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小心者の杖日記@o u t d e x

ピクニック・カレンダーi-modeJ-SKYリンク蔵

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1130日 (thu)

 新高円寺のSALON de marbletronで「ミュージックマガジンナイトVol.3」。残業後に行ったので終盤の1時間半ぐらいしかいられなかったけれど、3回目にしてやっと足を運ぶことができました。会場はライターとミュージシャンが大半を占めていたようで、まさにそっち方面の人たちのサロンという雰囲気。ああ全員マニアに見えるよ、事実そうなんだろうけど。知っている人が高橋編集長と岸野雄一さんしかいないない僕は少々肩身を狭くしながらボーッとライヴやトークを聴いていました。僕が着いた頃には岸野さんたちTHE REST OF LIFEのライヴは終わっていましたが、tsuki no waのライヴと松山晋也×岡村詩野×岸野雄一の各氏による「うたもの」トークは見れて、23時過ぎにヘロヘロと帰路に。


 
1129日 (wed)

 とりあえずの目標は週末まで生き延びることだけど、この調子じゃ土曜も出社かも。出勤前に毎朝DREAMS COME TRUEのシングル「24/7-TWENTY FOUR/SEVEN-」を聴いているのは、無意識に自分をアッパーにしようとしているからかもしれません。中島みゆきののアルバム「短編集」を聴いて熱く感動したものの、聴き返す余裕はない状況です。あと、Whiteberryのシングル「あくび」は伊藤銀次のプロデュースなのに、あのペナペナのサウンドはなんなんでしょうとか、忙しいとどうでもいいこと書きたくなりますね。


 
1128日 (tue)

 いしいひさいち「女(わたし)には向かない職業」第2巻、筑波さくら「目隠しの国」1・2巻購入。と書いたものの本当は土曜日に買ったもので、さっぱり消化できないままの状態です。時間が…。久保田麻琴の「ON THE BORDER」が聴きたくても、レコード屋に行く時間的肉体的余裕がないままなのです。


 
1127日 (mon)

 最初に聴いた矢野顕子のアルバムは86年の「峠のわが家」だから、もう14年ほどリアルタイムで彼女の音楽に触れ続けていることになります。アルバムは全部揃えているし、わりと熱心なリスナーだと思うのですが、最近は彼女の歌唱法にやや過剰なものを感じていたことも事実です。だから3枚目となるピアノ弾き語りカバー集「Home Girl Journey」を聴いたらどうなるのかとやや不安でしたが、そういう表面的な問題を押し流す集中力に満ちているので素直に歌に身を任すことができました。ただ、選曲ではBeautiful Songsの他のメンバーの曲を取り上げていたり、槇原敬之の曲があったりと、音楽的な理由とは別のものがあるのかなという邪推が入る隙も。それでもその槇原敬之や山下達郎の楽曲では曲構造の骨格の見事さを浮き彫りにしてみせるし、SMAPの「しようよ」の再構築の仕方も堂々としたものです。オー!ペネロープの「Photograph」もいい曲。忌野清志郎の「海辺のワインディングロード」や、奥田民生の「さすらい」での高まりもたまりません。演劇臭くなる一歩手前で自分を律することのできる緊張感があってこそ成り立っている歌なんでしょう。

 OUTDEX更新、「small circle of friends」にBARITONESAXが加わりました。

 
1126日 (sun)

 どの話もハッピーエンドどころかその逆ばかりなのに、妙に面白く読めてしまうので自分の内面の泥ついた部分にも気付かされてしまうのが、駕籠真太郎の「パラノイアストリート」第1巻。なにしろ探偵モノなのに、依頼主が全員死んじゃうんだから滅茶苦茶です。探偵とその助手が旅する先は、測定ばかりしている町、管だらけの町、人間同士が接着している町、住民が積極的に病気になる町、禁止標識だらけの町などで、駕籠真太郎の奇想っぷりを堪能できます。特に「逆」と題された回では、上下逆になって暮らしている人々のセリフも逆になっていて、さらに左右反転だの白黒反転だのしたあげく、最後にはフキダシの枠線がないキャラクターが登場するなど、軽くメタの領域にまで踏み出しているのでした。助手の女の子がもっと可愛ければ良かったのに、惜しいな。ほどほどに残虐、ほどほどにエロ、とぼけた味わいだけどやっぱり血塗れの作品です。


 
1124日 (fri) - 1125日 (sat)

 軽く渋谷に集まって軽く飲んで軽く帰宅しようぜとしばたさんの呼び掛けで集合したのは金曜の夜のこと。けれどどこかで時間のブラックホールにでもハマったのでしょうか、帰宅したのは土曜の朝でした。そんなタイムトラベラーたちは、しばたさん・サイトウさんLZDさんYASUさんラんちゃん、そして僕。LZDさんが着メロをリアルタイムで作成してモテテクニックを披露している間は良かったですが、次第に酔ったしばたさんが「お前たちはまだ28じゃないからダメなんだ」と他のメンツに説教し始めた辺りから場が脱線しはじめました。でも、とりあえず彼の発言に便乗して「そうだそうだ」と言う僕は28歳。このしばたさんの脱輪は朝まで続きます。

 結局1時半過ぎまで渋谷で飲んで、退路を断たれてからタクシーで池袋のサイトウさん宅へ。皆がわざわざドリームキャストでインターネットに接続してテレビの大画面でネットサーフィンしたり、そこら中のマンガや本を読んだりしているかと思うと、YASUさんは古い米を使って危険度のチャーハンを作り出します。僕はサイトウさんの昔のアルバムを漁り、他人の過去に自分を重ねて勝手に感傷に浸っていましたが、「俺が見ちゃっていいの?」と聞くと「いいよ、自信あるから」。僕もこう言える大人になろう、明日なろう。

 そんなこんなで朝焼けを窓から眺める頃にはみんな丸太のように転がりだして、ちょっとしたスラムのような状態でした。おはよう、池袋の朝。テンションがレッドゾーンを超えた楽しい夜の後に迎える朝は、不思議とこんなにも鬱だよ。

 追記:たしかにこれはあんまりにもあんまりだよなー。

 
1123日 (thu)

 キリンジの映像作品を制作する際に苦労するであろうことは、音楽自体の持つ情報量に対抗できる映像を生み出さなければいけないことではないかと思います。そうじゃないと本当に退屈になってしまいますから。キリンジの初のビデオクリップ集「44' 43'' 01f」では、「双子座グラフィティ」や「銀砂子のピンボール」がそうした退屈さを抱えていますが、たいした演出はなくても接写から次第にカメラが引いていく「エイリアンズ」はなかなか見応えがあります。テロリストの外人女にキリンジが爆殺されてしまう驚愕の「アルカディア」は映画仕立て。失恋のニュースがなぜか号外で街にまかれ、その青年のために喫茶店で無表情にキリンジのふたりが歌う「グッデイ・グッバイ」は妙に可笑しく、「君の胸に抱かれたい」ではCGが駆使されて生首のように中空に浮かんだキリンジの顔がインコとデュエット。このあたりになるとかなり不条理な映像ですが、極めつけは「牡牛座ラプソディ」です。弟・堀込泰行が扮するニュースリポーターが歌いながら取材し、いちいち歌詞がローマ字で字幕表示されてる時点でいかれてますが、取材対象の兄・堀込高樹にコーラスの部分だけマイクを向けて一緒に歌うという演出が最高に馬鹿馬鹿しくて大笑いでした。しかも終始無表情。キリンジのふたりって、ビジュアルでは無機質な素材として扱われると途端にいい味を出すから不思議です。


 
1122日 (wed)

 ハッ、いつの間にかイーストプレスの公式ページが。まだ「恋運暦」のコーナーしかありませんが。

 そのイーストプレスから発売された「COMIC CUE」Vol.9の奥付にcooperatorとして僕の名前があるのを見つけるとは、めざといぜ本野智さん貞本義行さん×栗山千明さん×本谷有希子さんの鼎談で、司会と注釈を担当しています。栗山さんの美少女っぷりは、一部の隙もないほど完璧でした。

 本谷さんのページが久しぶりに更新されていると思ったら、次回公演が決まったのですね。イメージが「童貞、処女に死ぬ権利なし」って…。ええ、その業の深さを確認すべく必ず観に行きますとも。

 
1121日 (tue)

 「アワーズライト」の最新号はもう2001年1月号で21世紀に突入です。「BED ROOM DISC JOCKY」では、直枝政広の「HOPKINS CREEK」とTIN PANの「TIN PAN」について書いています。今回は小石川ふにさんがイラストで犬上すくねさんをカバー(?)。あびゅうきょさんと小野寺浩二さんの作品に挟まれているのがちょっと嬉しかったりします。


 
1120日 (mon)

 極端なマネをするねぇ、虐待グリコゲンVSゆらゆら帝国。チケット前日発売ですか。

 「フリクリ」VOL.4はまだ観てないし、そもそも原作GAINAX/漫画ウエダハジメの「フリクリ」第1巻も読んでないのでそっちから処理。誌面に余白を残しながらコマを並べていて、コマの枠線も主線も一見ラフな描き方が、極度に勢いのある場面がたびたび登場するこの作品にマッチしています。というか、テンションはアニメにも負けてなくて、音楽がなくてもリズム感が途切れることなく話が進んでいく手腕は巧いもんです。アニメを観ずにこのマンガだけ読んだらちょっと分かりづらいかもしれないけどね。

 
1119日 (sun)

 「MANGA EROTICS」2000年冬号ではやはり若手が面白かったです。若手と言っても実年齢は知りませんが。中村明日美子は絡み合う線と線が不思議と官能的で、田村マリオは画力とベタの迫力で読み手を情念の世界へと連れ込みます。エロ描写では松本次郎が一番好きなんですが、これは個人的な趣味の問題か。大戸泰夫が露出癖のあるホモ少年を描く「ミンツ」は、話の煮詰め方こそ甘いものの、その可愛らしさと裏腹の変態性ゆえに今回の号で最も極端な作品になっています。とナミルチモがともにセックスをスポーツとして扱っていて、前者ではセックスがオリンピックの競技で決め技とか使いながらコーチとの恋まであるし、後者はリングで全裸でホモだしで、もう取り返しがつかない感じが素敵でした。


 
1118日 (sat)

 次回TGVは、2001年1月6日です。たぶん。年明けにいきなりかよという声が聞こえてきそうですが、その日がまちださんの誕生日なので勢いで決定されました。当日は、ターンテーブルの上でバースデイ・ケーキが回転しますよ。

 会場は前回と同じ新高円寺のSALON de marbletronになる予定で、今日はMASAさんとまちださんがで打ち合わせをしてきてくれたはず。詳細が決まり次第、告知ページもリニューアルされますのでしばらくお待ちください。

 それにしても続きますね、このイベント。社会人の忙しさの反動でしょうか。お客さんが集まってくれてイベントを続けられる事実にも感謝しないとね。

 「MUSIC MAGAZINE」12月号で、佐野元春の「ライブ・アンソロジー 1980-2000」「グラス」のレヴューを執筆しています。

 
1117日 (fri)

 陣野俊史の「じゃがたら」をゆっくりと読みながら、そのJAGATARAの2枚組みベスト盤「西暦2000年分の反省」を聴いています。僕はJAGATARの猥雑なサウンドに強く惹かれる一方で、江戸アケミの歌うレトリックが少なくて生々しい歌詞にいまひとつのめりこめずにきましたが、そういう捉え方とは違った視点をこの本は提示してくれて面白いです。


 
1116日 (thu)

 復帰。

 南敏久「すごいコスプレ烈伝!」、山口昇一「にぶんのいち」が密送されてきました。どちらもすごそうです。パラパラめくっただけで臭い立ってきそうです。

 
1115日 (wed)

 熱が下がらないので自宅で静養。途中で何度か起きながら合計で12時間以上も平気で眠ってしまい、普段いかに自分が身体に負担をかけているかが分かりましたよ。目を覚ましたら日が暮れてたし。

 HARCOの「シンクロの世界」は、宅録アーティストのイメージを裏切るほど躍動的なサウンド。HARCOこと青木慶則は主にキーボード類とドラム類を演奏し、そこにギターなどのサポートが入るという2人程度での編成がアルバムの半分を占め、残りはバンドでの演奏です。でも、「雲と行動学」や「鳥と建築家」のようなハードな曲でも、どちらがバンドでどちらが2人か見当がつかなほど演奏に大差がないのが面白いところ。また、電化ジャズのような「C線上のワーカホリック」など、HARCOのオルガンをはじめとして演奏にジャズのテイストが強いことも興味深かったです。それらに比べると、高らかに歌い上げるミディアム・ナンバー「1分の1の地図」が素晴らしい曲であるにも関わらず単調に思えてしまうほど。音楽的要素と表現手法のねじれが、HARCOの音楽を面白くしているのかもしれません。

 
1114日 (tue)

 午前中は病院で左腕の診察。このまま無理をしなければ骨のヒビはくっつくとのことで、面倒な生活はしばらく続くものの痛みもだいぶ引いたし、あとは時間の流れを待つだけのようです。そんな具合で安心して出社すると夕方からどうにも熱っぽく、手先に痺れたような感覚やら身体に悪寒やらが。帰宅後の体温は37度強、不摂生な生活の反動がとうとう来やがったっていう感じです。

 夜はコミティアでいただいたおざわゆきさんの作品を読んで静養。

 
1113日 (mon)

 東芝EMI廃盤セールに注文したCDは、申し込みから1週間程度で到着。旧ユーゴスラヴィアの歌手であるヤドランカの「信じているの」は、蓋を開けてみたら日本語曲ばかりで、唯一母国語で歌われている1曲との歌唱における表現力の落差がちょっとつらいところです。「恋人よ」「昴」のカバーを聴いていると、たとえこういうアルバムを制作するのが本人の意志だったとしても、周囲のスタッフがもうちょい彼女の良さを引き出せなかったのかと切ない気分になってしまいました。岡林信康のアルバムを1枚丸ごと聴くのは初めてですが、はっぴいえんどがバッキングをしている「見るまえに跳べ」はそれほどフォーク臭くないので一安心。シリアスなのかと思いきや意外とユーモアもあるし、わりと粋な雰囲気もありました。やっぱり個人的には共感する類の音楽じゃないですが。クラフトワークの「ヨーロッパ特急」は、緻密に構築された建築物のような音楽。そこに現れるボーカルがどこか気が抜けたようなのが、サウンドとの素晴らしいバランスを生み出しています。そしてペンギン・カフェ・オーケストラの「ベスト・オブ・ペンギン・カフェ・オーケストラ」はあっという間にヘヴィー・ローテーションに。クラシックをルーツにした穏やかで瑞々しい音の中に、現代音楽や民俗音楽の姿が見え隠れする実験性とポップさが両立されている点が、適度に刺激的で適度に和めるのです。


 
1112日 (sun)

 東京ビッグサイトでコミティア。有明に吹く秋風はいつも冷たいぜ。会場に入ると、「コミックビーム」の奥村勝彦編集長のトークショーがしばたさんの司会で始まったところです。豪快そうな雰囲気は漂わせつつも、「幽玄漫玉白書」などで知るキャラクターよりはずっと生真面目にマンガについて語る編集長。それを見守る人たちも軽く100人以上いて、さすが強烈な個性の編集者だけあってファンも多いようでした。しばたさん、大役おつかれさま。

 いつものように目当てのサークルの本を一通り買い、あとは会場を巡回して新規開拓。本やペーパーをくださった方々、ありがとうございました。それにしても、左腕が故障している状態で大量の同人誌を詰めたバッグを左肩に掛けているとどうにも不安です。左腕の回復と、同人誌を読み終えられる時間の余裕が早く訪れますように。

 終了後は金魚さんと食事。「アッパーズ」でのデビュー決定、おめでとー。

 
1111日 (sat)

 「ガロ」12月号で「EDGS OF INDIES COMICS」第3回、「cookie scene」vol.16で「『20世紀に読んどけ!』マンガベスト5!」のアンケート回答、「UNGA!」NO.73で広末涼子・NONA REEVES・大木彩乃のCD評を執筆しています。なんか一気に店頭に。「ガロ」は遂に鳥肌実特集、ポスター群がすごいアートワーク。「cookie scene」では、短いページ数ながらまなべ正志作品が毎回読ませます。「UNGA!」では、今となっては複雑な広末涼子への想いを、暴走せぬよう自重しながら約550字にまとめました。


 
1110日 (fri)

 牛屋さんが参加しているという「駿河台ホテルプロジェクト TokyoLomoHeads II」に、エマさん・chicaさんといとい氏・ネギシさん・ラんちゃんとともに突撃。このイベントは、ロモのカメラを抱えて数年前からイベントを開催してきたという集団「TokyoLomoHeads」によるもので、取り壊しを間近に控えた駿河台ホテル全体を、写真を中心とした表現で埋め尽くしてしまおうというものでした。

 1階の本来レストランだったスペースは、いきなりクラブに変貌。今夜は高校生DJによる高校生ナイトみたいなことをしていて、ラッパ我リヤの曲で女子高生たちが盛りあがっている時点で気圧されてしまいました。しかしそれもまだまだ序の口、2階へ登るとそこは壁という壁、あらゆる壁面が写真で埋め尽くされ、しかも写真の配列も計算されていて、それにかかる手間と金を考えるとそれこそ正気の沙汰とは思えぬ光景なのです。2階だけではなく3階までそんな状態という時点でノックアウトされてしまいました。

 そして写真に取り囲まれながら壁に手をあてるとその向こうには空間があって、ドアを外したホテルの各客室があるのです。そこに入ると、スライドが壁に映写されていたり、音楽が流されていたり、ベッドに寝る人のビデオが壁に立て掛けられた本物のベッドに映写されていたりと、それぞれ別のコンセプトが展開されています。さらには壁が引き剥がされ、隣の部屋とひとつのようになってしまった部屋も。もう僕らも各部屋の中ではしゃぎまくってテンションを浪費せずにはいられません。

 なかでも我々を興奮させたのは、部屋に何台もビデオカメラが用意され、その映像が別室の何台ものテレビに映し出されているというシステム。思わず半分ずつのチームに分かれ、片方のチームがカメラの前で踊り、もう片方が別室でその映像を見るという、文字に直すと馬鹿馬鹿しいことこの上ない真似をしていたのでした。ちなみにその映像はしっかりと録画されていたらしく、「素材に使われちゃうよ」と牛屋さんに真顔で言われてドキリ。それ以前の問題として、エレベーター前に置かれたテレビにも映し出されていたとあとから知ったのですが。

 この駿河台ホテルには大学生時代に来たことがあって、当時先輩が週末の深夜ここで当直のバイトをしていたので友人たちと遊びにきて夜を過ごしたことがあったのです。そのホテルも取り壊しか…と感傷に浸りそうでいて浸らなかったのは、各部屋のコンセプトごとに刺激があって、客である僕らも妙に突き動かされるものがあったためでした。そこにあったのは、解体の直前だからこそ許される弾けた創造性。我々のテンションが異常なほど上がっていたのも、そのおかげということにしておきます。

 
119日 (thu)

 「私なんでも良い方にしか考えないから」という彼女の言葉を不快に感じなかったのは、むやみなポジティヴ・シンキングにありがちな自己中心的な傲慢さがなかったのはもちろん、例え期待が残酷に裏切られる日が来きたとしても、そのショックすら受け入れる覚悟を持ち合わせているように見受けられたからでした。僕はまだまだ絶望が足りない。そう思ってしまうほど彼女の強度の高さを感じたのです。予想しうる最悪の事態を想像して身構えることを自分自身に課しても、そうした事態は無慈悲なほど簡単に襲ってくるもの。それに抗うのでもなく目を伏せるのでもない道は他にないものでしょうか。そろそろ裏切られることにも慣れないとな。

 それにしてもGoogleのキャッシュ機能ってすごいなぁ。すでに消去されたファイルまで読めてしまうなんて、インターネットはタイムマシンのようです。でも、その流れは現在から過去へのみだけどね。

 
118日 (wed)

 いおりん情報で知ったのですが、Music Wireでは直枝政広のライヴを5曲分見ることができます。しかも非常階段メトロファルスのライヴまで。ちなみにここは、ライヴ映像の前にCMが挿入される仕組みです。

 宇仁田ゆみの「楽楽 -らくらく-」は、キャラクターたちの空回りする情熱と不器用さといいかげんなほどの勢いが生み出す、限りなく体温に近い暖かさが心地いい作品集です。気負いもなくセックスを描きもして綺麗事には終わらないけれど、ドロドロとした情念に足を突っ込むこともないバランスを成り立たせているのは、やっぱり前向きな雰囲気があってこそでしょう。彼氏が身体ばかり求めるので、そんなにいいものなのかと自分の性器を鏡で見る「ふたりのノゾミ」や、顔に感情が出ないしセックスの時に声も出さない彼女との関係を描いた「VOICE」に、宇仁田ゆみの個性を感じます。「ヤングアニマル」誌上で初めて読んだ彼女の作品「ノド ノ ビリビリ」の、ラスト1ページの妙に中途半端な終わり方も今となっては悪くないな。そういえば全収録作品がハッピーエンドなんだけど、別にそこに無理がないところも素敵なのです。

 
117日 (tue)

 「ティアズマガジン54」U2「ALL THAT YOU CAN'T LEAVE BEHIND」、 ジョナサン・デミ監督によるTALKING HEADSの映画「STOP MAKING SENSE」のDVD購入。大学生ぐらいの頃、TALKING HEADSは僕が最も好きなロック・バンドのひとつで、アナログを中古盤で揃えていったものでした。安かったから。見たこともなかったけど、「Don't Worry About the Coverband」なんてトリビュート盤も出ているようです。

 Blink.comのサービスを利用して、この日記のリンク先を抽出したのがリンク蔵10月分を作成しました。

 
116日 (mon)

 直枝政広ソロステージのムービー。歌っているのは「幻想列車」ですよ。

 HOT-CHAから12月20日に発売されるヘリコイド0222MB「ACTION!」は、最初こそわりとオールドスクールなロックかと思いきや、次第に澱んでいく音像が聴きどろこでした。血の気が多いというほど押しの一手でもなく、倦怠感があるというほど脱力もしていないという不思議なバランスの上に成り立つ個性。タイトな演奏から急にリズムをチェンジしてみせる「O.N.D」や、音数が少なさが奇妙な世界を生み出すアカペラ「REM」に、ヘリコイド0222MBの面白さを特に感じます。

 OUTDEX更新、「small circle of friends」にあまりものomo*8ボランチを追加しました。

 
115日 (sun)

 早稲田大学第二学生会館で「HOME ROOM vol.0」。かつてタキサカさんが立ち上げて、ノウエさんも参加しているサークル「おもしろ☆80」主催のイベントです。少し遅れて3時前に入場すると、minamoがライヴ中。2台のギターが奏でるアコースティックな音色にエフェクトがかぶさりながら、ゆっくりと盛りあがり、そしてゆっくりと冷めていくような演奏でした。

 それに続くは、個人的に今日の本命であるSPANK HAPPY。もちろん僕は両眼で食い入るように岩澤瞳を捕らえて離しません。今回もメガネ、そしてふたくくりの髪に黒のノースリーヴのドレスで登場されたら、もうそうするしか道はないですよ。今回最大の見せ場は、MCの途中で菊池成孔が突然「そのふたくくりは飽きた、髪を下ろそう」と言い出し、彼女の髪をなでつけで整えた場面でしょう。いやらしすぎます。菊池成孔が岩澤瞳をプロデュースする過程をそのままステージで見せつけ、あまつさえ菊池成孔が一緒に歌い踊るためにダンスや歌唱のレッスンまで公開されているような錯覚を受けてしまうのがSPANK HAPPYのステージですが、果たしてどこまでが演出でどこまでが偶然なのか。その謎が解けないまま、菊池成孔が岩澤瞳に「皆さん良いクリスマスを!」と言わせるという一発ネタでステージは幕を閉じたのでした。音楽面で驚いたのは、「スパンクスのテーマ」がレゲエ風のリズム処理と、ラガマフィンのようなボーカルスタイルで演奏されたこと。そう、SPANK HAPPYはハラミドリと河野伸が在籍していた頃と同じ名前を冠して続いているわけで、ちょっとだけ菊池成孔の意地を見た気がしたのです。

 外で休んでいたところ、なんだか会場から愉快な音が鳴り出しているので戻ったら、スッパ・マイクロ・パンチョップの演奏でした。即興性のある演奏にチャーミング&気狂いなボーカルが絡み、しかもドラマ性もあるというバンド。今日初めて知ったものの、これは見れて幸運だったと思うほど面白かったです。サンガツは予想以上に躍動的な演奏を聴かせるバンドで、特に最後の曲は素晴らしい展開を広げていきました。かなり楽曲の骨格がしっかりしていますね。また、森林の映像によって音楽の瑞々しさを引き出していたVJもとても良かったのです。THE REST OF LIFEは、途中サイケデリックな轟音が鳴り出して思わず逃げ出してしまいました。左腕が痛み出しそうなほどだったんで。

 それにしても前売り2500円でこの内容は安かったです。ノウエさん、タキサカさん、お疲れさまでした。ノウエさんは徹夜明けだったというのに頑張っていたなぁ。タキサカさんは、以前「ハンサム白書」でお会いしたことのある肌のきれいな人でした。初対面できたjunneさんもどうもでした。

 
114日 (sat)

 大丈夫です、左腕はだいぶ動くようになりました。2日ぶりに左手で自分の顔にも触れましたよ。でも頭や顔は右手だけで洗ってます。不便。

 夜は蒲田studio80で「Sleep Mode」オザワさんRYO-3さん・ぱぱちゃさんによるイベントで、深夜FMで流れるような音楽をメインにしているために、会場の扉を開けるとそこには「ジェットストリーム」を思い起こさせる音楽が流れていたのでした。それにしても、寺尾聡やオフコースはまだいいとして、大原麗子の曲が流れるのは反則ですというかどこからレコード見つけてきたんですか。そんな選曲の妙による適度な刺激も心地よくまったりとできるイベントでした。

 
113日 (fri)

 昨日「式日」を観ている最中からひどく左腕が痛み出して、上映が終わる頃には左腕を自由に上下させることも出来ない状態になってしまいました。痛すぎて腕を伸ばすことも折り曲げることも出来なくて、微妙な角度で腕を折り曲げてないと辛いのです。そんな状態のまま不便極まりない一夜を明かし、今日は近所の休日診断所へ行ったものの、ここには外科がないからと紹介された他の病院へ。祝日ゆえ入院患者しかいない病院で診断されたりレントゲン撮影されたりすると、それだけでなんか非常にヘヴィーな状態のような気がしてきましたよ。診断の結果によると、1ミリぐらい左腕の骨にヒビが入っているかもしれないけれど2・3週間で良くなるだろうとのこと。2・3週間もかかるのか…とダウナー気分でいたものの、痛み止めの薬が効いたのか夜にはかなり腕に自由が戻ってきました。ケミカル万歳。

 いおりん情報で知ったのが、東芝EMI廃盤セールSony Music 廃盤オンラインショップ。両者とも11月18・19日に東京ビッグサイトで開催される「廃盤特別謝恩セール」の前哨戦らしく、廃盤を70%オフで販売しています。ソニーの方は欲しいものがなく、東芝EMIでヤドランカ「信じているの」、岡林信康「見るまえに跳べ」、ペンギン・カフェ・オーケストラ「ベスト・オブ・ペンギン・カフェ・オーケストラ」、クラフトワーク「ヨーロッパ特急」を購入。昔は朝から並んで廃盤セールに行ったもので、毎回そこそこの成果もあったのですが、会場が東京タワーのボーリング場から東京ビッグサイトになってからはさすがに気合い不足で行っていません。いっそこの方式で、全メーカーの廃盤を一括して「廃盤特別謝恩セール」公式ページでネット通販してくれれば便利なのになぁ。それにしてもこの公式ページ、この日記を書いている時点では画像がほとんど表示されないんですけど?

 
112日 (thu)

 かちゃくちゃくんがチケットを取ってくれたので、東京国際映画祭に出品された「式日」を観るためBunkamuraへ。庵野秀明のこの新作について語ろうとすると言葉に詰まってしまうのは、主演の藤谷文子がUAに見えたからでも、会場に向かう僕が雨に足を滑らせて左腕を強打したからでもなく、テーマがあからさまなほど最初から明示されていて、深刻そうなわりには深さに乏しく感じられ戸惑ったからでした。作品を生むモチベーションを失い故郷に戻ってきた、岩井俊二演じる「カントク」が、両親から受けたトラウマのために現実から目を逸らし廃墟のビルで暮らす「彼女」に興味を持つことで始まるこの物語は、あまりにもそのまま「新世紀エヴァンゲリオン」と通じてしまうテーマなので呆気に取られたほどです。エンディング・テーマはCOCCOの「Raining」、そしてひたすらに観念的。映像もこれまでの庵野秀明の作品のような刺激は控えめで、山口県宇部市の風景の切り取り方は巧みなものの、初めて「ラブ&ポップ」を観た後に感じたような爽快さはありません。「彼女」が暮らす現実離れした部屋や、アニメーションも取り入れながらの心理描写には、庵野秀明としてはこれまでになくイメージと表現との距離が近い印象を受け、そこに食い足りなさを感じました。その代わり庵野秀明の個性が出ているのは、「カントク」が「彼女」との生活に飽きはじめ、それを読み取った「彼女」が荒れはじめるという、生々しさを感じさせる非観念的な終盤の展開においてです。上映後のティーチ・インで、クライマックスを含めた少なからぬ部分の台本は白紙のまま撮影したと庵野秀明は語っていましたが、今回はそうした創作方法が結果的に煮え切らぬものを残していました。一度観ただけで即断するのは危険ですが、過渡期的な印象を残す作品なのは確かです。前衛映画のような雰囲気は、非商業的ゆえ東京都写真美術館での公開には向いているとは思うのですが。


 
111日 (wed)

 つじあやのの「心は君のもとへ」はマジ泣ける曲。なんてことのない失恋ソングだけど、こういう感情を最大公約数的な表現による共感に頼らず聴かせられるかどうかにアーティストの力量ってはっきり出るものです。以前はメガネ+ウクレレ+おさげ髪というルックスにあざとさも感じていましたが、まちださんの家でライヴのビデオを見せられて、実にシンガーソングライター体質の人だと教えられたものです。「心は君のもとへ」のアレンジは斎藤誠、プログラミングで福富幸宏が参加していてちょっと驚きました。この曲を聴いて久しぶりに部屋のウクレレを掘り出して構えたものの、チューナーが見つからないので調弦できずに挫折。早い。


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