛ばすほどの完成度。テクノポップ万歳、グルビ万歳、川勝正幸万歳!(最後のは違う)

TRUE KiSS DESTiNATiON「AFRiCA」
 小室哲哉の新ユニットながら、「コムロどこ?」というほどコムロ歌謡的エグさも無い、普通の擬似本番R&B。広大なアフリカを歌い上げる試みは、上野動物園ライオン舎程度の広がりは獲得。最後の方に日本語の乗せ方が絶望的に下手なラップがあって、なぜかホッ。

Biscuit Fan「昼下がりの空に」
 URCレーベル30年振りの新人、湿気はそれほどでも。サウンドの隙間も魅力になりそうな好青年ポップスで、悪くは無いけど「雨上がりの夜空に」程度にはクセを出してくれてもいいじゃないの。

yukari fresh「Paris Symphony」
 おもちゃ箱の中で小人たちが演奏するストレンジ・ポップス。スキャットと打ちこみとサンプリングで駆け抜けていく曲の短さも素敵。ぬいぐるみの背中に電気コードと言う感じ。

Round Table「Feelin' Groovy」
 ボーカルの声も小山田圭吾そっくりだけで、「カメラトーク」の頃のフリッパーズそっくりとすでに1000回くらい形容され、これからも形容され続けるであろうグループ。でもオルガンの使い方の気持ち良さといい、基礎体力は確実。何か胸の奥の記憶を突いてくるし、意地っ張りマニアの皆さんも素直に楽しんではいかがか。


 
49日 (fri)

 玉置勉強「恋人プレイ」第2巻、いしいひさいち「となりの山田くん」全集1巻購入。「恋人プレイ」は、もっと人間関係をズブズブ突っ込んで欲しかったですが、19話みたいな切ないムードには弱いんでそれで良し。

 朝日新聞朝刊でのいしいひさいちは、読者が口うるさそうなあの新聞(偏見?)で、よくあんな毒のあるネタを描いてますよ。新聞マンガとして抜群に面白いと思いつつも、あの面白さは「新聞マンガ」という狭いフィールドゆえのものなんじゃないかって不安もありましたが、本でまとめて読んでもやっぱり面白いです。ただ、最初の頃は様子をうかがってる雰囲気で、毒は抑え目。隙あらば良識の裏をかいてやろうとしてるような現在の連載と比べてたらの話ですが。ちなみに全集は徳間書店からの発売、もうすぐジブリの夏が来るんですね。

 「噂の真相」5月号で読むべきは、朝日新聞がトップで取り上げてビックリの高検検事長スキャンダルよりも、「rockn'off」での三田格による佐藤伸治追悼文です。

 
48日 (thu)

 あまり見知らぬ方面へ向かう電車に運ばれ、この4月から大学生になるんで上京して一人暮らしを始めた友達のところへ遊びに行ってきました。

 春。入学。新生活。そんな言葉を聞いただけで僕は、草木の匂いが混じった春の空気や、大昔に片想いしていた女の子が微かに汗ばんだ肌に漂わせていた化粧の臭いを鼻先に思い出し、サニーデイ・サービスの「恋に落ちたら」という情感のむせ返るような春の歌を歌いたくなります。この春への過剰な胸の高鳴りは、かつて冬になるとダウナーの底を這いまわった人間ならではの後遺症かもしれません。

 でもその友達は昨夜も1時半とかに「寂しくて眠れない」なんて電話してくる始末。そして彼女の部屋で「友達作るチャンスがなかなかないんだよ…」なんて入学3日目なのに悲観し過ぎの話を聞かされながらまったりしていると、やはり上京して一人暮らしを始めた友達から電話が来て、その子も寂しいからと来ることに。もう部屋の中、寂しさインフレ。「なんとかなるよ〜、あ〜それより明日会社行くのだり〜」とかスーツ姿で寝転がって言う僕は、今じゃ大学入学当初のことなんて思い出せなくなっちゃいましたよ。気がつけば8年も前。

 真性青春をリアルタイムで生きる若者たちに素敵な出会いがあらんことを。そして僕には昼まで寝られる休養の日々を。

 あがた森魚とかしぶち哲郎という珍しい顔合わせでのアルバム再発記念イベントが、4月11日(日)15時からTAHARA横浜店で行われます。ところが同じ日に新宿ヴァージンメガストアで鈴木博文さんのイベントもあって、かなり客層が重なる(というか同じ)だけにマニアを悩ませていませていたんですが、なんかTAHARAのイベントは40分ぐらいなので、それを見てから移動しても充分な余裕があるらしいです。僕もTAHARA横浜店の方には行く予定。

 
47日 (wed)

 僕が毎日書き散らしている文章は、その多くが消費活動の記録であるとも言えます。CD・本・マンガ、ライヴやイベント、いや一歩外へ出ただけでも多少の差はあれ金を使ってしまうんですから。そんな僕にある種の憧れを抱かせるのは、少なく働き少なく稼ぎ少なく消費するという、だめ連が提案しているライフスタイル。だめ連編「だめ連宣言!」には、自分との距離を感じさせる面もあれば、他人事とは思えない共感を感じてしまう面もあり、結論はこれだと決めつける代わりに多くの人々の生き様が示されています。

 ここに収められた原稿の大半は、彼らの機関紙に掲載されたものの転載。はっきり言って読むに耐えない文章もあるんですが、それと裏表で生々しいほどの声も詰まっています。恋愛関係の章はだめ連に限った問題じゃないのであまり必要性を感じなかったけど、その他の章はガンガン読み進みました。特に、消費=幸福という観念に囚われた思考の枠組みの転換の勧めは、不況の時代を生き抜く現実的な方策として、だめ連の思想の中でも特に重要だと思われます。というか身につまされるんですよ。ソウルフラワーユニオンの本にも執筆していて、社会人として稼ぎながらも同時にだめ連でも活動する小倉虫太郎の文章は、僕に様々な示唆を与えてくれました。

 また彼らは、とにかく交流を重視します。この本に収められた、一見だめ連とは関係なさそうな人々の原稿もその活動の成果でしょう。その一方で気になって仕方ないのは、そこらじゅうに顔を出す左翼運動臭さ。そもそも機関紙のタイトルからして「にんげんかいほう」ときています。だめなはずなのにコアな運動と結び付いているという矛盾。それでも彼らが興味深い存在であるのは、そんな矛盾ですら対象化して自覚的である点です。集団の性格上、シャレではすまないほど精神的に厳しい人々も集まって来そうだし、理解者面してそのくせ自分のフィールドの広さのアピールに利用しようという魂胆で接近する人間もいるでしょう。でも、だめ連のいい意味での軽さがあればなんとか乗り切れそうでもあるし、楽観と思索とが入り交じった姿が、論客を含む多様な人々を集める理由でもあるのだろうと感じました。

 この本を読んでるだけじゃ駄目で、彼らと実際に会って初めて分かることも多いのだろうと思わせる点でこの本は成功していると思います。で、僕はそのうち必然が彼らと結び付けてくれるだろうと勝手に楽観してるんです。

 
46日 (tue)

 例えばあなたは、薄くはないけれど読み通せそうな厚さの本を1冊買ってくる。たとえそれがテレビ番組でもセミナーでも説法でもかまわない。それが内包するのはひとつの「システム」だ。平易な語り口だけど、時々顔を出すちょっと難解な言葉はあなたの知的好奇心と優越感を満たしてくれる。(ところで今すぐ辞書で「幻想」という言葉を引いてごらん。)そこには世間の常識に異を唱える発言もあるけれど、結局は受け手の精神を肯定してくれるような優しさが一杯だ。そうだよ、僕らは日常的な安寧の中に居つつも平凡を恐れ、自我が揺れるような状況で自身の存在が許されることを求めるんだ。しかも優れた送り手は、受け手のどんな心の動きをも反射し増幅できるような表現を熟知しているから、あなたは安心して自身を投影できる。喜怒哀楽が自己愛と結びついていたら、あなたの情動はナルシズムの形で深い快感すらもたらすに違いない。ひとつのシステムは、ひとつの壮大にして感動的な物語を簡単に与えてくれる。否定と肯定の綴れ織りは美しく、ゆっくりと弱っていくあなたの判断能力。そしてあなたはひとつひとつの論理の検証を忘れ、よもやひとつのシステムの中で自己矛盾が起きていることなど考えてもみない。でも真実を知った時にあなたは怒ってはいけないよ。だって全ては最初からあなたの払った対価相応のサービスに過ぎないのだから。

 僕はそうしたシステムを否定はしないけれど、そこからできる限り遠く離れていたい。だから僕が時々あなたたちの心に響かせる幼稚なノイズを赦して欲しいと贅沢にも願う。信頼する友人たちや愛する恋人へ。

 
45日 (mon)

 普通映画のメイキングといったら、まずクローズ・アップされるのは主演の役者で、そして次にクリエーターとして苦悩する監督の姿というのが普通ですよね。なーんてメイキングを観たことも無いのにホラ吹いてるんですが、僕のイメージだとそんな感じです。そしてそんな考えを真っ向から却下してくれたのが、「ガメラ3」のメイキング「GAMERA 1999」。総監督は庵野秀明、監督は摩砂雪というGAINAXコンビです。さあさあ、カレカノ最終回の悲劇を忘れさせてくれるんでしょうか。

 この「作品及び商品及び宣材」が主に捉え続けるのは、主演の前田愛でもなければ監督の金子修介でもなく、特技監督の樋口真嗣。つまり特撮部分の監督です。彼とその仲間である特撮班が、毎日苦労を重ね新しい手法を試しながら撮影する場面が大部分を占めています。その模様だけでも充分面白いし、「ラブ&ポップ」同様のやたらに凝ったカメラワークと、時間軸の交錯が多用される編集も気持ちよく、自分はこの人達の映像感覚が好きなんだと再確認しました。

 しかし、美少女・前田愛がいるのになんでまたメインが樋口なのか。ビデオ中盤からは、監督である金子と現場との板挟みになって中間管理職のごとく苦しむ樋口、そして疲労感モロ出しで「死んじゃおうかな」を連発するプロデューサーの南里幸という2人の姿が中心となり、終盤はそればっかりに。制作現場での意思疎通がうまくいかない様子が撮り続けられ、しまいには金子が「これ、何のために撮ってるの?」と苛立ちながら言い出します。そう、人間関係のこじれを容赦なくあぶり出そうとする庵野監督は、金子と樋口・南里の険悪な関係が一番面白かったんでしょう。本来の監督である金子なんてほとんど悪役扱いだし、タチの悪さ全開です。

 底意地の悪さが次第に前面に押し出されてくる2時間以上のドキュメント。友情・努力・勝利の類は気配すらもなく、疲れ果てて行く男達の姿だけが最後に残ります。長過ぎだけど、庵野監督ファン(エヴァファンではなく)は必見。画面にもチラチラ登場する庵野監督は、メイキングを依頼された自分自身が「作品及び商品及び宣材」であることを認識していたのだと思われますが、結局「いいのかよ」ってほどメイキングを自分の色に染め上げてしまいました。

 ガメラの最大の敵は庵野監督だったわけですよ。

 余談:前田愛・前田亜季姉妹と沖田浩之って同じ事務所だったんですね。

 
44日 (sun)

 コーノさんヤマナさん、ヒタカさん&長縄さんの合同結婚パーティー。昔からのマブダチであるというコーノさんとヒタカさん、結婚まで同時期でパーティーも一緒というのはすごい縁の深さです。なんか羨ましいねぇと思った僕は、「PARKING!」編集長たるヒタカさんに原稿未完成のまま会うことはできないと、午前4時まで原稿書いて起きたらすぐに水一滴も飲まずに池袋へ向かうという有り様でした。しかも招待状の文面を真に受けて、思いっきり平服で。

 ポラロイドで自分たちの写真とってメッセージ書いたり、質問タイムやビンゴゲームがあったりする手作り感溢れるパーティーで浮かない顔の奴がいたら、そいつは「自分にはこんなパーティーを仕切ってくれる友達いるかなぁ…」なんて考えてるに違いありません。いや、俺じゃないですよ俺じゃ。ほっといてくれ。二組のカップルは、なんか気張らずいつも通りの感じで素敵でした。

 ところが不幸な出来事はいつでも突然に起こります。僕にだけ。飯食いタイムにハッと顔を上げると周囲は見慣れたムサ苦しい男どもに囲まれていて、彼らが話題にしていた「宇仁田ゆみ」というマンガ家を僕が知らないと言っただけで、「以前教えたのに(知らねえよ)」「雑誌読め(大きなお世話だ)」「おいしいとこどり(センスがいいんだよ)」「男子校教師の気持ちが分かるか(嬉しいんでしょ?)」「あがた森魚買え(それは買います)」「宇多田ヒカルと間違えたんだろ(ゴメン、これ自分で作った)」などと、植田本田しばたさくら(←言ってないかもしれないが巻き添え)の各氏から一斉に袋叩きです。ママン、ケーキが涙でしょっぱいよ…っていうか貴様ら覚えてろ! 俺が忘れるかもしれないけどな!

 ともあれ。Kさん御夫妻・Hさん御夫妻、お幸せに!(ジャンプの作者の一言コーナー風に)

 
43日 (sat)

 4月最初の週末、関東地方では多くの人々が花見へ出かけ、僕もその一人に…なるはずが、諸般の事情で同人誌「PARKING!」の原稿書き。締め切りを破らずに済む最終期限が今日だ。無理やり桜の下で書くのも一興ではあるけれど、虚しさを倍増させそうなので自室でパソコンに向かう。2月に出るはずが延期され、それに伴い原稿の内容を大幅に変更したら、字数まで大幅に増加して僕の首を締めつけた。無駄にネットを見たり夕方寝たりして、寒さに目を覚ませば外は真っ暗。本腰入れたのは午後の9時、そのまま朝の4時までかかってマンガ評論のようなものを1万字。毎日散々ネットで文章を書き散らしているのに、まだ言い足りないことがある事実に驚く。自分で満足が行く出来の原稿も、第三者が客観的に見たらどうなのだろうか。

 今日は久しぶりに文章が常体なのは、書いてる原稿の文体の影響だ。

 
42日 (fri)

 新宿の通りに群がる新社会人たちを掻き分けて、たどり着いたのはリキッドルーム。カーネーションのツアー最終公演です。僕が好きなバンドの中では最も「ロック」な感じのバンドだけあって、客を乗せるのはさすがに上手いんだけど、一方でアルバムに入っていたラウンジ〜音響派っぽいインストも次々と披露。他の客にどのくらい受けるのか知らないけど、この試みは僕にはかなり面白かったです。雑多な要素がブチ込まれたアルバム「Parakeet & Ghost」のツアーだけあって、ライヴでも同じバンドかと思うほど雰囲気が変わる場面もあったし、「Young Wise Men」や「地球はまわる」といった所期の代表曲の別アレンジもあり、しかも本編だけで2時間以上の長丁場。アンコールでは、直枝&大田コンビだけでの「Strange Days」が最高でした。弾き語りヴァージョンのこの曲は大好き。「ヘヴン」ではステージを観てると光と音を浴びてる感じで、こういう感覚を味わえるのはライヴならではですな。ちなみに女友達は泣きそうになったそうです。アンコールは実に3回あって、最後はプロデューサーの上田ケンジと、加藤いづみも登場。初めて生で聴く加藤いづみは、細かいコブシのまわし方が新鮮でした。トータルで1時間40分以上、もうお腹一杯。

 途中、15周年記念本「WACKY PACKAGES GOLD」の告知タイムがありました。直枝さんが目次を読み上げるんでドキドキしてたら、僕のエッセイのタイトルが受けて「よっしゃー!」てな気分。悩んだ末に付けたファン向けのタイトルの意味が通じて安心しましたよ。

 ライヴ終了後、直枝さんに謁見。あの業界度の高い状況でどう見ても浮いてる僕に優しく応対してくださり、有り難かったです。ビールを空きっ腹に流し込み、赤らんだ顔で矢部さんに握手してもらいました。そう、矢部さんといえば広末@武道館の際にドラマーを務め、ステージの最後にミュージシャンが一列になって手をつないだ時、広末と手をつないだ人です。つまり…広末との間接握手に成功! とんだ酔っ払いです。棚谷さんと話したときに名乗ったら、僕が公式本にエッセイを書いた人間だと一発でバレました。「悪事千里を走る」なんて言葉が僕の頭に。ともあれ、カーネーション&「WACKY PACKAGES GOLD」編集・執筆の皆さん、本当にお疲れ様でした。

 
41日 (thu)

 深夜、万愚節反省会。本年が初の試みであるo u t d e xの四月馬鹿TOP(すでに消去)に関しては、「Netscapeだと青で分割されたフレームが正しく表示されない」「しかもJAVA Scriptが化ける」などの技術的な問題がゲイツ寄りだと非難され、またエープリール・フールのネタだとバラすJAVA Scriptのメッセージが、「『紙面に嘘の記事が一つあります』とわざわざ断っていた朝日新聞朝刊と同じように、中途半端に良心的かつ小市民的で不快」などの声も聞こえて来ました。誰もいない部屋、切断したままの回線、僕の頭の中だけにいくつもの声が。うあああああああ、世界中が僕を責めてるんだ!

 でも、メールなどで反応してくれた人がいてくれたおかげで自我崩壊を免れましたよ。「やっと広末だけに専念してくれるんですね!」という同士からの声援が来なかったのが心残りですが、騙されたらそれはそれで問題なわけで。

 さて、ニセ閉鎖が流行した昨年に比べ…とか言いながら本当はよく知らないんですが、ともかく今年はニセTOPが目につきました。個人的なヒットは、何の前触れもなく「タイタニアン64」のサイトに変わったecさんと、「だんご3狂弟オフィシャルページ」を名乗った大黒屋ジョニーさんのところ(現在は両方とも元に戻ってます)。特にジョニーさんは、だんごの代わりに自分の顔写真を3つ並べる捨て身の戦法が感動を呼んでの受賞となりました。(いつの間に賞?)

 そんなわけで、4月1日午前0時ちょうどに電話で話しながら更新して翌日午前0時ジャストに元に戻すような、心のゆとりあるいは無駄を気にせぬ暇な日常を来年も保っていたいものです。もうちょっとマシなネタを考えつく頭もあればなお良し。

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